表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫の仮面  作者: 馬場悠光
9/16

第三章②

「おかえりなさーい」


 家に帰ると、為代がソファに座ってお菓子を食べていた。クッキー、ポテトチップス、チョコレート…


「今日は部活動は無いのか?」


「うん。先週、あんな事件があったからね。寄り道せずに帰れって言われちゃった」


「そうか…そうだ、俺にもそのお菓子、少しだけ分けてもらえるかな?腹が減ってさ」


 為代のお菓子を食べる手が止まった。そして立ち上がると部屋中を見渡し、口を開いた。


「別にいいけど…その前に、ちょっとだけ外に出ない?外の空気を吸いたいから」


 為代がそんな事を言うのは初めてだ。


 俺は鞄を置くと、先に行った彼女の後を追って外に出た。


 俺達の家は川沿いに建っており、為代はその柵に座っていた。


「危ないぞ。落ちたらどうするんだ」


「…うん」


 小さく頷くと、為代は柵から下りた。彼女にしては珍しく、素直に俺の言う事を聞いた。何かおかしい…


「俺に言いたい事でもあるのか?」


 為代に歩み寄った。


「…卓郎の事か?アイツと喧嘩でもしたのか?」


 卓郎の名を出した途端、彼女の身体が強張ったのを俺は見逃さなかった。


「…何でもないよ」


「何でもない事あるか。わざわざ人を呼んでおいて」


 俺はさらに為代に歩み寄った。その目は潤んでいる。


 背後でドアが開く音がした。振り向くと、エプロン姿の俺達の母親が出てくる所だった。


「夕食が出来たよ」


 その言葉と同時に、為代は笑顔を浮かべて俺の脇を抜けて、玄関へ駆けて行った。


 うまく逃げられちまったな…


 そう思いながら俺も、玄関へ歩いて行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