最弱VS多能
よし、全員いるな。
ん?全員?神山がいない気がするがまぁいいか。
「ヒヒヒ…」
聞きなれない笑い声だな…
「ヒハハ!」
そう聞こえた瞬間、ビル一つを潰せるような衝撃が俺の体を襲った。
「うおおい、いてぇだろ?殺すぞ?…」
【最狂】を抑え込むのを忘れていたせいで、もう出てきてしまった。
てかあいつらもう戦闘不能かよ…神坂はなんとかできるだろ…なんで普通に瓦礫の下敷きになってんだよ…
「フフ…なかなかやるな…ハハハ!」
【狂気】は基本的に笑ってるだけなのか?
「あ?なかなかやるなぁ?なかなかじゃねぇだろ?かなりだろうが!?あ!?」
さすが上位互換、威圧感がすごいな。
「さあさあ、パーティを始めようぜ?招待状はねぇけどな!」
なかなかシャレが効くな、そういうセンス好きだぜ。
「イヒヒ…ハハハ…」
本当に笑ってるだけだな。
「おいおい…パーティしようとしてんのに、一人で笑ってテンション上がってんじゃねぇよ…」
最狂さんが呆れてるのは初めて見るな。
「クラッカー代わりにお前を爆散してやるよ…ハハハハハハ」
「あ?よく聞こえねぇな?俺を爆散って聞こえたんだが?てめぇにそんな能力はねぇだろ?」
「どうだろうな?医者の鑑定なんて信用するもんじゃねぇよ?ハハハ…アハハ!」
どういうことだ?あれら以外の能力をまだ持っているってことか?
「まぁ、いいわ、やってみろよ。ほら」
完全無防備かよ。
本当にやばい能力持ってたら俺も死ぬぞ…
「…」
何も言わないな。ハッタリだったってことか?
「ハハハ!ハッタリか!?お医者さんに嘘はつけないですってか!?可愛いな?愛でたいぐらいに可愛いぜ!?」
最狂さん調子に乗ってきたな。殺さないぐらいにお願いしますね。
「…」
まだ黙っている…?
口が動いているな…なんだこいつ…何しようとしてんだ?
「ああん?何言ってんだお前?聞こえねぇよ、声帯ねぇのか?さっきからギャーギャー鳴きやがってよぉ?」
最狂くん、うかつに近寄らないほうがいいと思うぞ。
「…リカストル…」
ん?リカストル?
「おい!星真!逃げろ!」
神坂の声が聞こえた。
最狂さん、言うこと聞いてください。
「はぁ、しかたねぇな?」
そう言った瞬間、見えている風景が変わった。
【転移】でも使ったんだろうか?
「…お兄ちゃん…何してんの…」
懐かしい声だな…愛海か…
「なにって、なにしてんだろう」
長くなるので、あやふやにしておこう。
「本当になにしてんの…ここ…私たちの寮なんだけど…」
よく見ると愛海の後ろに3人の男女が唖然として俺を見ている。
「…マジ?」
「マジ」
「悪い」
「許さない」
「本当にすいませんでした、悪気はないんです。まだ能力の扱いに慣れてなくて、妹の寮にきて下着を探そうとか、腐女子雑誌とか探そうとしてません。」
渾身の土下座をしながら、弁解をしたが、無駄な話をしたかもしれない。
「…殺す…」
殺伐とした低さの声が聞こえたような気がするが、今はそんなことをしている場合じゃないし、あいつらの事も気になるから、戻ることにしよう。
「いつか埋め合わせはするから、今日は見逃してくれ、じゃあな!」
それだけ言うと、すぐに俺は元の場所へと戻った。
「イヒヒ…」
逃げてなかったのか、よかったな。
あいつらにはほとんど危害を加えられた様子はないな。
「さあさあ、海崎くん、続きをしようじゃないか。あ、別にここで警察に自首してくれるんだったら俺は何もしないんだけどね☆」
最狂とは対照的なイメージを与えた。
「イヒヒ…アハハ…」
人語を忘れたのかこいつは。
