第8話
「…………」
「いい加減機嫌を直してくれないか?」
「…………」
あれからというもの、桔梗は拗ねてしまった椎菜の対応に追われていた。
と言ってもそっぽを向いて――まだ幾分か赤みを残した顔で――先を行く椎菜を、危険にならない程度に後ろを追従するだけだ。
彼自身少女にへそを曲げられ「困ったな」というような慌てた感覚は無い。
自分の性格を理解しきっているだけに、それも已む無し、といった体である。とりあえずこの先やりづらいため、彼女の機嫌を戻すことが最優先とした結果のやり取りなのだ。
人それを朴念仁とも呼ぶのだが……。
「…………はぁ」
とはいえ、椎菜といえ長時間へそを曲げるわけにもいかなかった。
何故ならこうなってしまったもともとの原因は自分の態度であったことをこれまた自覚していたからだ。
別に彼は無礼ではあったが、悪気があったわけでもないことは百も承知。
つまり自分が勝手に恥ずかしさを紛らわせるために不機嫌を装っているだけであった。
確かにあの一言は非常に恥ずかしかったが、彼はそういう人なのだと思い切る。
中には「幼女趣味」という危ない趣味を持っている人がいて、自分がその趣味の範囲に入ってしまうことは、意外にも知ってはいたが――半年ほど前に師について言ったら、敵対勢力の魔法師がそんな趣味の持ち主で、非常に困った事態に発展した――彼にはそういう気配が微塵も無い。
だからアレは彼なりの純粋な賞賛なのである。そう思えば逆に悪気もしない。寧ろ嬉しい……かも?
「ふふふ」
そう思うとちょっとだけ笑ってしまう。
そんな椎菜の変化を見ていた桔梗は内心ホッとし、
「ああ、あれが冒険者ギルドのようだな」
周りの建物に比べ一際大きい建物を見上げるようにして呟いた。
でかでかと「冒険者ギルド アリウ支部」と書かれているのだから間違いないだろう。
自分たちの目の前にもそれなりにひっきりなしに出入りしている人たちを見るに、繁盛しているようだ。
冒険者ギルドが繁盛するというのが、この世界にとって幸不幸のどっちなのか判断に悩むところではあるが。
「いくか」
「はい」
答える椎菜も機嫌が元に戻ったようだ。しっかりと頷いてくれた。
ドアを開けるとドアベルが設置されていたようで、カランコロンと小気味のいい音がした。
そんなドアの先に気後れというものを知らない桔梗が無造作に足を踏み入れ、その後に気持ち緊張したような椎菜が続く。
見渡せばまさに冒険者ギルドだった。
入ってすぐ右に依頼書と思われる紙が多く張られた掲示板がいくつも立つ。大学のアルバイト募集や就職案内の掲示板が印象に近い。
そこでパーティーなのか数人で様々な依頼書を見比べている一団や、こちらはソロなのか一人で難しそうに依頼書を除いている戦士風の男がいる。
ともすればその男は掲示板から一枚の紙を引き抜くと、そのまま置くにあるカウンターに持っていった。
(なるほど。あれが依頼受諾の手続きか)
椎菜は純粋に興味深く辺りを見回しているだけのようだが、桔梗は周囲の観察に余念が無い。
自分たちに害意を持つ存在はいなかったため、そこは既に気にしていない。
建物の奥には先ほどの職員と思われる人がいるカウンター。カウンターには三人等間隔で座っており、そのうちの一人が戦士風の男の相手をしている。
そしてカウンターの奥には扉が付いているため、その奥は職員専用のスペースなのだろう。外観から考えるとこの冒険者たちが利用できるスペースは建物全体の三分の一程度のようだ。
カウンターと掲示板以外のスペースにはテーブルと椅子がカフェのように多く配置されており、そこにも冒険者たちの姿が多く見て取れる。
所謂談話スペース的なものだ。
世間話から冒険者としての情報交換、果ては酒を飲みながらの猥談など、飛び交う会話は様々だ。
結構下世話な話をしている男たちの声が大きく、思わず聞こえてしまった内容に慌てる彼女もまたご愛嬌。これには思わず桔梗も苦笑してしまう。
「さて」
とはいえこんなところで延々と出歯亀のようなことをしていても仕方ない。
彼は彼女の手をおもむろに掴むと、先導するように奥へと歩く。彼女も最初はびっくりしたようだが、素直についてきてくれた。
「こんにちわ!今日は依頼でしょうか?」
向かった先は妙齢の獣人の受付がいるカウンターである。
カウンターに座る職員は先ほど述べたに三人。厳しい老齢の男性と、四十を超えた辺りの女性。どちらも見た目は人間だ。そして最後に目の前にいる二十代半ばの亜人の女性である。
空いていたのは男性とこの女性だったが、初見ではどう考えてもこっちを選ぶだろう。流石に彼の相手をさせるのは椎菜に悪い。
狐を思わせる耳が生えているが、予想に反して目はそれほど吊り上ってはいない。優しそうな眼差しをした女性である。
