31.嘘と本当
「それじゃ、あたしたちは行くとするよ」
あっさりとサリアナは言った。2人の姫君はそれを止めるでもなく、ただ、戦姫の面持ちがどこか思いつめて感じられた。剣姫の笑顔からはどのような感情も読み取れない。それはそれで異様だった。
「そう‥‥」
「私たちにはまだお客様が残っているものね」
出迎える相手?と思い、外の騒ぎをまるで無視していたことに気付いた。あぁ、そういえば、ルセロたちは何人もの集団を置いてきたのだった。
「ルセロ。行こう」
「‥‥あぁ」
どこへ?とは訊かなかった。この場で訊くべきではないような気がしたのだ。そしてそれは正しかった。テラスから飛び込んで、今度は正しく扉を開いて、それが閉まった音に紛れてサリアナが呟いた。
「‥‥あれが、アニアナの精いっぱいなんだろーな」
「?」
まるで迷いなく歩き出す、そのあとを慌てて追った。
「アニアナは、『伯母上は城を出た』と言ったろ?カタリナは『西』と言った。
だから多分、ばばぁはこの城の西の棟に隠れてる」
「‥‥どういうことだ?」
ルセロは城の内情に詳しくない。多分護衛が多いほうに向かえば王族がいるだろう、という程度の甘い見通しでここまできていた。だから、サリアナの後を追うしかない。
「言ったろ。戦姫は魔女を裏切れない。剣姫は違うんだ、戦姫が魔女に預けられていたのは剣姫が生まれて母が子育てにかかりきりになった時期だから」
「‥‥城を出た、のは嘘だってのか」
あっさりとサリアナは頷いた。足早な歩みは鈍りもしない。
「そういうこと。でも、戦姫にも分かってるんだ、魔女を打倒しなきゃならないことくらい。戦術を練って戦姫だなんて呼ばれるくらい、機を読めるんだから。
だから、あれが精いっぱい。あたしに伝わる程度の嘘でごまかさなきゃ、罪悪感に勝てないんだと」
そんな罪悪感は魔女が植え付けたものだ。どこまで計算で、どこまでがただ自分勝手な振る舞いなのかは誰にも分からないが。
「‥‥。サリアナは、こっちの城にも詳しいのな」
「まぁね。西の棟には、いたことがあるから」




