エピローグ
自分の部屋に戻った俺がまず初めにした事は、クスリの処分だった。
吸おうとしていた覚醒剤はもちろん、部屋中に隠した大麻樹脂やシンナーの入ったビンをゴミ箱に放り込んでいく。
最後の卓郎への質問で、頭の中に渦巻いていた仮説は確信へと変わった。
大川や小田切、そして卓郎も含めて、誰も紫の怪人ではなかった。紫の怪人なんて、最初から存在すらしなかったのだ。
俺を襲ってきた怪人は見えてはいけない物…クスリの大量摂取による、幻覚だったのだ。
駅のホームから落ちたのはただ単にバランスを崩しただけの事。鉄鋼が落ちてきたのはその重さに耐えられなかったワイヤーが切れただけの事。俺自身が勝手に被害妄想をかき立てて事態を複雑に、深刻にしただけの事だったのだ。
そしてその結果、二人の人間の命を奪ってしまった。
全ての元凶は卓郎だ。だが、実際に刃を握ったのは俺だ。
大川…小田切…そして為代…本当にすまなかった…
持っていた全てのクスリを捨て終え、改めてゴミ箱から溢れ出たクスリの山を見た。
…俺を廃人にした所でクスリの魔力からは一生逃れられないぞ…
それで結構だ。
背後で人の気配がした。見ると、紫の怪人が立っていた。襲ってくる様子もなく、ただ俺を見つめている怪人に対して、俺の口から、なぜかしら笑みがこぼれた。
「これからもよろしくな」
俺は怪人に軽く会釈をするとその脇を通って、一階へ下りる為に階段へと向かった。いつの間にか日は傾き、暗くて下の階が見えない状態になっている。
かまうものか。光など必要ない。
俺はその暗闇の中を、ゆっくり下りていった―
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