第三章①
大川の死が皆に知れ渡ったのは、週明けの月曜日だった。
その死を担任の口から出た時、いきなり立ち上がりだす男子生徒もいれば、泣き出す女子生徒もいた。小田切はあらかじめ誰かから話を聞いたのか、今日の学校に来ていない。
そんなクラスメイト達の姿を見ながら俺は小さく舌打ちした。あんな奴が一人死んだ位でなんだ。この俺をふざけた格好をして殺そうとした奴だぞ。
俺は一応人を殺してしまった訳だが、全く罪悪感というものが湧いてこない。当たり前だ。奴は俺を殺そうとしたんだ。これは正当防衛だ。
「真価」
卓郎が歩み寄って来た。その顔には、いつもの笑顔は浮かんでいない。
「…大変な事になったな…あの祭りで大川が死んでしまうなんて…」
「そうだな。それよりノートの方は大丈夫なのか。アイツの家にあるままだろ?」
「暫く経ってから返してもらうとするよ。大川の家は、アイツが死んで色々と大変だろうからさ。それにしても、お前も酷い奴だな」
酷い奴…卓郎の口からその言葉が出てきた時、全身の毛穴が開くのを感じた。
「妹や俺を置いて、先に帰っちまうなんてさ。為代さん、悲しそうにしてたぞ」
「いや…ちょっと用事を思い出してさ」
何だその話か…俺はゆっくり息を吐き出した。
「しかし一体、アイツを殺した奴はどんな人間なんだろうな?警察も、全力で調査をしているそうなんだが」
「そうか…」
警察も全力で調査している…
紫の怪人から逃れられたと思ったら、今度は警察からも逃れなければならない様だった。