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剣の舞  作者:
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13.説法めいた

 不満を隠そうともしない頬をつつく。柔らかい。眼光は嫌に鋭いが。


「ついてこないんじゃなくてついて行けないんだ。多分な。で、お前も待つことができてない。それだけだろ」


 つついていた手を不快そうに握って遠ざけられる。ぼんやりと残念に思ったが、次に握られたまま離されない手にどきりとした。


「‥‥あたしが悪いっての?」


「多分な」


 勿論ついて行けないほうの部下たちも研鑽が足りないと言えるかもしれないが、彼女の実力の一端を知ってしまった今となっては決して責めるばかりではいられない。どうしてそうなったのか、彼女はあまりに別格だった。


「そんなの弱いほうが悪いんじゃん‥‥」


 それは強者の理論だ。そして強者の理論では群れは作られない。


 ルセロは思わず息を吐いた。


 立ち上がり、握られていた手をほどいて、それで彼女の頭をぽん、と叩く。空いているほうの左手を大きく振る。――突入の合図だ。


「悪いとか言わずに、守ってやれよ」


 もし仮に、彼女が指導者たれと思うのならば。彼女は己以外の全てを守りながら導きながら、共に戦うことを覚えなければいつまでもひとりの戦士だ。


「あんたは」


 合図を送ってそれぞれがそれぞれの持ち場から突入の為に動き始めたのを見やりながら、さて俺も行くかと大剣を握ったルセロの背中に、彼女からの声がかかった。


「あんたは守ってるの」


 確かに彼女くらいの使い手であれば、ルセロ達の戦力を見て取ることは簡単だろう。そして分かったのだろう、彼女には及ばないが、ルセロは一番若いながら一番の戦力であることが。


「守るっていうか‥‥俺は、あいつらの命は背負うと決めたからな」


「‥‥背負う」


 まただ。どうしてか、ルセロには彼女が、どうにも幼い子供に見えるときがある。物理的には逆立ちしたって勝てやしないのに、それは泉のほとりで思い知った、だが途方に暮れた迷子のように見えるときがある。


「俺の我儘につきあわせてんだからそのくらい当たり前だろ」


 何故こんな説教臭くなっているのか分からないが。結局ルセロは振り返らず離宮の庭に足を踏み入れたから、彼女がどんな目をしてその背中を見ていたのか知らない。


「‥‥剣じゃ駄目なのかな」


 呟きも耳に入らない。

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