33.西の棟
「だって、あんた――」
心が定まらない前に口に仕掛けたルセロの言葉は、轟音でかき消された。轟音、そして怒号。大勢が駆け込んでくる気配。
「‥‥門が破られたな」
「‥‥あぁ」
「ばばぁが逃げる。急ごう」
本来であれば、ルセロこそそちらにいるはずだった。門を破り、王城を蹂躙し、そうして王妹を捜して晒すはずだった。
けれど実際は、ルセロはこうして、誤魔化すように足を速めて軽く駆け足で走る、小柄なサリアナの後を追っている。
言ってやりたいことはいくつもあるのに。
「‥‥抜け道とかは?」
西の棟に魔女は隠れていると彼女は言った。王城の構造がどうとかはルセロには分からないことだが、なんとなく、そこここに隠し扉やらがありそうな気がしている。離宮もそうだった。
だが、息を乱さないままサリアナは簡単に言った。
「西の棟に抜け道はないよ」
「‥‥詳しいんだな」
ルセロ自身、暴きたいのか暴きたくないのか、それはよく分からない。ただ彼女は苦く笑った。
「要するに、あたしがいたとこだからさ。あそこに抜け道はない。あたしを逃がさないために」
「‥‥あぁ‥‥」
それに、と彼女は続けた。絶句するルセロの気持ちなど知ったことかというように、むしろ無理に無視をして。
「あのばばぁが、煤けたり埃まみれになったり、とかそーいうのを許すとはとても思えないんだよね」
そりゃ隠し扉や抜け道は隠されているものだから、普通掃除は行き届いていないだろう。が。
「‥‥そんなこと言ってる場合かよ」
「だよね」
そんな間抜けに蹂躙されていたのかと、国民としてどこか情けない気持ちになった。




