寮生活と生徒会
「先生、教科書をまだ受け取っていないんですが」
「そうね…じゃあ隣の人に見せてもらってください!」
「神坂さんも忘れたらしいです」
嫌味ったらしく報告してやった。
「うーん…じゃあ、ノートだけ書いてください!」
こんなこと言う先生初めてだな、まぁいいか楽そうだし。
そんなことをしている間に全ての授業が終わった。寮の案内をしてもらいにいこうかな。
「ねぇ、天崎 星真…だっけ?」
いきなり話しかけてきた。神坂は思ったより肉食なのか?
「え?ああ、そうだよ」
いきなり話しかけられたので挙動不審になった。
「あなた、生徒会に興味ない?」
…生徒会?これまでの人生で生徒会は面倒なものというイメージが付いているんだけども…
「生徒会は、一定の特殊能力者を集めたチームで…」
追い打ちをかけるように話を進めていきやがる。
「仕事内容によっては、報酬もでるの!」
よし、生徒会に入ろう。報酬が出るのなら入るしかないな。
「うん、わかったよ考えとく」
それとなくオーケーと伝えた。
「本当に!?えへへ、出来れば明日のこの時間までには返答してほしいな!」
喜んでるな、見た目が小学生なせいか犯罪を犯している気分だ。
「じゃあ俺は寮の案内してもらわないといけないから。」
手を振って教室から出ようとした時声が聞こえた。
「え?星真の部屋は私と同じ部屋よ?なんなら案内しようか?」
いきなり名前呼びか…嬉しくないことはないな。ここで訂正したら怒るだろうな、殺しにくるだろうな…
「本当に?ありがとう!」
不自然な笑顔にならないように笑って見せた。全く…なんて日だ。
〜寮〜
「ここが私たちの部屋!」
ふむ、なかなか広いな。過ごしやすそうだ。
「ん?どうしてベッドが4つあるんだ?」
部屋に入った時の違和感を質問した。
「ああ、もう二人男女がいるのよ。」
なんだ、俺たち二人の夫婦部屋じゃないのか。
「なにその嫌そうな顔。まさか…二人がよかったとか…?」
観察眼がすごいなあまり顔に出さないように…ん?なんでこんなにこいつ顔が赤いんだ?
「えっと…俺のベッドはどれかな?」
「右上」
そう言いながら、右に置いてある二段ベッドの上を指差す。
「ここか、うぉ!毛布フカフカじゃん!」
すごく楽しい。初めてのものは楽しく感じるあの心理だ
「気に入ってくれた?その毛布は私が買ったんだ!あなたが転入生とは思ってもみなかったけど。」
思ったよりセンスがあるんだな。てか、転入生用に毛布を買っておくって家庭的にもほどがあるだろ。
そんなことをしてる間に他の二人が帰ってきた。
「ただいまー!!!」
「ただいまです」
テンションの高い女子が一名、両手に紙袋を持っている男が一名。身長は二人とも俺と同じくらいか。
「えっと、そちらの毛布に包まって神坂さんと話していたのが、天崎さん?」
男が言った。毛布に包まっては余計だろ!?
「うん!そうだよ!」
この二人相手にはテンションが小学生に戻るのな。ずっとこのままならいいのにな。
「へぇー!なかなかイケメンだね!」
女が言った。男と違って印象はいいな。イケメンか、異性に言われると恥ずかしいものがあるな…
「あぁ!自己紹介忘れてた!私は神山 紗季!よろしく!星真くん!」
神山…珍しい名前だな…
「確かに忘れてましたね。私は、佐藤 悠人です。よろしくお願いします、星真さん。」
これはこれで平凡すぎる名前だな…
「ん?てかなんであなたたちは俺の名前を?」
「転入生が同じ寮になる場合名前がさきに知らせれてるんですよ。」
なるほどな…
「そんなことより星真くん!あなたたちってやめよ!同じ寮で、同じ学年なんだから敬語じゃなくていいよ!」
馴れ馴れしいな。でもムカつかないのは何故だろうか。
「そうですよ、敬語じゃなくてもいいです。」
お前はブーメランだよ。
「うん、わかった神山、佐藤それと神坂。」
「なんで私だけ別枠なのよ!」
うん、すごく賑やかで楽しい。いい高校生活を送れそうだ!