あと胸が大きい。
「いや、冒険者登録をしたい」
「かしこまりました!お嬢さんは付き添いですか?」
「いや、彼女も登録希望だ」
「え?」
「ん?」
そこで初めて女性の顔が曇った。
それもそのはず。この年齢で冒険者登録をする人は稀だからである。
もちろん詳細な年齢制限というものはないが、流石にこの年齢の、特に女子となると、受付の女性も戸惑った。
冒険者は子供たちにとって憧れの職業であり、たまに冗談で――本人は本気で――冒険者になりにくる少年はそれなりの数いるが、引率の少年がはっきりとこの少女を指して冒険者登録を促した。
彼女の目には桔梗が冗談を言っているようには思えなかった。
「えーと……お嬢さんはまだ早いのではないかしら?」
しかし、見た感じ少女から感じる魔力は平凡で、だからといって鍛えているようには微塵も見えない。
そのどちらかが突出しているようであれば、それなりに納得できるのだが、如何せん今の状態では懐疑的にならざるを得ない。
しかし、
「大丈夫です。これでもいろいろと鍛えていますから」
椎菜もまたはっきりと否定する。力こぶを作ろうとしてみるが悲しいかな、体のほうはまったく応えられていない。
年齢不相応な凛々しい顔立ちに、女性は数秒職務を忘れて呆然としてしまった。
しかし、そこはプロである。すぐに持ち直し、それでも幾分引き攣った笑顔で対応する。
「そ、それでは、二人とも何か自分たちの強さの証明になるものはありませんか?もちろん後で実力を見せていただきますが、自分たちが正しい戦力分析が出来ているかも把握したいので」
冒険者志望の人たちの中にはこの自己評価が非常に高い人が多くいる。
つまり自信過剰な人種だ。
冒険者からしてみれば大した強さを持っていないのに「俺はすぐにでもAランクに上がれる強さを持っている」とか、ケンカしかしたことがないのに「魔物も簡単に退治できる」とか思い込んでいる輩の多いこと。
そういった人たちは一様にその後の技能判断で現実を直視できず、実技試験で現実を思い知らされることとなる。
そして最後に冒険者になることすら諦めて冒険者ギルドを去るのだ。
たまに傑物が現れることもあるのだが、そういった例は前者に比べて圧倒的に少ない。
だからこそ、
「ん~、俺はイビルリーパーを瞬殺できるくらいには強いつもりだ」
「私はえっと……特級魔法の使い手です」
大真面目に冗談のようなことを嘯く二人に、女性の我慢も限界だった。
「ちょっと!冗談も大概にしてください!怒りますよ?」
「ん?」
「え?」
逆に怒られた側の二人は何で怒られたのかがわからない。
彼らは正直に――というか、普段よりも控えめに申告したつもりだった。
桔梗はミルフィリアたちを助ける発端となった異形「イビルリーパー」を瞬殺できるどころか、二十八体を何の苦もなく殲滅できるほどであり、椎菜に至っては特級どころか神級魔術ですら裸足で逃げ出すほどの魔力制御に優れる。
ちなみに神級魔術とは災害クラスの現象を引き起こす威力があり、椎菜は確かにその段階にまで至れていないが、それでも中級から上級程度の魔力消費で特級を超える威力を撃ちだすことの出来る制御力を持っている。そういった意味では衝撃度合いは椎菜のほうが上だ、
しかし、もちろん受付の女性はそんなことを知る由もない。
イビルリーパーは一匹であれば熟練の冒険者たちも対峙できるものの、ヤツらは群れる。それ故に見つかった瞬間に上級冒険者のパーティーですら逃げるしか選択肢のないほどの人類にとっての仇敵であり、特級魔術はどんなに優秀な賢者であっても三十歳を手前に習得できるかどうかのレベルだ。
つまりこの二人は身の程を弁えない大言壮語を言っているようにしか見えなかった。
見れば周りの先輩冒険者たちも冗談と思って笑っているか、冒険者という職業をバカにされたと憤っているかの二パターンの反応だった。
どうやら周りの注目を集めてしまったらしい。
「あなたたちの言っていることがどれだけ的外れなことかわかっていますか?」
女性は呆れたように、それでも丁寧に説明する。
「イビルリーパーは凄腕の冒険者たちが複数のパーティーを組んで殲滅戦に挑むほどの強敵ですし、騎士団ですら部隊単位で挑むレベルです。そしてお嬢さんの年齢では初級を覚えたてがいいところですよね?」
それはこの世界の一般常識だった。
しかし、桔梗たちはもちろん嘘なんか言っていない。
シリスとミルフィリアに認められるどころか「敵に回したら国が滅ぶ」とまで評価されるような実力者たちである。これは二人には言ったことはないが。
イビルリーパーを倒したのも確かであれば、彼女が使う攻性魔法|《原子崩壊》(フォノンブレイク)は特級を軽く越えるほどの威力があり、彼女の魔力を持ってすれば連射も可能だ。
