能力大会
体の調子は万全だ。
これなら、どんな相手でもすぐに倒すことができるだろうな。
問題は【狂気】だ。
転移のようにあの時だけの力だと思っていたがこれはパッシブ化してしまっているらしい。
あの体力の消耗は、狂気をパッシブにするためのものだったのか。
全く、無駄なことをしてくれるな。
とりあえず生徒会室に行ってみよう。
「おーい、誰かいるかー?」
部屋の明かりをつけながらそう聞く。
「ん…ああ、星真か…おはよう」
「おはようございます星真さん」
「おはよう!星真くん!!」
三人とも揃ってたのか。
「このホワイトボードは?」
ホワイトボードには、大会の種目らしき名前とその横に生徒会メンバーの名前が書かれている。
「それは出る種目ですよ。全部で五種目あるので、生徒会は四人全員出てもらいます、団体種目は神坂さんの能力でアンドロイドを作り出して数合わせをすることにしました。」
なるほど、この小さい磁石がそのアンドロイドか。
「種目の概要を簡単に説明しておきます。ひ…」
「一つ目が!戦闘です!これはリーグ戦だから!もう言ったかもしれないけど、星真くん一人に任せます!」
佐藤が説明をしようとした時神山が割り込んできた。
「二つ目は!200m走です!これは佐藤くんがでます!」
なるほど、確かに【筋力】が使える佐藤はもってこいの種目だろうな。
「三つ目が!パン食い競争です!ただ、他の学校とは違い競走じゃなくて競争なので、パンを見つけて、ばったり会ったら戦闘があるのです!だから本当は玲沙ちゃんに出て欲しいんだけど、パンが嫌いということで私がでます!」
おいおい、そこは妥協しろよ…
「四つ目が!的当てです!当てるものはなんでもいいから、少し姑息だけど玲沙ちゃんの【変化】を存分に使ってもらって的の近くの空気を岩に変えて当ててもらいます!」
本当に姑息だな。まぁ勝つためには仕方ないのか。
「そして最後!団体種目!その名も…サッカーだ!これだけはなんの細工もなく、ただのサッカーだ!もちろん能力は使用okだよ!」
脳力を使うならなんの細工もないことはないだろ。
「ふぅん、なるほど。おっと、学校始まるじゃん、早く行かないと。」
そう言いながらドアに手をかけた
「へ?大丈夫大丈夫、今日は授業がないから学校じゃなくて自分のチーム部屋で待機してたら、種目が始まる時に呼びに来てくれるから!」
「なんだ、そうなのか。」
そう言いながらドアから手を離した時…
(ガチャン!)
「第一種目!戦闘です!選手の方は用意してください!」
思いっきりドアが叩きつけてきやがった。
「いてててて…俺でーす…いきまーす…」
腰を押さえながらそう返事した。
「場所は運動場です!リーグ表はこちらです!それじゃあ!」
そう早口で言うとすぐに出て行った。
管理は生徒がやっているのか。
自主性が鍛えられていいかもな。
「じゃあ、行ってらっしゃい星真、負けたら生徒会やめてもらうね☆」
神坂の悪魔の笑顔だ。怖え…
「わ、わかったよ。負けないように努力する…」
そう言いながら生徒会室を出た。
〜運動場〜
俺はリーグ1戦目だ。相手は…陸上部か、負けることはないだろうが、どんな能力かはきになるな。
「よろしくお願いします。」
「よろしく。」
二年生のようだ。
申し訳ないが負けたら帰宅部に真っ逆さまだから、勝たせてもらう。
「それじゃあ、戦闘用意…3、2、1、スタート!」
審判らしき教員がそう言った瞬間、相手が消えた。どこに行った、気配察知はできないぞ。
「うぉぉら!」
そう聞こえた瞬間後ろから蹴りが飛んできた。
「うぉ!痛ってぇ!」
いきなり攻撃してきたせいで守りきれず、直撃した。
「てめぇ…痛ぇじゃねぇか…絶対ぇ…てめぇだけは…殺す…」
思ってもいないことが口からペラペラと出てくる。これも狂気の一部か…?
