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剣の舞  作者:
22/38

21.知りたいと願うこと

「それもそうだ」


「だろ。

 ‥‥そういえば、あんた、戦姫と、直に話したことがあるんだな」


 調子に乗ったのかもしれない、と思ったのは、彼女の表情が消えたときだった。だがそれは一瞬のことで、次には彼女はへらりと頷いた。


「まーそりゃ‥‥戦術を練るのは戦姫で、あたしはその策を授けられる身だしね」


「剣姫の影武者なのに?」


「影武者だからこそ、だろ」


 ルセロは想像してみた。だがよく分からなくなった。


「‥‥あんたって、いつもどこで入れ替わってんだ?」


 何となく、王宮を出るところくらいかと思っていた。だが、戦姫から直に策を授けられるというのであれば、それは王宮の中、姫君の前にまでも影武者の彼女が入り込んでいるということだ。それはどうなのだろう。主に警備とかの問題として。


 だが彼女が嫌そうな顔をして、


「鎧を着こんだらあたしだろーよ。っていうか、何でそんなこと説明しなきゃならんのだ」


そう言い捨てて立ち去ろうとしたから、それ以上その問題について考えるのは止めることにした。


 その代りに、ルセロはその背中に問いかけを投げた。


「ひとつだけ教えてくれないか」


「‥‥何」


 背中が警戒しているのが分かる。だから、なるべく軽く聞こえるようにルセロはその問いを口にした。


「あんたの名前ってなんていうの」


 そう。それをずっと訊きたかった。


「‥‥は?」


「名前。あんたの。ちなみに俺はルセロってんだけど」


 剣姫、と彼女はこれまで呼ばれてきたし、これからもやはりそう呼ばれていく。そうでない彼女を知りたかった。その理由なんて知らない――知ったら重荷になる。呆気にとられた彼女が振り返ってルセロの瞳を見ている。その奥に何があるのか見透かすように、けれど、見せない。ただ呑気なだけのふりをして、答えを待った。


 しばらくぽかんとしていたけれど、やがて彼女の表情が緩んで、


「サリアナ」


その音だけ落として去って行った。その背中を、ひどく満足にルセロは見送った。

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