23.月夜の街道
満月までは数日というところだった。離宮突入の日よりも膨らんだ月をやや右寄りに見ながら、ルセロ達は街道を歩く。
「目立つに決まってんじゃん」
ルセロの隣を歩くのはサリアナ、と、何故か決まったようだった。彼女は皮肉気に笑いを含んで言う、それにルセロは頷いた。
「俺らが目立たないわけにはいかないだろ」
何せ離宮に火を放って王宮に楯突いた軍勢だ、あちら側としても動向を見張っているだろう。下手にこそこそ隠れたりして、マルテ率いる別働隊に目を向けられても困るのだし、ここは堂々と行こう、と特に悩んだりもせずルセロは思っていた。
「マルテも分かってるさ」
「じゃあの指示は何なのさ?」
今晩の内はなるべく目立たない、というのは。街道を行くのに目立たないも何もないはずだが、であれば別の道を行くとかそういうことではなかったのか?
「挑発行為はしない、ってことだ。それに鎮圧の軍隊も、多分今日のところは手を出してこないと読んでる」
最終目標が王宮であるということくらいは分かっているだろう。だがまっすぐ向かうのか、それとも別の経路を歩むのか、それによって出方を考える、恐らくは今日はそのために使われるだろう。
「それにこっちに『剣姫』がついたってのも大きいだろ」
戦姫がそれを織り込んでいるにせよ、兵たちにとって剣姫の存在は小さくない。純粋に戦力として考えれば、一個小隊が敵についたと言っていいぐらいの衝撃はあるはずだ。こちらについたことがどこまで広まっているのか、広めるつもりなのか隠す意思を見せるのか、それは知ったことではないが、いずれにせよ向こう側に戦力としての剣姫がないのは確かなのだから。
「‥‥流石にあたしも、国内の鎮圧はしたことないよ」
「最初っからは流石に出さなかっただろうさ。けど保持しているかしてないかっていうのはかなり違うと思うぞ」
うまく言葉にはできないけどな。ルセロは言った。
「だっていざとなれば、あんた一人王宮に残して全兵を投入、とかできたわけだ。その手を封じるって意味でも、あんたの存在はでっかいよ」
サリアナは痒いような顔をした。
「‥‥あっちには本物がいるんだけど」
「それは戦力か?」
「‥‥」
それは黙るしかないだろう。戦場に出ていた剣姫は影武者の彼女だったのだ、と言ったのは彼女だ。




