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剣の舞  作者:
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8.策

 気付けば月は大分傾いていた。


「‥‥あぁ、そろそろ戻らないと」


 告げ、呼びかけようとして呼びかけるための名を知らないことに気付いた。


「そう」


 彼女は当然のように立ち上がってルセロの目の前にいた。あぁ、彼女もあるべき場所に戻るのだろうな、とぼんやり思ったから、簡単に返答した彼女が次に告げた言葉に絶句した。


「じゃ、行くか。案内よろしく」


「‥‥は?」


 じゃ、行くか。というのは別にいい。丁度会話も途切れたところだったのだし。だがそのあとに続いた言葉の意味が分からない。


「‥‥案内?」


「うんそう」


 簡単に彼女は頷く。


「流石にあたしが一人で紛れ込めるわけないっしょ、あんたらン中に」


 呆れたように付け加えられてもそもそも意図が分からないのだが。大体人質を取られているからあの魔女を守るしかない、と言ったその口で、一体何を言うというのか。


「‥‥あぁ、大丈夫。これはイチモウダジンにするための策だっていうことになっているから」


「‥‥策?」


 さっきから単語しか口にできていない。あと彼女の、一網打尽の発音が実にたどたどしいとどうでもいいことを思った。


「戦姫もね、ヘキエキとしているわけ。あの根性悪いくそむかつくばばぁにご退場願いたいってのは、共通の願いなわけ」


 だから、といまだ名を知らぬ彼女は言う。もちろんルセロも名乗ってはいないから平等に名を知らないわけだが。


「戦姫はあたしに、反旗をヒルガエそうなんていうキコツ?のある若者たちを何とか引っ張ってこいって言ったのね。同時に、それがハンランブンシをイチモウダジンにするための策だって、根性悪いくそむかつく勘違いばばぁにジョウソウ?するんだってね」


 多分、ルセロ達よりも年長の連中は剣姫に心酔しすぎなのだと思う。そしてその実力を知りすぎて、あきらめが身に付きすぎているのだと思う。ただそれがなかったがためにどうやら気骨のある若者たちと認定していただいたということか。


 というよりも、戦姫が難解な言い回しをしすぎなのかもしれないが、剣姫‥‥の影武者の彼女の言葉の拙さは一体何だというのだろう。というかそういう人間だと知っているだろうに、少しは噛み砕いてやれと思わなくもない。

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