とりあえず、相手に接触しなければ発動しない可能性がある。もちろん天文学的数字ではあるが。
少しでもあるならそれに賭けて、遠距離で倒してみるか。
「あらら、怖いなぁ?もう一丁!」
そろそろ痛めつけないといけないな。そのためには、相手の場所を把握しないといけないな。
どうするか、発現させるのもいいが、ここで発現させてはまた寝込むことになるかもしれない。
ん?神坂の能力で自分の半径2m以外のフィールドを水に変えればいいんじゃないか?どんな能力でも触れてしまえば【電撃】を流して、動きを止めれるだろう。
(ばしゃん)
うぉ…ほとんどの空気を水に変えたせいか、酸素が薄い。
「おい!これなんだよ!」
声が聞こえた。無事に水に浸っているようだ
「うおおおおらああああ!」
そう叫びながら俺は水に触れ、電撃を放った。
「があああああ!」
電流が体を流れて、痺れているようだ。
そのうち叫び声も止まった。
「陸上部の戦闘不能により、生徒会の勝利」
審判の教員がそう叫んだ。
「勝ったみたいだな…」
それにしてもすごい脚力だったな。
背中から蹴られたのにもかかわらず、胸への反動が大きい。
えっと、次の対戦相手は…水泳部か…生徒会メンバーに情報を聞いておこう。
〜生徒会室〜
「なぁ、水泳部は一体どんな能力者なんだ?」
ここで情報を得ることができれば、次の戦況は楽だ!
「水泳部の能力者は確か…【記憶】じゃなかったでしたかね。」
記憶?一体どんな能力なんだ?
佐藤は特に隠す必要性がないときは話すが、必要性があるときは黙り込む。
少しでも話したということはこれ以上の情報は無いのだろう。
「記憶…かどんな能力なんだろう」
神山がつぶやく。
俺もそれが知りたいだけどな。
「てか、能力が発揮できないクラブに入ってないか?みんな」
少し疑問に思ったことを聞いてみる。
「ああ、それは校則で禁じられてるんですよ。能力を使ってしまっては優勝以外無いですからね。」
まぁそうか、スポーツマンシップってやつだろうな。
「おい星真、記憶って能力の概要を教えてやるが、それを学習するのはやめろよ。」
神坂がそう呟く。
最弱を止めればできるんだろうが、止めれるのだろうか。
「ああ、わかったよ。」
概要は聞きたいので、止まっているのかは定かでは無いが、学習はしないことにする。
「【記憶】はその名の通り記憶から、武器を作り出したり、ありえない何かを召喚したりする能力だ。二回戦でこいつに当たるとはな…」
なるほど、その何かが厄介だ。どうするか…
狂気がある以上、近距離攻撃は使えないな…
その時だけの能力を作り出すのはいいが、もしパッシブになるか、それ以外のイレギュラーが起こった場合のことを考えると…
ん?待てよ…内容は学習なのだから、一度作り出したり、一度パッシブにしたら意のままにコントロールできるんじゃないか?
そう考えると、転移もそのまま残っているんじゃないのか?少し試してみるか…
そう考えながら、瓶に手を触れ机の上に飛ばす
(ガタン)
転移した。ただ、連続での使用が出来ないみたいだ…
「星真さん、あなたは一体いくつの能力を持っているんですか?さっきの戦いといい、電撃と変化と並行使用なんて芸当。」
そうか、普通は一つしかつかえないから並行は出来ないんだな。
「数は…今のところ…5個ぐらいかな…?」
正直正確な数は覚えていない。
「なるほど…今のところということは、これからも無数に増えていく可能性があると言うことですか…」
佐藤の言う通りだ。
一体これからいくつの能力が手に入るのだろうか…
「次〜リーグ2戦目始めまーす」
もうか、早いな…
「はーいよ」
〜運動場〜
あいつが水泳部の選手か…
目線の先には、水の抵抗が凄そうな胸…じゃなかった。
女の子が立っていた。
「よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
挙動不審だな。
まぁ内容を聞いている限りでは強いのだろうが、
「始めます。3.2.1スタート!」
そう審判が言った時、女の子の前には無数の刃がこっちを向いて浮いていた。
「いけ!」
そう女の子が言った途端、こちら側に全ての刃が逃げる場所がないように飛んできた。
「うお…」
咄嗟に電撃バリアで防いだが、何本かは止まらず挙動が変わって後ろへ飛んだあと、全ての武器が消えた。
「え?」
キョトンとしている。
さっきはこれで倒せたのだろう。
「じゃ、じゃあ!次!」
そう言うとゴーレムが天空から降ってきた。
「おっと…これはやばいな…」
つい声に出てしまうほどに巨大な岩の塊だった。
「ウガアアアアアア!」
言葉は喋れないのか。いや、喋ったら怖いが。
「ウグァアアアアアア!」
そう叫んだあと、鉄球の何倍もの質量の拳が頭上から降ってきた。
「ははは…やべぇ、これは死ぬ…」
こんな岩の塊の人形倒せるかって!