流石に今ここでぶっ放せばテロリストの謗りを受けることになるのでできないが、それでも出来ないことを出来るといっているわけではない。
「は~~……わかりました。認めないのであればこのまま続けますが、あとで後悔しても知りませんからね?」
頑なに(見える)発言を撤回しない二人に女性は諦めを覚え、先を促すことにした。
彼女も暇ではない。残りの受付二人は面白そうにこちらを気にしながら、それでも他の客をどんどん捌いていく。
自分だけがこの二人の相手を長々とするわけにも行かない。
ちなみに彼女の台詞にはちゃんと理由がある。
冒険者になるための実技試験は「実力にあった内容」になる。
そのため、自分の実力を高く見積もれば見積もるほど、その試験内容は当然厳しくなる。余談ではあるが「冒険者になりたければ控えめに自己申告しろ」というのは冒険者に代々伝わる冗談のようなアドバイスだったりする。もちろん控えめに過ぎれば「冒険者の資格なし」と門前払いを食らうハメになるのだが。
「それではこのプレートに右手を開くようにして置いてください。これはあなたたちの各パラメータを自動でランク形式で見極める魔道具です。これは《ステータス魔術》のようなものですが、それよりも遥かに高性能でその精度も段違いですので基本間違いはありません。あまりにも高性能すぎて技能が丸裸にされてしまうため、こちらも最低限の人数でしか確認は致しませんのでご安心ください」
「便利なもんだな」
「へ~。こっちにもあるんですね」
二人の反応は多少気になったが、女性はそれでも先に進める。大した職務根性である。
「それでは、あなたからお願いします」
と言われ、桔梗は何の警戒もせずに手を置いた。
プレートが淡く光り、ややあって文字が浮かび上がってくる。
「え?」
そして出た結果に目を見張る。
信じられない。
そして
「はぁ?」
それでも先を促した少女の判断結果に、魂の抜ける音を聞いた。
それほどの衝撃だった。
魔道具が壊れているとしか思えない
その衝撃の内容が以下の通りだ。
氏名:キキョウ=コーサカ
筋力:B+
敏捷:A+
耐久:C
器用:A+
魔力:―(ゼロのため測定不能)
特性:×××(ぼやけていて読めない)
総合:A
氏名:シーナ=アサギリ
筋力:E
敏捷:D
耐久:E
器用:B-
魔力:SS
特性:魔術の極み
総合S
まず桔梗。
敏捷と器用のA+。これははっきり言えば英雄クラスの数値である。超一流と言われるレベルがB-程度と考えると、わかりやすいだろう。
ちなみにわかりやすい指針で言うと
E:虚弱
D:普通(一般成人レベル)
C:熟練
B:超一流
A:人類をやめたレベル
このような結果になる。
Aなんてものは御伽噺に出てくるようなキャラたちが持ちえるような数値である。
少なくとも彼女が就職して四年の月日が経つが、最高ランクはBである。しかも冒険者として長年過ごしてきた大陸に名を轟かすほどの有名人のステータスだ。恐らく各国の軍の最強レベルでも似たり寄ったりだろう。
しかしそれらを嘲笑うかのような途方もない結果。彼のステータスだけを見れば、B+という化け物レベルのランクでも、可愛く感じてしまうほどだ。
本来であれば致命的欠陥である魔力の「―」なんて愛嬌にしか見えない。というか、まったく魔力を持たない人間も何気に初めて見た気がする。
確かにこのステータスが真実であれば、イビルリーパーなど歯牙にもかけない強さであろう。
そしてそんな冗談にしか思えない桔梗に輪を掛けて凄まじいのが見た目幼い少女の椎菜だった。
筋力・敏捷・耐久はいい。見た目どおりである。
器用も「超一流」という年齢から考えるとびっくるする値が出ているが、それもまた許容内である。器用は他の技能に比べてそういう結果が出やすいのも事実だからだ。
しかしだ。
魔力:SSって何?って次元である。
というか、Aの上にランクがあることを初めて知った。恐らくこのアリウ支部のギルドマスターですら知らないだろう。
だってAの時点で人類を辞めたレベルなのだ。Sってもうどう表現したらいいのかわからない。
しかも彼女はそのSにさらにSがくっついている「SS」だ。もう神や邪神に匹敵する可能性もある。彼女の想像ではあるが。
ちなみに彼女の想像は間違っている。神や邪神ともなるとSSSというランクが例えあったとしても足りていない。しかしそんなことは与り知らぬことではあった。
しかも特性が「魔術の極み」。もう極まっちゃっている。それがどんな恩恵かはわからないが、明らかにプラス方向に働く特性である。
ということはあの「SS」に何かしらの補正が掛かることになる。
なんだそれ?
