22.次の行軍に向けて
夕暮れを待って出陣しよう、とマルテは言った。
「‥‥二手に分かれる?」
「あぁ。それが一番いいと思う」
一日が経ち、一睡もしていないだろうマルテの顔には疲労が貼りついていた。ルセロだってほかの誰もだって、満足に休めたわけではないけれど。離宮の炎は大方消えて、あたりには煙のにおいがしていた。
164人はそれぞれ思い思いに過ごしている。正直なところ、ルセロ達が率いてきた数十名と、離宮の護りだった数十名と、近隣から合流した数十名との間には、それぞれ緊張感が漂っている。特に民間人と軍人との間の隔絶が大きい。軍人とは言っても単に現在兵役中というだけの民間人も多く混じっているはずだが。職業軍人はそれほど多くはないはずだ。
「どんな風に?」
確かに今の状態で、王都まで分裂せずに動くのは無理だろうなと思えたから、素直にルセロは尋ねた。
「ルセロは元々の策のまま、街道を南下してくれ。別働隊は西から大回りして、できればもう少し大勢を巻き込みたい」
「それなら別働隊は離宮からだな、マルテが率いるんだろ?」
大回りしてしかも国民を扇動するのであれば、街道をただ南下するよりも時間がかかる。離宮には馬がいた、それを使わない手はない。
最も、街道を南下するルセロ達、現役の兵を含まない彼らには鎮圧軍が差し向けられるだろうから、どれだけ早く王都に向かえるのかは疑問だが。ちなみに普通に歩くと3~4日の道のりである。
「『剣姫』は‥‥」
「あたしはルセロと一緒に行くよ。そのほうが目立つし」
「‥‥こちらに同行してくださってもありがたかったんですが、まぁ、では、そのように」
マルテはサリアナに対しては敬語を崩さない。
元々ルセロ達が率いていた者たちには、彼女は影武者であると明言していたが、それ以外は知らない。マルテが彼女を立てればそれだけ、『剣姫』が解放軍に手を貸しているということが信憑性を得る。最初は警戒心からだったろうにな、とルセロは知っているが、敢えて口にする必要はないから言わない。
「今晩の内はなるべく目立たず、距離を稼ぐ。明日から派手にいく。でどうだ?」
「そんなところだな」
ルセロが頷けば、マルテはそれを全員に通達しに行った。と言っても多くは今の会話に耳を傾けていたし、ほとんど確認程度に過ぎない。
「よし。そうと決まれば夜まで休むか!」
ルセロは心持大きな声で誰にともなく宣言した。細かい指示はマルテから、そういうことになっている。




