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剣の舞  作者:
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6.影武者のこと

「‥‥影、武者?」


 気迫だけで肉薄していたルセロの短剣を、手にした抜身の剣で簡単に抑えながら、彼女は頷いた。


「そ。

 本物のお姫さんが戦場になんか出ると思った?」


 まぁ、姫って言っても国王の姪なんだけどさ、と軽く言いながら、簡単に短剣を弾き飛ばして首元に剣を突き付けてくる、それに気負いがまったくないことが異常だった。


「‥‥戦姫も、か?」


「うんにゃ。戦術を練るっていったって、戦場に出るわけじゃないしね、多分、そっちは本物のお姫さんだよ」


 あたしは一介の影武者だし真実なんて知らないけどね。そう言うと、彼女はにぃと笑った。その瞳だけは昏い。首元に突き付けられた剣に殺気は籠っていないが、なんとなく、殺意などなくても彼女はルセロを簡単に殺すのだろうと思わせるような笑みだった。


「‥‥お前が影武者だったとして」


「影武者だってば」


 ただ、現実として武器は飛ばされ、彼女に隙はなく、だがなぜか言葉を交わす気はあるようなのでそれだけが命綱と信じて、ルセロは彼女の目を見ながら口を開く。


「だからといってお前があの魔女を守り続けているせいで、あの魔女を殺せないのは確かなことだろ?」


 それに母親が心酔しているのも戦場で兵士たちを魅了するのも結局はこの影武者なのだろう。それは口にしなかったが、燃えるような嫉妬の念は不思議と消えていた。


 ごく近くで見つめ合う。その唇が引き結ばれるのが分かった。


「あたし、人質とられてんだよね、あの魔女に」


 だから、どんなにあのばばぁが嫌いでも守らざるを得ないのだ、と、不本意そうに言いながら、彼女はルセロの首元から剣を戻した。いつの間に持っていたのか鞘に突っ込み、泉のほとりに歩いていく。急に解放され一瞬へたり込みそうだったが、無様にしりもちをつくことは自分に許さなかった。多少ふらつきながらその後ろ姿に近付く、ついでに飛ばされた短剣も捜し出して。


「ね、あんたさ」


「うわぁ?!」


その短剣を仕舞うべきか挑みかかるべきか悩んでいるところで急に振り返られて、情けない悲鳴を上げてしまった。

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