第四話 一生分の片想い
三年前の事故で私は自分の存在価値であった『言葉』を失った。
でもきっとそれは正しいことだったのかも知れない。
だって本当は言葉の意味なんて理解していなかった。
私はずっと双子の兄である千が好きだった。
昔の千はなぜかずっと言葉を話さなくて、ずっと千の心の声を聞きたいと思っていた。
想いかなって、千の声が私の心に響いたのはいつだったか。あの時、私は初めて言葉の意味を理解した。
本人は気付いていないようだったけどいままで、本当に言葉を理解していたのは私じゃない。
千の方だ。
私は千の心の声を口に出していただけ。
あの時、千の心の声を聞いた日から、きっと私の運命は決まっていたのだろう。あれは千に言葉を返す為のカウントダウン。
お前たちは双子の兄妹だと。
恋をしては駄目なのだと。
私に自覚させる為の。
…私には言葉を使う資格なんて、本当はなかったのだ。
「花…。おはよう。」
千の言葉に花は微笑むことしか出来なかった。
毎朝、千よりほんの少しだけ早く起きて、千が起きた瞬間に笑顔で「おはよう」という瞬間が大好きだった。でもそんな些細なことさえ許されない。
最近は千は言葉をよく使う。
私が使えなくなった言葉を…。
千が好きだ。
この世界にはいろんな好きがあるけど、私のは正真正銘の本気の恋だ。
でも私にはこの想いを伝える手段がない。
神はなんて残酷なのだろう。
千がこんなにも愛おしいのに、一生伝わらない。伝えることすら許されない、
これは私の一生分の片想い。