「すいません……ちょっと待ってもらっていいですか?」
「はあ」
眉間に寄った皺を揉み解しながら、それでも落ち着かずに、断りを入れて小休止を貰う。これは職務怠慢というレベルではないのだが、事情を知っている人がいれば同情したことだろう。
同僚の一人百面相に怪訝な表情をしながらも、受付の二人はこちらに来ない。
これは「ステータス」というものがどれほどその個人にとって重要であるかを理解しているためだ。
こちらの常識に当てはめるならば「個人情報とその暗証番号」に近い。
受付を行っている当人は知らざるを得ないが、だからと言って他のスタッフもホイホイ知りえていい情報ではない。
それが許されるのであれば、それは組織のトップの人間である。
「申し訳ございません。あなた方の結果が少々例を見ない数値を出しました。そのため、担当をギルドマスターーか副ギルドマスターに交代させていただきたいのですがよろしいでしょうか?」
「……面倒くさい未来が待っている気がするが、冒険者にそれで登録できるのであれば已む無しだ。お嬢もいいな?」
「はい。よくわかりませんが、大丈夫ですか?」
あからさまに年下の幼女に心配されて、自己嫌悪に陥るが状況が状況である。ここで本音は吐けない。
「はい、問題ありません。ごめんなさいね。あなたたちを疑っていた私の方が間違っていました」
謝罪とともに丁寧にお辞儀をひとつ。
「それではもうしばらくお待ちください」
そう言って彼女はカウンターの奥の扉を開けて引っ込んだ。
「おい、今の何だ?」
「シャリッテ嬢が呆けていたぞ?何かおかしな結果が出たのか?」
「いや、そんなはずはない。見てみろよあの間抜け面」
「確かに何もわかっていなさそうな顔だな。拍子抜けか?」
「おそらく魔道具が故障してバグッたんじゃないか?最後に謝っていたし」
「なるほどねー」
後ろでは冒険者たちが好き勝手言い合っていた。
誰も真実を当てられるような人はいない。
まあそれも酷な話か。流石に目の前に「英雄が二人もいる」と言われても誰も信じられないし、そもそも想像だにしないだろう。
魔族の侵攻が活発化していたような三百年以上前なら話は別だが、国同士で戦争しなくなって久しく、魔物退治が冒険者や軍の主な仕事となっている今では英雄の出現もあるはずがない。
「なんだろうな?もしかして異世界人と看破されたか?」
「どうでしょう?あのプレートに刻まれていた文字は私たちの名前と各種パラメータのようでした。ゲームでよくあるステータスですね。STR,VIT、AGI、DEX、INT、EX。LUKこそありませんでしたが、そもそもそんなものは測ることは出来ませんからね」
「まあね。お姉さんが謝っていたところをみると、おそらく俺たちのステータスが予想を超えて高かった可能性がある。つーことは、また面倒なことに巻き込まれなきゃいいんだが……」
「あ、そういえば、紅坂さんの特性って――」
「お待たせしました」
椎菜が気になったことを尋ねようとした矢先、扉が開いて先ほどの女性――シャリッテと呼ばれていた――が再び姿を見せる。
しかし先ほどさがったカウンター奥の扉ではなく、カウンター横の扉、つまり桔梗たちと同じスペースにつながる扉からだ。
彼女は神妙な顔で今出てきた扉の向こうを手のひらで示し、
「申し訳ございませんが、続きは奥の別室で行わせていただきます。お手数ではございますが、こちらへどうぞ」
『…………』
その案内に二人は顔を見合わせて、それでも話が先に進むのであれば、とシャリッテの指示に従った。
「お前たちが報告にあった規格外か?」
「いや知らんがな」
通された別室で開口一番に飛んできた無礼極まりない質問に、桔梗はそれでも冷静に応える。
そもそも彼はあちらの世界で「化け物」とか「怪物」とか「悪魔」とか散々言われてきたため、そういった暴言に異常なまでの耐性があったし、どちらかと言うと彼も無礼なほうだ。故に逆に言われたとしても対して堪えない。
それに二日間の道中ですらシリスに数え切れないほど言われた言葉だ。どちらかと言うと呆れ的な意味合いでだが。
そして何より質問の主からは悪意はなく、からかうような楽しむような、そんな陽気さが見て取れたのも理由としては大きかったのかもしれない。
(狐っ娘の次はロリ枠か?異世界も人材豊富だな)
目の前の執務机に両脚を乗せてこちらを観察するように見ている少女は幼女だった。
外見年齢で換算すると十二歳程度だろう。見た目こそ椎菜のほうが幼さでは一歩譲るが、落ち着いた彼女に対し、目の前の幼女は無邪気が爆発している。
落ち着きがない感じが印象を更に幼くさせるのだ。
