29.目指す地点
王都の目抜き通りは閑散としていた。
それはそうだろう、とルセロですら思う。使える人間なら臨時で徴兵されるはずだし、そうでなければ逃げ出すか息を殺すだろう。人通りのない、街なかの馬車もすれ違える大きな道を、2騎はひた走る。ほかの連中はすっかり置いて来てしまった。
いくらなんでも、人通りがないとはいえ街の中では外のようには爆走はできず、それでもかなりの速度は出ているものの、怒鳴らなくても会話できる程度には足も緩んだ。石畳であることは変わらないのでひそめた声は流石に通らないが。
「――で、どこに向かってるんだ」
今更訊くのもおかしな気はするが、勢いに呑まれてやって来たのでそこは容赦してほしい、とルセロは思う。
サリアナは馬を駆けさせながら器用に肩をすくめてみせ、
「ばばぁの所?」
と言った。
「居場所分かってるのか?!」
「知らねー。知らねーけど、多分、王城に行けば分かるんじゃない」
あぁ、ということは王城に向かっているのか、これは。
確かに目抜き通りをまっすぐ走ればそれは中心に向かうということだけれど。
「もしかしたら王都から逃げてるかもね」
乾いた笑いが漏れた。
「それは、まずいな」
「でも間違いなく、あのばばぁは王城に戻ってくる。溜め込んだものがあるからね」
そうだったら、とサリアナは言った。
「そうだったらあんたには死んでもらうよ、ルセロ。死んだことになってもらうだけかもしんないけど。そうしなきゃあのばばぁは手が届くところに来やしないから」
余りに当然のことのような声音だったから、思わず当然のように頷きそうになったが、寸でのところで首を振った。
「‥‥それはぜひとも後者でお願いしたい」
「まぁ、何とか考えてみる。し、要はばばぁが逃げる前なら話は早い」
「それはそうだ」
不意にサリアナは唇を引き結んで、前方少し上目を見据えた。
そこはテラスになっていて、人影を認めるのと、背後で怒号が爆発するのとが同時だった。
「‥‥ようやく追いついたのか」
「‥‥みたいだな。さて、ルセロ、」
不意に彼女が速度を上げて、
「――跳ぶよ!!」
叫んだ言葉は飛ぶよ、に聞こえた。




