プロローグ
真雪のように白い肌、真紅の薔薇のような瞳、夜の闇に溶けるような深紫の髪、その頭には突き出した山羊のような琥珀色の角。
そう。僕は"人間族"を治める【ガイア王国】の王子、ランドルフ=ヴァシ=ロサクノス。
普通そこは"魔族"だろ
え、何?角生えてるのに"人間族"?馬鹿言うな。そう思っていた時期が自分にもありました。
とりあえず僕の昔話でも聞いてもらえませんか。
こんな僕には"前世の記憶"というものがありまして、そこそこの顔で、そこそこ学業を頑張り、そこそこの友人を持ち、膨大な時間をアニメと漫画とゲームに費やす生活でした。俗に言うオタクっていうやつですかねぇ。オタクという呼び名があまり好きではありませんが。
そして僕の平凡人生は唐突に終わりました。友人と遊ぶために待ち合わせ場所へとバイクを走らせていたのだけど、交差点で信号無視をしてきた車と激突。体は投げ出され、運悪く激突してきた車の下敷きに。免許を取るときに危険予知がどうとか習ったけど、正直どんなに気をつけていても対応できないよあれは。そのままお陀仏した僕はどういうわけか前世の記憶を持ったまま赤子になっていた。
パニックだったよ。周りはぼんやりとしか見えないし、音も良く聞こえない、体を動かすこともままならない。でも赤子だから泣くことしかできない。散々泣いたあと、僕の記憶は途切れた。
もう一度自分の事を把握できるようになったのは、5歳になった時だった。その時にはおぼつかないが歩けていたし、少しなら喋ることができるくらいにまで成長していた。初めて鏡で自分の容姿を見て尻餅をついたのはさすがに恥ずかしかった。
真雪のように白い肌、真紅の薔薇のような瞳、夜の闇に溶けるような深紫の髪、その頭には突き出した小ぶりな山羊のような琥珀色の角。例えるならこんな感じだろう。過大評価ではないよ。まるで作り物のようなザ・美少年。
本題だ。なぜ僕が"人間族"なのか。
それはこの世界では僕のように角が生えていたり、翼があったりする、前世のゲームで言うところの"魔族"という種族を"人間族"と呼び、"人間"という種族を"魔族"と呼ぶだけのこと。ね、簡単でしょう?
僕はそんな世界で覚えているだけでは二回目の人生を歩んでいこうと思います。
_