プロポーションとしては完璧に近いシャリッテが横に控えているため、余計に起伏のない体型にも目がいく。そうでなくともそれなりに扇情的な格好をしていた。正常な日本人男性の性的嗜好をもつ桔梗はドン引きしているが。
だが、そんな女性としてのステータスは、彼には響かない。彼が何よりも気にしたのは、幼女のこめかみ辺りから生えている黒光りした硬質の「角」だ。
つまり、少なくとも人間ではない。
彼女の幼い肢体から発せられるプレッシャーも、それなりに見事だ。
椎菜のような例外中の例外を除外して考えるのであれば、この幼女の見た目年齢と実年齢は絶対に釣り合っていない。
「ん?何だ、龍人族は珍しいか?」
「……ああ、確かに珍しい」
そしてその疑問に対する回答はあっさりと本人の口から放たれた。
龍人族。
ミルフィリアたちに聞いた話だが、強さだけで語るなら亜人の頂点に位置する種族である。
「龍と人間の間に生まれた種族」だの「龍が人間に転生しようとした姿」など起源には諸説あるが、言えることは「人間とは比べ物にならないポテンシャルを持つ亜人」ということだ。
筋力・耐久が軒並み高く、敏捷も悪くない。
大雑把な性格の者が多いため、器用はそれほどでもないし、魔力も低い。
しかし魔力の低さを補って有り余る《龍技》と呼ばれる特殊能力が存在する。肉体の一時的強化やブレスに代表されるドラゴンの能力の一部の発現。それは「魔力を必要としない魔術」と言われるほどに強い。
シャリッテは知らないが、この幼女の筋力と耐久はともに「A-」である。
それすらも敵わない数値が存在する桔梗や椎菜は、それこそ異次元の存在なのではあるが。
「アタシはこの支部を任されているラファイルってモンだ。気楽にラフィって呼んでくれ」
「了解だラフィさん。それでこんなところに俺たちが呼ばれた理由を教えてほしいものだ、ラフィさん」
「さんはいらねーよ。ラフィでいい。それでお前たちを呼んだのは他でもない。アタシが四百年前くらいにしか見かけなかったようなステータスの持ち主と、アタシでも見たことのないようなステータスの持ち主が同時に現れたと聞いてな。とりあえずこれ以上の情報の拡散を防ぐために奥に引っ張り込んだと言うわけだ」
「さよか。ああ、めんどくさそうな雰囲気」
「まあそう言うなよ、キキョウくん。アタシだって面倒くさいが、それ以上に興味深い。とりあえずもう一度コイツに手を当ててもらっていいか?」
「ああ」
言われるがままにプレートに手を置く。
カウンターで出されたよりもふた周りほど大きく、恐らくさっきのより大掛かりな代物だということが見て取れる。
次に促された椎菜も手を置き、結果に身を委ねる、
返ってきた言葉は
「ははっ、マジだ。ありえねー!!しかもチョーおもしれーことまで書いてやがる!!」
というはしゃいだラファイルの驚喜の言葉だった。
遠隔でモニターできるのか、手に持った別のプレートをためつすがめつしながら一喜一憂している。というか喜んでしかいない。
桔梗は責めるようにラファイルの横に控えているシャリッテに視線を向ける。
その視線の意味を十分すぎるほどに正しく理解した彼女は、慌てたように上司に耳打ちした。
「んあ?ああ、スマンスマン。あまりにも凄い結果が出たから、調子に乗ってもーた」
ラファイルは軽く頭を下げてから説明を始める。
「簡単に言うとだ」
「うむ」
「お前ら強すぎ。ウルグリア最強と謳われるアタシがたぶん十分も持たずに殺されるレベルでお前らは強い。おそらく散歩のついでに王都を陥落できると断定できるよ。ソースはアタシも出来るから」
身も蓋もない言葉だった。
「そもそも異世界人ってなん――ぞっ!?」
言うか早いかだった。
いつの間にやらラファイルの首根っこを右手で掴んだ桔梗が感情のない視線で彼女を見る。
誰も反応が出来なかった。
速いというレベルではなく、瞬間移動をしたと言われた方が遥かに納得できる所業だった。
背もたれに押し付けられながらジワリジワリとしまる首に、亜人最強種が苦悶の表情を浮かべる。B+しかない膂力がA-の耐久を凌駕し始める。
それでも気絶することなく、相手をねめつけようとするラファイルは見上げたものである。
シャリッテは動くことが出来ない。
今までステータスだけが冗談のように高いだけの一般人だと思っていた少年が、いきなりその本性を現したのだ。
上司を失うかもしれない恐怖なんて思いも起きなかった。今は傍観者に徹することで、ただただ自分が殺されないのを祈ることしか出来なかった。それは種の生存本能である。
動けなかったのは椎菜も同じである。
ステータス上の総合ランクは桔梗より上であったとしても、精神力がかけ離れている。
どんなに強くても殺す覚悟のない人間に、桔梗という人間は物理的に負けることがない。余計なことはしない主義だが、殺すときは殺す。彼にしてみれば至極単純な思考回路である。
