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剣の舞  作者:
28/38

27.駆け抜ける

 サリアナは馬を駆る。ルセロもそのあとを必死で追いかける。


 一度彼女は楽しそうに振り返った、その視線を追って振り返ったルセロの目に映ったものは、どれが敵だか味方だか、ひと塊となって後を追ってくる軍勢の姿だった。


 どこまでが、戦姫の描いた図面だろう。


 どこまでが、マルテに予想しえた戦況だろう。


 ちらりと振り返ってみたところでは、もともと徒歩だったルセロの隊の連中の姿も馬上にあった。もちろん見覚えのない顔も。激突前にサリアナが指してみせた、彼女の上官だったことのある男の姿は、捜そうにも分からなかったが。だが間違いなく、彼女は全てを王都に王城に引き連れて行くことを選んでいた。


 少なくともルセロは、こんな状況を考えたことはなかった。


「――サリアナ!」


 疾走する馬上で怒鳴りかければ、ほんのわずか彼女は速度を落として、何とか並んで駆けることができた。だが、後ろの存在感が追いつくほどではない。


「‥‥何ー?!」


「あんた、これ、どう収拾付けるつもりだよ?!」


 喚きかける。そうでもしなければ会話などできない。蹄の音にかき消されないよう、風の音に負けないように。気を抜くと置いて行かれそうだし、必死で叫ぶルセロに、彼女は嘲笑うでもなく楽しそうに笑いかけた。


「知らねーよ!!」


「はァ?!」


 裏返った声に、心底楽しそうにサリアナは声を上げて笑った。


「知らねーよ!!あたしは剣、剣姫、ただ戦うための武器の一振り!使い道を決めるのは使い手なんだ、武器は何も考えない!!」


 謳うように彼女は言った。それから隣を、ルセロを見、


「殺したくないんだろ?!だったら逃げるしかないじゃないか!!」


そう言って綺麗に微笑んだ。


 胸が熱くなってルセロはそこを押さえた。少しばかり速度が落ち、また彼女の背を追うことになったが構わない。


 つまりはこの状況は、ルセロが望んだということだ。誰かと切り結ぶ覚悟のないルセロだから、共に駆け抜けることを選んでくれたということだ。


 それがたとえ、戦場にあってはその上官の意に沿うようにするというだけのことだとしても。それでも胸は熱かった。

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