「まぁ、自首してくれるわけないよな。仮にも狂気能力発現してるしな。」
「イヒヒ…」
「独り言にも飽きてきたしレスポンスが返ってくることもないし…動けなくして警察に突き出す。」
もちろん今の発言は最狂じゃなくて、俺の言葉なわけだが。
「アハハ!」
そう笑うと、また壊滅を仕掛けてきた。
「単調な攻撃だねぇ…お前複数能力使えんだろ?もっと…こうやって…混ぜて使えよ」
そう言いながら俺は【変化】で、動力が【電撃】の小型コイルガンと先が丸い弾を作った。
先が丸い弾なのは貫いてしまったら死ぬ。
小型な理由は大きいと、打撲し死ぬ。
もちろん、電撃で充電する量も少なめだ。
ようは気絶してくれるだけでいいんだよ。
「イヒヒ!?」
さすがに面食らってるな。
「自首を選択しなかった自分を責めるんだな。」
それだけ言うと俺は、コイルガンの引き金を引いた。
「ブォハッ!」
そう叫びながら海崎は気絶した。
叫び声…普通だな。
笑いながらダメージが入るかと思ってたんだけど…見当違いだったみたいだ。
「さてと…あとはこいつを警察に突き出すだけか。」
そう言うと俺は110番をした。
「おい、星真…そろそろ助けてくれ…」
神坂が死にそうな声で助けを求める。
「あ、忘れてたわ。学園の保健室に戻ろうかい。」
「忘れてたじゃねぇよ!」
「忘れてたじゃないです!」
見事に声が一致したが、佐藤の声が聞こえなかったな、と思ったら既に気絶している。
割と貧弱なんだな。
「わ、悪い悪い…とりあえず全員掴まってくれ。」
そう言うと俺は、佐藤を手で掴み、他の二人に体を掴ませたあと、保健室へ飛んだ。
〜保健室〜
さてと、保健室に来たはいいが…いるか?
「ん?また生徒会一同?」
保健室のベッドから出てきた。
「先生、何をしてたんですか」
「お昼寝」
「保健室で寝ないでください」
「いいじゃーん」
「ダメです」
「ええやん」
「方言使ってもダメです」
なんだこの会話…途中の詳細書きない会話ってなんなんだよ一体!
「まぁいいです、こいつら怪我人なんですが、受け取ってください」
「何?そのラブレター渡すときのくどい子供みたいな台詞」
「ラブレターを渡すときってそんなもんじゃないの!?じゃなくて、こいつら瓦礫に挟まれたから早く。」
調子狂うな…
「星真…まさか渡す時にそんなこと言ってないわよね…」
なんだよその軽蔑するような目…
「言いました…ってかラブレターを渡したことももらったこともねぇよ!」
「そんな恥ずかしいことよく大声でアピール出来るわね…それにここ一応保健室だから静かに。その子達は空いてるベッドで寝かせてあげて、あとは先生がやるから、面会はちゃんと来てあげてね。」
アピールはしてないが。
まぁ流石仮にも保健の先生か。
少し時間がかかるだろうしここは後にしようか。
〜廊下〜
「うおおい!そこの君!」
ん?誰だと思ったら神山か。
「ん?どうした神山」
「どこに行ってたんだい!私を置いて!」
お前が起きなかったんだろうに…
「え?生徒会室見なかったのか?」
「生徒会室?豪華になってたよ!」
何を馬鹿なことを
「そんなはず無いと思うけど…ボロボロになってなかったか?」
「ああ、そういえば工事のおじさま達がぞろぞろと出て行ってたよ!」
おじさまって…こいつのキャラはなんなんだよ一体…
「そうか、豪華になった生徒会室か…少し気になるな」
「なんかね!生徒会メンバーが5人になったお祝いだって!」
「お祝い?ふーん…」
何か裏を感じる。
「ちょっと見に行こうよ!凄いことになってるからさ!」
そう神山に誘われたのでここは抵抗せずに向かうことにした。