底冷えするような感情の一切を感じない眼差しに、一般人の感覚を持つ二人は動けない。
この場の全員の生殺与奪の権利を持っているのは、桔梗唯一人であった。
「今すぐその口を閉じろ。余計なことは言うな。その事実をこれ以上外に漏らすな。いいな?」
「グゥ…………(コクン)」
苦しみながらも何とか頷いたラファイルに、納得がいったのか桔梗はゆっくりと手を離した。
その表情は気だるげであり、ただただ面倒くさそうな顔。そこには数秒前まで感じていた殺戮者はおらず、数分前まで確かにそこにいたシニカルな少年だった。
「ゲホッ……ほんに恐ろしい子だ。龍技を使わねば死んでいたところだよ。アレがどれほどお前の琴線に触れたのかはわからんが、たった一度の失言で六百八十と言う龍生にピリオドを迎えるところだったとは恐ろしいな」
「すまないがそこは黙っていたいところだったんでね。まさかこんなスタート地点でバレるとは思ってもいなかったよ」
「高性能の機器で調べたのが仇になったな。表にあるやつではそこまではわからなんだ。キキョウくんはそれほど知られたくないことなのかい?普通であれば自慢するところだと思うんだがね」
「俺にとっては汚点だよ。俺は普通に暮らせればそれでよかった。そんなくだらない理由で周りから奇異の目で見られるほうが勘弁だ」
「そんなものかね」
「そんなものさ」
茶化すように会話をするラファイルも、どうにか平静を取り戻せた。
三百五十年ほど前まで勃発していた人魔戦役ですらここまで命の危機を感じたことはなかった。寧ろ彼女の力を敵や味方も恐れていた。
そんな自分が抵抗すら出来ずに殺されそうになったと言う事実は、彼女としても恐怖を覚えるには十分だった。それを隠し通せたのは長い龍生経験の中で培ってきた痩せ我慢に他ならない。
ドクドクと生を主張するかのような胸の鼓動が心地よくさえある。
間違いなく桔梗に殺す気があれば殺されていた。殺す気がなかったとしても彼の条件を飲まなければ殺されていた。アレはそういう生き物だ。
ラファイルはそんな圧倒的な桔梗に興味を持った。
「あの、紅坂さん?」
「うん?」
これまで一切合財置いてけぼりだった椎菜がやっと再起動を果たす。呆然と、おっかなびっくり声を掛けると、いつもの彼がそこにいる。
これはホッとするべきなのか、いつまたああなるのかと戦々恐々とするべきなのか判断に困るところだが、少なくとも今の彼からは恐怖を感じなかった。
イビルリーパー戦で一度見たためか少しだけ耐性がついていたのかもしれないが、それでも刺激が強すぎたのは言うまでもない。
「大丈夫なんですか?」
「何に対しての質問か図りかねるが、俺たちはこのラフィに正体を知られてしまった。恐らくお姉さんも聞いてしまっただろう?」
「ッ!?」
質問口調ではあったが、これは断定的な確認でしかなかった。
惚けるのが唯一の逃げ道なのかもしれないが、それを実践する勇気はありはしない。嘘と見破られれば殺されるだろう。だからと言って本当のことを告白して殺されないという保証もなかったが。
なんて厄日だと彼女は思った。
彼をラファイルに紹介していなければ。
カウンターで彼らの相手をしなければ。
本日出勤日でなければ。
ギルドに就職しなければ。
アリウに暮らしてなければ。
と、どんどん益体もない後悔をしながらも、止まりかけた思考をそれでもフル稼働させる。
「は……はい」
そして出た結論は正直に話すと言うことだった。
単純に考えても、考え抜いても答えは同じ。彼の一番納得のいく答えを返すことだった。
桔梗は既にシャリッテに聞かれたことを確信している。だからこそ惚けるのは悪手でしかない。
「やっぱりか。お嬢、前途多難だな」
「はあ……」
対する椎菜は気の抜けた返事しか返せなかった。
確かに異世界人と知られたことは大きなマイナスだが――ただそれだけで面倒ごとに巻き込まれる気がしたからだ――だからと言って相手を殺そうなどという選択肢は彼女の中には最初から最後まで用意されていない。
だから桔梗の考えが理解できないのだ。
顔を傾げる椎菜はこの場に不釣合いなほど可愛かったが、彼は仕方ないとばかりに首を振るだけだ。
「話は済んだか?そこでアタシから提案したいのだが」
「何だ?面倒ごとか?」
「そう邪険にするなよ。その面倒ごとを回避するためのアドバイスさ」
ニヤリとウインクするラファイル。
シャリッテのほうに顔を向けると、
「シャーリー、ギルド証を彼らに」
「!は、はいっ!」
名前を呼ばれ、バネ仕掛けの人形のようにビクンと姿勢を正すと、それから自分の任務を思い出し、手に持っていたままだったギルド証を各々に手渡した。
