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剣の舞  作者:
25/38

24.彼女の罪

 『剣姫』の求心力を甘く見ていたのかもしれない、と、半ば呆然とするしかなかった。


「これは‥‥二手に分かれた必要、ないんじゃないか?」


 八割がた本気で、マルテを呼び戻そうかと思った。それほど、サリアナを目にした軍人兵士の反応は鮮やかだった。


 彼女が特に何か人目を引くようなことをしたというわけではない。ただ、一部隊を率いるルセロの隣を歩いているだけだ。それだけで、サリアナに視線が集まる。そして彼らは戦いの意志をなくす。劇的だった。


「さぁね。多分、ばばぁの息がかかってないせいじゃない」


 サリアナは特別なことと感じてすらいないようで、あっさりと答えた。


「魔女は何を?」


「ばばぁの部隊は多分こうはいかないだろうよ。ばばぁの手下はばばぁを裏切れない」


 あたしと同じことだよ、淡々と言った。例えば、


「戦姫はばばぁを害せない。幼い数年をあのばばぁの傍で過ごさせられて、支配されてる。それでもこうしてあたしを通じて布石を打つくらいはできたけど、それだって謂れのない罪悪感?とか感じているらしいよ」


洗脳に近い、とサリアナは言った。


「そうやって支配した誰かを、大切に思う人間に対しては人質代わりに脅してすかして、そうやって手下を操るんだ。あのばばぁはずっとそうやってきた」


 だから、と彼女は、今またこちらに下ると表明した部隊長を見つめた。距離があるにも関わらず部隊長はその視線に気付いたらしい、なんとなくルセロはむっとした。剣姫、と宝のように彼女を呼ぶ、それで溜飲を下げた。彼女の名前は自分しか知らない。


「それを見て知っていて、特に人質も取られてない連中の、ばばぁへの怒りとか不満はそりゃもぅすごいもんだよ」


「‥‥よく今まで反発がなかったな」


「そりゃそうだ。あのばばぁは手下以外は敵だから内情なんて見せない」


 運よくなのか悪くなのか、知ってしまった人間は、だから新たに人質を取られるか手下に殺されるか、そのどちらかしかなかった。人質を取られれば従うしかない、そういう人間を選ぶことだけは天才的なんだ、そして人質が取れなければ躊躇なんて言葉はあのばばぁにはないのだと、痛ましそうに彼女は言った。


「あの部隊長の元彼女も、あたしがばばぁの命令で殺した」


「え」


「笑うだろう?なのにあいつらはあたしを剣姫と慕うんだ。笑うしかないだろう?」


 唇を歪めるサリアナは己の手で己の傷を抉り出すようで、何を言ったらいいのか分からないルセロは黙るしかなくて、そんな自分を殴りたかった。

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