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紫の仮面  作者: 馬場悠光
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第四章①

「どうしてお前がここに…そうだ!」


 俺は倒れている為代を指した。


「為代が大変なんだ!だけど、急いで救急車を呼べば助かるかもしれない!」


「却下」


 それだけだった。


 こんな冷たい卓郎の言葉を聞いたのは初めてだった。


「俺はそんな無意味な事をする為にお前に会いに来たんじゃない」


 卓郎は肩に提げていたバックから、小さな注射器を取り出した。


 なぜ卓郎が俺にこんな事を…


 卓郎は笑みを浮かべながらゆっくりと俺に歩み寄ってくる。


「何をするきだ…」


「安心しろよ、この注射器の中身を体内に入れても死にはしない。ただ、一生口の利けない廃人になるだけさ」


「為代はお前が殺したのか。卓郎」


 俺は苦し紛れに、思った事を口に出してみた。卓郎の笑みと歩みが止まった。


「為代はお前が殺したのかと聞いているんだ。答えろ!」


 為代を持つ手に力が入るのを感じた。卓郎は面白くなさそうに注射器を下ろした。


「心外だな…まあいいさ。俺とお前は友達だし、廃人にする前に少し、カラクリを教えてやってもいいか」


 卓郎は為代の机から椅子を引き出して座ると足を組み、回答を語り始めた。


「あれは中三の秋頃だったかな?当時俺の通っていた中学で、講師を招いて薬物乱用防止講話があったんだ。とにかく、薬物は絶対悪ですって内容だったな」


 俺の通っていた中学でも、定期的にそんな講話が行われていたが、俺はロクに内容も聴かず、ただ授業が遅れる事だけを心配していた。


「講話を聴いている内に思ったんだ。「どうして薬物を使う事はいけないのだろうか」ってね。ほら、仮に薬物を使用したとしても、使った本人だけがおかしくなるだけで、周囲の人間がおかしくなる訳ではない。ただの自業自得じゃないか。そう思ったんだ」


 手に持った注射器を弄びながら楽しそうに喋るその男はもう、俺の知っている村崎卓郎ではなかった。


「気になった事は本やインターネットに頼らず、自分で実験して確かめる…だが、クスリの効力を自分の身体で確かめるのはさすがに抵抗があった。しかしそんな時、俺はお前に出会った」


 再び彼は俺に笑みを浮かべた。


「成績は優秀だが、それを鼻に掛けて周囲の人間を見下している。だが性格は小動物の様に小心者。俺はそんなお前こそ、今回の実験の実験台に相応しいと思ったんだ」


 一体、一人で君はいつも何をやっているんだ?


 一年の春。こう声を掛けてきたのが村崎卓郎だった。俺はその時、数学の予習をしており、分からない問題に直面していた。


 何だよ、こんなの簡単じゃないか。


 彼は自分の胸のポケットに入れていたボールペンとメモ帳を取り出すと、あっさりとその問題を解いてしまった。


 自分が解こうとしていた問題を先越されたのに、なぜだか俺はその男に対して妙な親近感を抱いたのだった。


 その後も、分からない問題を教えあったり、テストの順位を競い合ったり、気付けば互いの家に遊びに行く様な関係になっていた。


 俺に、初めての友達が出来たのだ。


 だが一年前の夏休み前…丁度この時期だっただろうか?


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