20.野っ原で密談②
マルテの問いに、彼女は軽く頷いた。
「魔女には、戦姫から、これは策だと説明するって言ってた。あんたらをイチモウダジンにするために必要なことだってさ」
それに、と彼女は唇を歪めた。それは痛々しい歪んだ笑みで、何故かルセロの心は痛んだ。
「あの魔女と刺し違えるんだったら、あたしも、姉たちも、本望だよ」
「何にせよ、俺らのやることは変わらない」
情報が共有できたところで、ルセロは口を挟んだ。
「王都へ行く。魔女を引きずり落とす。戦姫には切り捨てられない程度に戦いになるだろうな」
「確かに。魔女に違和感を覚えさせない程度に立ち回らないと、未来はないというわけだ」
「そうだろーね。戦姫、使い物にならないと思ったら結構容赦しないから」
あはは、と彼女は笑ったが、それは洒落になっていない。
「‥‥まぁ、そうですね。『剣姫』。
精々見限られないよう、俺は策でも考えるとします」
それはこれより先、彼女を影武者と見なさないという宣言だった。そのように戦姫が考えているのであれば、それに乗るという宣言だった。彼女もそれに応えて頷いた。
「そーだね。あたしも戦力と考えてくれていいよ」
「‥‥頼りにしていますよ、『剣姫』」
いつになく深刻な顔で立ち去ったマルテは、きっとこれから寝ずに考えるのだろうなと、他人事のようにルセロは思った。共に取り残される形になった彼女を見やる。と、不意に振り返った彼女と目が合った。その真っ直ぐな瞳。
「よく信じたね?」
静かに問われ、そういえば疑いもしなかったなと初めて省みた。
「あーまぁ‥‥やることは何にも、変わらないし」
王都に行く。行って魔女を追い落とす。そこに誰の思惑が絡んでも、戦姫が何を企んでマルテが何を目論んでも、あるいは魔女がどう足掻いても、ルセロのすることは変わらない。王都に行って魔女を追い落とす。164人の命を背負ってそれを成し遂げる。それだけだ。
「信じたというか、だから、どっちでもよかっただけだ」
思ったことを言えば、彼女はちょっと微妙な顔をした。
「‥‥そんなもん?」
「あんただって、戦いのとき、いちいち信じて動くわけじゃないだろ?」
多分、自分と彼女は似ている。
信じるとか信じないとか、そんなことは正直どうでもよくて、ただ、必要とされることをするのだ、という在り方が。多分似ている。




