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剣の舞  作者:
36/38

35.潜入

 剣姫は舞い踊る。


 ただひたすらに謳うように、楽しそうに、ひたむきに死の踊りを踊り続ける彼女は美しい。


 その腕がひらめくたび、その脚が地を蹴るたび、血飛沫が生まれ彼女を彩る。いや、彼女は血に濡れていない。そんなものにまみれることなくただ死の静寂を生み出し続ける。


 いや、とルセロは首を振った。


「見とれてる場合じゃない」


 もっともそれはルセロに限ったことではなく、その場に存在する全ての視線を彼女は集めていた。

だから、ルセロはただ、身体を低くして彼女と逆の位置を歩けばよかった。


 戦場を駆けるルセロの赤髪は目立つはずだったが、ただ歩いているだけでは目立たなかった。そもそもが小柄な体躯だ、埋没しようと思えばいくらでもできる。


 ほどなく、ルセロは塔の前に立っていた。


「‥‥行ってくる、な」


 一旦、足を止めて身体ごと振り返った。彼女の戦いの舞台を眺める。


 静かなルセロの声に応えはなかったが、ただ一瞬、踊り狂う彼女と目が合った、気がした。それに押されるようにルセロは塔の扉に手をかけた。



 彼女の為の牢獄だったというその塔は、いたって簡素な作りをしていた。簡素で、強固だ。


 1階部分には外部へつながる扉しかなかった。それを開き、滑り込んで閉じてしまえば完全に外界と遮断されたような気がした。奇妙に静かだった。外は喧騒に包まれているのに、内部は空気が止まっているようだ。明り取りの窓すらなく、火が灯っていた。柔らかな光のはずなのに温かみを感じられないのは何故だろう。揺らめいていないせいだろうか。


 恐らくはこの空間に、魔女の私兵と化しているという近衛連中が詰めていたのだな、と想像できる程度には、ひとの痕跡が残っていた。だがそれだけだった。


 このような場所で、サリアナは生きて来たのだな、と思った。


 階段を昇る。


 開き戸はなく、落とし戸しかなかった。一部屋分の広さしかなく、狭い階段が各階をつないでいた。

それにしてもサリアナならともかく、魔女は本当にこの場所にいるのだろうか。少し不安になるが、外の彼女を思い起こし、信じて進むことにした。

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