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剣の舞  作者:
34/38

33.西の棟

「だって、あんた――」


 心が定まらない前に口に仕掛けたルセロの言葉は、轟音でかき消された。轟音、そして怒号。大勢が駆け込んでくる気配。


「‥‥門が破られたな」


「‥‥あぁ」


「ばばぁが逃げる。急ごう」


 本来であれば、ルセロこそそちらにいるはずだった。門を破り、王城を蹂躙し、そうして王妹を捜して晒すはずだった。


 けれど実際は、ルセロはこうして、誤魔化すように足を速めて軽く駆け足で走る、小柄なサリアナの後を追っている。


 言ってやりたいことはいくつもあるのに。


「‥‥抜け道とかは?」


 西の棟に魔女は隠れていると彼女は言った。王城の構造がどうとかはルセロには分からないことだが、なんとなく、そこここに隠し扉やらがありそうな気がしている。離宮もそうだった。


 だが、息を乱さないままサリアナは簡単に言った。


「西の棟に抜け道はないよ」


「‥‥詳しいんだな」


 ルセロ自身、暴きたいのか暴きたくないのか、それはよく分からない。ただ彼女は苦く笑った。


「要するに、あたしがいたとこだからさ。あそこに抜け道はない。あたしを逃がさないために」


「‥‥あぁ‥‥」


 それに、と彼女は続けた。絶句するルセロの気持ちなど知ったことかというように、むしろ無理に無視をして。


「あのばばぁが、煤けたり埃まみれになったり、とかそーいうのを許すとはとても思えないんだよね」


 そりゃ隠し扉や抜け道は隠されているものだから、普通掃除は行き届いていないだろう。が。


「‥‥そんなこと言ってる場合かよ」


「だよね」


 そんな間抜けに蹂躙されていたのかと、国民としてどこか情けない気持ちになった。

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