桔梗に近づくだけで心臓が早鐘を打ち鳴らし、差し出したギルド証を掴まれたときは死さえ覚悟したが、その覚悟はあっさりと裏切られ、彼は渡されたギルド証を興味深そうに眺めている。
あの緊張はなんだったのか、とシャリッテは少し恥ずかしくなった。
「受け取ったか?では、そのギルド証の右側に親指を押すように触れよ。それで個人情報が登録される」
「意外にハイテクだな」
「ふむ。お主たちの世界にはこういう技術がなかったのか?」
「難しい質問だな。一方ではこんなものより遥かに発達した技術は存在するとも言えるし、一方ではこんな悪魔みたいな技術は到底実現できないとも言えるな」
「何やら興味深い話だな。今度聞かせておくれ」
「お前黙る気ないだろ?」
「あるさ。でも今この場の四人は『二人が異世界人』という事実を既に認識してしまっている。故にこのことをこの場に於いては黙る必要は無いということだろう?」
「……本当いい性格してるね」
「よく言われるよ、うちの副長に」
「そいつ髪が薄くて痩せぎすだろ?」
「??よくわかったな?」
「まーねー」
くだらない問答を横目に椎菜も素直にギルド証を親指で押す。
すると数瞬だけ親指を起点に幾何学模様の輝きがギルド証の表面を走り抜ける。それが収まると、すぐに別のものが浮かび上がってきた。
「あ」
「自分の名前と冒険者ランク、そして称号が浮かび上がったはずだ。冒険者ランクはあとでシャーリーに説明させるが、見てもらいたいのは称号の部分だ。あるだろう?『異世界人』と言う意味合いのものが」
確かにある。
《大魔導》《聖純の乙女》などという大仰なものから《ロリ属性》という恥ずかしいものまである中で、確かに《異界の魔術師》というそれらしい称号を見つける。
「ギルド証は身分証明書だ。自分であるという証明のために、他人に見せる機会が非常に多い。ギルド証以外だと国が発行する国民証があるが、これは異世界人であるお前たちが持っているわけがない。故にギルド証を見せねばならぬのに、見せたくない称号があるというのは不都合だろう?」
「……ああ」
「だからアタシが詫びの意味も込めて裏技を教えてやる。隠したい称号を意識しながらその称号の書いてある裏側を小指でなぞれ。それで表示が消えるはずだ」
「あ」
言われたとおりにやったら確かに消えた。
基本こういった小さい平べったいカードに小指で操作するのは稀だ。スマートフォンの操作などならあるかもしれないが、今回のような裏側をいじることはまずないだろう。
言われれば非常に簡単だが、偶然ではまず起きない操作方法だ。これをギルド側が隠しているならば、まず知られることはないだろう。
それもそのはず。
この称号は不名誉なものも載る。その典型が前科だ。
故にそのものが犯した罪は償いきるまでは決して消えることはなく、それを隠すことは出来ない。それを隠す――即ちギルド証の提示を拒めば、それ以上に不審がられるだろう。
戦闘力を持つ冒険者が無法者ではなく、それなりに秩序ある行動をとろうとするのはそのためだ。
そんな説明を聞きながら椎菜はドサクサ紛れに《ロリ属性》という不名誉な称号も隠した。
「どれ見せてみろ、確かめてやる。……ふむ、無事消えてるようだな。というか、《大魔導》なぞと恐ろしい称号があるのぉ。まあ特性が《魔術の極み》というのだからむべなるかな、という感じか」
「そ、そういうものでしょうか?こういうのも消したほうがいいんじゃ」
「いや、それはあまり推奨しない。確かに不都合なものは消したくなる心理もわかるが、不自然に称号が少ないと、それはそれで怪しく思われてしまう。それに、ちょっとくらいそういった称号がないと相手に舐められるし信用もされない。だから残しておいたほうがいいぞ。ほれ、アタシも」
そう言ってラファイルは自分のギルド証を見せた。まあ、ギルド職員なのだから、確かに持っていてもおかしくはない。
「うっわ」
そこには引くような称号のオンパレードだった。
《最強種》《古の龍》《超越者》などはまだ可愛いほうで《喰らう者》《殺人者》《国崩し》《禁忌を破りし者》など本来はあってはいけないものまである。
「人は生きているだけで罪を犯す生き物だ。清廉潔白という者の方が珍しい。故に称号にいいことしか書かれていないヤツは良いヤツ以前に胡散臭いのさ。寧ろマイナス面でも真摯に向き合うヤツのほうが余程信用も置ける。そうだろう?」
その説明はストンと椎菜の心に落ちた。
魔術の世界に身を置いた今なら彼女もわかる。そういった人たちを何人も見てきた。
良いことをするために、悪事に身を染める。百人を助けるために一人を犠牲にする。