…岩の塊か…いくら動いていても、生きている生物ではないよな。
これは賭けだが、当たった瞬間に岩を空気に変えてみるか。
「よし!やった!」
そんな女の子の声が聞こえた。
「うおあああああああ!」
ゴーレムの拳に手を触れた瞬間。
ゴーレムが消え、空気になった。
「ふぇ!?」
面食らってるな。もうできることはないのだろうか。
「さぁ、来いよ!」
少し煽ってみることにした。
「も、もうなにもできないよ…」
本当に何もできなかったのか。
「じゃあ降参してくれよ、わざわざ人を痛めつける必要はないだろ?」
駆け引きは初めてだな。
「そ、それは嫌です!」
ふぅーん…痛めつけるしかないかな?
「フフ、ハハハハ!いい返答だなぁ?ハハハハ!御所某通り殺してやるよ?ハハハハ!」
…狂気か…戦闘になるとやっぱり無意識に出てしまうんだな。
まぁ、狂気を抑え込むのにも体力が減ってしまうし、別にいまこんな事を言い出してもおかしい状況じゃないからいいか。
「ハハハハ!どう殺してほしい?なぁ、どう殺してほしいんだ!?あ!?」
このまま腰が抜けて降参してくれるのを待つか。
「で、できれば苦しくないようにお願いします…」
おいおい、狂気相手にそんなこと言ったら…
「わかった!いいぜ?できるだけ苦むように殺してやるよ!ハハハハ!」
こうなる。
「やめてぇ!」
女の子がそう叫んだ瞬間。
{神}と呼ぶに相応しい何かが召喚された。
「フフ!おもしれぇじゃねぇか?な!?」
おいおい、狂気さんよ…これはやべぇだろ…能力生成とか勝手にしないよなこれ…
「だめ…死んじゃう…やめて!」
女の子が必死に神に訴えている。
「…」
神は聞き入れていないようだ。
「神を殺すには、やっぱり魔神が相応しいか!?」
狂気がそう言った瞬間。目の前に{魔神}と呼ぶに相応しい異形の何かが召喚された。
やっぱり狂気さん作っちゃった…新能力発現させちゃった…
「ほうら!お前の神と俺の魔神どっちが強いんだろうな!?」
そう狂気が言った途端。魔神は神に攻撃を与えた。
「ひぇぇ…」
女の子はもう戦う気がないんだろうか。
さっき言ってた言葉から察するにこの神は消せないのだろう。
「も、もう!降参しますから!やめてください!」
そう叫んだ瞬間、神が消滅した。
「なぁんだ?もう終わりかよ…クッソ妻んねぇな?クルーガ…帰れ」
狂気が聞きなれない名前を放った。
魔神の名前だろうか…
そう考えていると魔神…クルーガは空間を切り裂き、どこかへ帰っていった。
「水泳部降参により、生徒会勝利!」
そんな声が聞こえた時、狂気が自分から抜けていく感じがした。
「ふぅ、無事勝ったか…俺なんもしてねぇけど…」
勝つことはできたが、狂気が作り出した能力での体力消費はなかったな。
どういうことだろうか。パッシブになったわけではないのか?
まぁいいか、次は…はぁ!?決勝!?3回戦しかねぇの!?
ま、まぁいいや、生徒会室に帰ろう…