17.その末路
「‥‥彼女たちをどうするつもりだ?」
決めるのは、行動を起こしたリーダーであるルセロであるべきかもしれない。だが、敢えて彼女に問いかけていた。
「火でもかけてやりたい」
「‥‥?!」
「‥‥それは‥‥」
彼女の手が確かなのか、先ほどから出ない声を振り絞る侍女の猿轡も体を戒める縄も緩む気配も見せない。それを為した彼女の声は静かで、深かった。
何を言ったらいいのか分からずルセロは彼女を見つめていた。その内に、彼女の冥い目が不意にルセロに焦点を合わせ、そして緩んで肩をすくめた。
「まぁ実際問題、捨て置けばいいんじゃない」
そう言って彼女が斬り捨てたものは何だろう。感情だとか感傷だとか、何か重要なものを斬り捨てたような気がしたが、彼女の立ち姿に何らの変化もなかった。それがどこかもどかしいような気がした。
「‥‥だけど、侍女は魔女の手下なんだろ?」
姫君を弔いたいんじゃないのか、と、本当は言いたかった。けれど自分がそれを言うのは相応しくないような気がしてルセロは別のことを言った。それはそれで気になっていたことを。
「まぁね」
「それなら捨て置けない‥‥と思うけど」
「‥‥?!」
彼女はにやりと笑った。
「ま、思うようにしたら?」
「‥‥!」
マルテに相談するべきだよな、とルセロは踵を返した。だからルセロは知らない、彼が立ち去った部屋の中で、彼女と侍女の間にどのような言葉があり何があったのか。
炎に沈む離宮を見ていた。
呆れたことに、護衛のほとんどにルセロと彼女が遭遇していたらしく、俺らの出番はほとんどなかったと仲間たちは苦笑していた。ルセロは大剣を一度も抜かなかったから、無力化されて転がっていただけの彼らは仲間たちの手で運び出されていて、今は、同じように呆然として炎を見ていた。
そこに、姫君の骸も侍女の姿もないことが、答えなのだろう。
そして、従わされていただけの兵士たちを吸収して膨れ上がったルセロ達の軍勢は、王宮を目指す。