彼らはそんな自分の罪と正直に向き合っていた。寧ろ「仕方がなかった」と弁解する人は総じて尊敬に足るような人物ではなかった。
椎菜の師も師事するにあたってまずは自分の人となりを彼女に語った。そしてその中には目を背けたくなるような話もあった。
半ば強引に引き込まれたとはいえ、それでも椎菜が彼女に師事すると決めたのは、そんな師を眩しく思えたからだった。
「キキョウくんも見せてみろ。ほほぅ。やっぱりお前は興味が尽きんな」
「もう好きにしてくれ」
悪いと思って覗き込んでみれば、彼もラファイルに負けず劣らず酷いものだった。
異世界人と推測できる称号は既に消えてはいたが、《魔族殺し》《魔物殺し》《超人》《意識の外を歩む者》《堕落者》《巻き込まれ属性》etc……そんな中に《亡霊》と入っていることが少しおかしい。どうやら向こうでの称号も反映するらしい。
そして《巻き込まれ属性》は大いなる皮肉だ。彼がここまで厭世的になってしまったのも、案外これが原因なのかもしれない。
「話を元に戻そう。これでお前たちの一番の気がかりは解決した。これからはお前らの実力が極力外にバレないような案を提言する。まずは冒険者ランクだが――シャーリー?」
「はい。冒険者ランクとはその名の通り、その個人が保有する冒険者としてのランクになります。
最初はランクEからはじまり、依頼の達成度合いなどからランクが上下します。また、一定期間依頼をこなさないと冒険者ランクが失効され、Eランクに戻ってしまいます。その期間はランクによって異なりますので必要であればあとでまたお教えいたします。
そしてそのランクは依頼書のランクとリンクしており、冒険者は自分の冒険者ランクより上の依頼が受けられません。例外としてパーティメンバーに自分よりランクが上の人がいれば受けることは可能ですが、それでも著しくランクが離れている場合はギルドが断ることもあります。
ランクはEから順にD、C、B、A、そして最大Sランクとなります。とはいってもSランクは名誉称号のようなものです。ギルドリーダーのようにSランクになった人は基本何もしていなくてもランクは変動しません。だからこそSランクには厳しい評価基準が存在し、生半可なことではランクアップはできません」
「かかか!実力で言えばお前たちは既にSランクの条件は満たしておるがな!」
「……ギルドリーダー以上の戦力の持ち主ですから、確かに否定はしません」
「だ・が。そんなホイホイと登録したてのルーキーにSランクを与えていたら、余計な騒ぎを起こすだけだ」
「その通りだな」
「だからお前たちのランクは通常通りEランクとする。実力のあるものはDランクからスタートすることもあるが、別にいいだろ。そしてお前らたちは基本受付はすべてシャーリーにさせろ」
「私ですか!?」
「うむ。本来は冒険者ランクより上の依頼は受けることは適わぬが、シャーリーを窓口にしたときに限りその条件を外す」
「つまり実入りのいい高ランクの依頼も受けてもいいと?」
「その通り。お前たち――いや、お前ならAランクの依頼だろうが鼻歌交じりでこなせるだろうよ」
ラファイルが意図的に椎菜を外したのは、彼女の弱さを正確に捉えていたからである。
恐らく今の彼女では討伐系はほぼほぼ無理だろう。誰かを傷つけるよりは自分が傷ついたほうをよしとするような性格である。
それは美徳のように聞こえるが、その実ただの臆病者に過ぎない。そういった人こそ無意識に何かを犠牲にしていることにすら気付かない。自分が普段口にするものが、何かしらの死骸であることに何の疑問も覚えないように。
そういった人種は極限状況に於いて判断をしくじる。というよりも判断を放棄する。
そしてその先にあるのは死だ。
「そして周りには当然その事実を伏せる。なーに、アタシが協力しているんだから、そこらへんは簡単にちょろまかせるさ」
楽しそうにラファイルが笑う。
しかし指名されたシャーリーは気が気ではない。
その上、
「シャーリー、お前も口を滑らすなよ?不用意に漏らしてもアタシは助けられんぞ」
「はい……」
上司の脅し付きである。否、彼女は事実を事実として言ったまでだ。そう考えるならばラファイルの忠告は寧ろ優しさの表れとも取れる。
彼女は年甲斐もなく泣きそうになる自分を諌め、ぎこちない笑顔で一礼した。
「これからよろしくお願いいたします」
「ああ」
「はい!」
シャリッテから見れば最悪のスタートを切った関係ではあるが、だからこそ彼女は知る由もない。
ひょんなことから命を救われ、桔梗に異性として好意を抱くどころか、同棲にまで発展してしまう未来のことなど。
お読みいただきありがとうございます。
書き溜めていたのはここまでなので、ここから更新頻度は落ちます。
ご容赦くださいませ。