30.姉妹
駆けさせた馬を跳躍させて、さらにその一番高い地点で背を蹴って、彼女は飛んだ。それは跳ぶというよりも飛んでいた、必死で食らいつくように、恐らく同じことをしたのだろうけれど、どうやって自分がその場所に立ったのか、記憶が飛んでいた。
彼女の背に翼を幻視した。
「‥‥相変わらず無茶をする」
その静かな声は静かすぎて、背景と同じものだと聞き流しかけた。
「アニアナ」
ただサリアナが呼びかけたことで、そこに立つ人影に意識が向いた。
似ている。
と思った。
「楽しかった、サリアナ?」
「カタリナも。揃って何をしてたんだ?」
そういえば跳ぶ直前に、テラスに人影を見たのだった。あれほどの勢いで跳び込んだのだ、今座り込んでいるこの場所は階下からは見えないが、多分人影が彼女たちで、ルセロ達が突っ込んだために建物内に退避していたのだろう、滲み出るように姿を現した。2人の女性だった。
2人はよく似ていた。さらに言えば、サリアナも。
「お前たちを待っていたのよ」
「随分と早かったのね?」
「殺さなかったから」
3人とも、声もよく似ていた。
そして、揃って、ようよう立ち上がったルセロを振り返った、その面差しがよく似ていた。
「‥‥戦姫、と、剣姫?」
この、王城で。剣姫の影武者であるサリアナとよく似た姫君など、ほかに知らない。2人は揃って頷いた。
「そうよ」
「ようこそ。歓迎する。伯母上を打倒しに参られたのね」
小柄なほう、よりサリアナに良く似た、恐らくは剣姫はあっさりと頷き、大柄なほう、恐らくは戦姫は歓迎を口にしながらもどこか苦しそうだった。
「伯母上は城を出られた」
「多分西へ向かったんだわ」
ということはまた、ここから馬を飛ばすんだろうかと、せっかく立ち上がったところだがへたり込みたくなった。サリアナはけろりとしていた。
「それは困ったね」
全然困っていなそうに、肩をすくめた。




