25.戦いになる
最初の激突は離宮から一昼夜歩いたころに起きた。
「‥‥来た」
「そうだな」
それまでとの違いは明らかだった。それまで、こちらに合流した部隊たちは、ルセロたちが目に入ると速度を緩めた。ルセロたちが、というよりはサリアナを目にして。そして当然のように携える武器を捧げて見せるのだ、彼女に。まるで自分たちの王であるかのように。
今向かってくる部隊は、それこそ蹴散らさんと迫ってくる。当然のように騎馬であり、徒歩のルセロたちなど普通であれば跳ね飛ばされて終わる。運が悪ければ何度となく馬に轢かれて普通は死ぬ。
だが、サリアナは笑んで見せたしルセロは臆さず剣を構えた。
「丁度いい。馬もらおう」
「それなら爆音はやめとくか。‥‥ところで、連中はこっちに寝返ることはないんだな?」
馬も人も等しく生き物であるから、驚けば竦むし動きも鈍くなる。人間であれば命令や規律でどうにか従わせることができたにせよ、乗る馬はそうはいかない。人より余程恐慌に陥りやすい。
こちらに騎馬がなくてあちらに揃っている状況ならば使えることもあるだろうと、破裂音を極めた火薬玉を用意してきたのだが、馬を奪おうというのであればそれは使えなかろう。
「ありえないねぇ。先頭にいるの、あれあたしが従ったこともある男で、それはつまりばばぁに都合よく使われてるってことだよね」
確か、娘があのばばぁに侍ってんだと思うよ、とサリアナは奇妙に明るい調子で言った。それからぐるりとルセロを振り返って、声の調子を落とした。
「あぁそうだ、あんた甘そうだから言っとくけど」
確かにルセロはこれまでのところ、構えた大剣を鞘から抜いていない。
「あの連中もヒガイシャだとか考えないほうがいいよ、死ぬから」
「死ぬかな」
「死ぬよ。決死の覚悟で向かってくる連中相手だ、斬り殺して止めるしかない」
正直に言えば、ルセロは死ぬとは思っていなかった。サリアナには逆立ちしても勝てないとしても、多少練度の高い兵だろうと後れを取る気はしない。それは事実だったが油断でもあった。そういう意味で言えば、サリアナには油断すらない。
「全力で殺すことを恐れんな」
彼女はそう、簡単に言ってかつての仲間に刃を向ける。