その頃教室前では。
「星真…どこ行ったんだ…?おかしいな…寮の場所わかるのか?クラスに寮が同じ子はいるが…」
学園長がうろついていた。
「ん…?学園長どうしたんですか?」
そこに逢崎が忘れ物を取りに来ていたのか、教室から出てきた。
「いや、天崎くんの寮案内が済んでないんだ…大丈夫かなって…」
天崎呼びなのは、教員にも氷崎という偽名を使っているからだ。
「え?星真くんならさっき玲沙さんと寮に戻ってましたよ?」
不思議そうに聞く。
「なんだ!そうなのか!よかった!」
ものすごい声量で怒鳴るように安心した。
「じゃあ、逢崎先生天崎くんをよろしくお願いします。」
深く頭をさげる。
「学園長、頭を上げてください!」
慌てて指摘する。
「それでは私は業務に戻ります。」
頭を上げて、形式的に言ったあと、学園長室へ戻った。
「学園長って不思議な人だなぁ…」
〜次の日〜
よく寝れたな…毛布の力恐るべし。
「ん…ふぁぁ」
この声は神坂だろう。今起きたのかな?
「ああ、二人とも起きてたんですか。」
佐藤は起きるのが早いんだな。
「ああ、おはよう」
「おはよう悠人…」
こいつはみんなを名前呼びしているのか?
「おはようございます、お二人とも。」
相変わらず丁寧な言葉遣いだな、相当な身分なのかも知れないな。
「神山さん、起きてください。」
神山は起きてなかったのか。
「ん?ああ、佐藤くん!おはよう!」
いきなり飛び起きたな、本当は起きていたのだろうか…
「みなさん、朝食は作りました。さて、食べましょうか」
ほう、料理もできるのか…中々に侮れないな。
「「「「いただきまーす」」」」
そう言うとみんながっつき始めた。
料理はTHE・朝食と言った感じで、パンにバターとスクランブエッグそしてコーンスープ。
神坂だけは魚と白米、そして味噌汁。
「どうした?星真、お前も朝は和食派なのか!?食べたいか!食べたいんだな!」
いきなりテンション上がりやがった。こいつは一体なんなんだ。ツンデレかと思ったら、天然だったり。
わけがわからん。
「ああ、確かに和食派だけど、洋食も中々にうまいな。」
ここは話を合わせておくか。
「なるほど、星真さんも朝食は和食派なのですね。明日からは和食を作ります。」
すごくニコニコしている。
作る側としては和食の方が面倒なのだと思うんだが、表情を読み取るに、難しいことが好きなんだろう。
「ありがとう」
それだけ言って朝食を食べ終えた。
「今日は土曜日だし、学校も休みだから買い物行こうよ!星真くんの服とかも買ってあげたいし!まだまだ家具も足りないと思うんだ!」
確かにこの部屋は二段ベッドが2つと調理器具、そしてタンスが人数分だけ。
確かに寂しいな。部屋が広いだけあってそれが特に際立っている。
「それもいいですね。それでは家具を買いに行くついでに、服を買いに行きましょう。」
こいつも乗り気だな。
「えぇ〜外に出たくない〜」
神坂のキャラというか性格だけはわからないな…
「神坂、そう言わずに行こうぜ!」
俺も少し乗ってみることにした。
「あ、そんなことより、星真。生徒会に入るか入らないか決まったか?」
またキャラが入れ替わりやがった。
俺もその時の気分や調子で口調が変わるから言える立場でもないけども。
「まぁな、人数だけ知りたいんだけど?」
特に問題視はしていなかったが、大人数だともう少し考えたい
「星真を入れて4人だ。」
え?4人?
「それってもしかして…」
「この寮の全員だ。」
やっぱりな、推測が当たった。まぁ、少人数だし入らない理由はないか。
「わかった、生徒会に入るよ」
「おお!星真くん入るんだ!」
神山が嬉しそうに言う。
「星真さん、これから一層宜しくお願いします」
相変わらずの笑顔で佐藤がそう言う。
「じゃあ、これからよろしくな。星真」
神坂も嬉しそうにニヤついている。
「そういえば、生徒会に入るメリットがなんだかんだ言ってたが、あれはなんだったんだ?」
報酬がなんとかかんとかって言うアレのことだ。
「それじゃあ、説明する。まず生徒会は依頼のためなら、学校への登校を免除される。悠人と紗季が昨日、学校に来ていなかったのも依頼があったからだ。」
いきなり衝撃的な言葉が飛んできたな。
登校を免除されるのか。
「もちろん免除された分の勉強は休日に振り替えて受けることができるけど、受けなくても良いから、安心して依頼に集中してくれ。」
なるほど、ちゃんと受けることもできるのか、それは安心だな。
「なぁ、さっきから言葉に出てる依頼ってなんだ?」
これを聞けば大抵は理解できるだろう。
「そうだな、能力事件の解決から地域の掃除やらいろいろだな。」
ふぅーん。能力事件ね…
「それじゃあ、話を進める。
依頼は大抵、生徒が持っているデバイスに入っている目安箱プログラムに届く。
もちろん生徒側からは、依頼内容を見ることはできないので、生徒会用の招待コードを教える。まぁ、あまり気にしないでいいよ。」
なるほど、依頼は自由に受けることができるのか。じゃあ昨日佐藤たちが受けていたのは、生徒からの依頼だったってことか。
「ちなみに、依頼は教員からもできるからあまり気を抜かないように。」
教員にも、このデバイスが配布されているのか。
「これぐらいかな?あ!あとで生徒会用の制服を取ってから待っててね!」
神坂は生徒会の時と普段で口調が違うのか?やっぱりわからないな。
「神坂さんが、伝え忘れたことを少しだけ話します。まず、生徒会に入る以上自分の能力名を伝える必要があります。
これは、学園での決まりなので他言をしても構いません。というより専用プログラムに書かなければいけません。」
佐藤が少し解説を進めていく。
「例えば、僕の能力は【筋力】その名の通り、筋肉を増加させることでゴリラ並みの握力や、腹筋をバカみたいな量に増加させることで防弾チョッキ並みの防御力も得ることができます。」
こいつは怖いな、敵に回すとダメなやつだ。
「はーい!私の能力は【火炎】名前の通り火を作り出して燃やし尽くすことができます!」
…それだけ?確かに火は怖いが、説明が少ないな。
「そして、神坂さんの能力は【変化】これまた名前の通り、『無機物だけ』という条件付きで他の無機物に変化することができます。例えば空気を…」
「石に変えて打ち出す?」
佐藤の話の途中で、割り込む。
「そうです。よく知っていますね!」
まさか本当に空気を石に変えていたのか…
「まぁな、前街中で戦闘したんだ。」
少し気まずかったが、いつか言うべきだと思っていたのでよかった。
「なるほど、よく生きていられましたね…」
尊敬に近い目で、見てくる。
「ああ、俺も死ぬかと思ったよ…じゃあ、俺の能力を教えるな。能力名は【最弱】内容は…」
「「最弱!?」」
「ん?ああ、知ってるのか?」
「知ってるに決まってるじゃん!」
「そうですよ!知らない人はいません!」
内容を言う前に割り込まれたことより、俺の能力を認知していた方が驚きだった。
「どうして俺の能力名を知っているんだ?」
平然を装ったが、興奮はかくしきれていなかっただろう。
「最弱って言ったら、校内では噂になってるんだよ!」
へぇ〜そうなのか。まさか俺(の能力)って有名?
「確か内容は…全てを学習する力。じゃなかったっけ?」
なるほど、そこまで知ってるのか。
「じゃあ俺は省いていいよな。この分だと玲沙も知ってるだろ。ってか、どこからその情報が出回ったんだ?」
よくよく考えてみると、もし医者が他言したのであれば大問題だ。
「この学校には感知能力者が一人いるんですよ。ほとんど学校には来ていませんが。」
なるほど、感知能力者が俺の能力を感知して言いふらしたのか。
「おーい!みんな!ほら!これが生徒会専用の制服だ!」
そこには、普通の制服とは全く違うデザインの服があった。
「昨日は神坂も普通の制服じゃなかったか?」
「ちぇっちぇっちぇ…届いたのが今日なのさ!本校舎まで行って貰ってきた!」
なるほどな、だからこんなに時間がかかったのか。
「ちなみにデザインを考えたのは…私です!」
神山が手を上げながら前に出てくる。
なかなかにいいセンスをしているな。
簡単な説明をすると、赤と黒のブレザーで、校章が男用は右肩に、女用は左肩についている。
「なかなかにいいデザインですね。」
そう佐藤が言うと、神山が嬉しそうに頭を掻いた。
「よし!これで、生徒会メンバーは揃った!」
神坂が嬉しそうに叫ぶ。
それにつられてみんなも少し嬉しそうにしていた。
何か忘れてる気がするがまぁいいだろう!
「じゃあ、早速星真さん初の依頼をクリアしましょう!どうぞ!好きなやつを選んでください!」
そう佐藤が言った。
「じゃあ…これ!」
そこには、衝撃的な言葉が羅列していた。