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4-7 私たちは勝てるだろうか



 翌朝、聖猫神殿の礼拝堂に俺たちが集合すると、バーナム大司教が現れ、洗礼の儀式が始まった。

 アーリーンの指示に従い、俺たちは1人ずつ大司教の前に進み出て、ひざまずく。

 すると上空からキラキラと輝く光の粉が舞い降りて、虹色のスパンコールのように衣服に張り付くのだ。

 いわば防御力を上げるための特殊なコーティングのようなものだ。

 これで物理攻撃や魔法攻撃に対する抵抗力が飛躍的に向上するらしい。


「大司教様から皆さんに贈り物がございます」


 全員の洗礼が終わると、アーリーンは各自に武器を配布した。

 アイリアにはブロードソード、マイラにはバトルアックス、チーカには手裏剣、ナルにはリボンウィップ、そしてカリサにはクロスボウが与えられた。

 いずれも洗礼によって性能が向上している特注品だ。

 攻撃と防御の両面において強化されたことで、ディドロを倒すための準備は整ったのだ。


「ディドロは、王冠山に向かったとの情報を得ています」


 アーリーンはバーナム大司教の消え入るような小声を聞き分け、俺たちに伝えた。


「王冠山には、この世界を邪悪なものから守るための、大切な結晶体があるのです。

 どうかディドロの魔手から結晶体を守っていただけないでしょうか」


 俺たちにこの頼みを断る理由などなかった。

 そもそもそのために旅立ったのだから。


 神殿を出ると、出口まで長く続く参道の両脇に、信者の人々が並んでいた。

 俺たちを送り出すために集まってくれたようだ。

 大司教から洗礼を受け、特殊な武器を持った俺たちの姿は、彼らには救世主に見えているのかもしれない。


「デオロン殿。

 私たちは勝てるだろうか。

 あの凶悪なディドロに」

 

 アイリアは集まった人々に手を振りながら俺に問いかけた。


「わからんな。

 だが、定石を教えておこう。

 単体の強力な敵に勝つためには攻撃のリズムが重要じゃ」


「リズム?」


 ナルとチーカも俺たちの話に聞き耳を立てている。

 決戦を前にして、みな不安を感じているのだろう。


「うむ。

 敵はダメージを受けたあと、数秒間は次の攻撃行動がとれなくなる。

 この硬直時間が終わる直前に他の誰かが攻撃を加えることができれば、敵の硬直時間は延長されるというわけじゃ」


「つまりそれを繰り返すことができれば、敵に反撃の機会を与えずに体力を削り続けることができる……と」


「そうじゃ。

 これが連携攻撃だ。

 連携を実現するにはどうすればいいと思う?」


 アイリアはしばらく考えたあと、仲間たちの顔を見渡してから答えた。


「各自がばらばらに自分の判断で行動していたら連携はできない。

 事前に相談が必要だし、敵だけでなく仲間の状態も見ながら判断しなければならないな」


「そのとおり。

 付け加えるなら、魔法発動までの時間も考慮しておく必要があるじゃろう」


「なるほど!」


 アイリアは何かを思いついたようで、歩調を遅らせてマイラの横に並んだ。


「わたしとマイラは前衛だが、同時に攻撃してはダメだ。

 まずは私が攻撃するから、マイラは敵が硬直を解く直前を狙って攻撃してもらえないだろうか」


「……はい。

 やってみます」


 マイラがあまりにも素直な返事をしたので俺は驚いた。

 何度もいっしょに前衛を務めるうちに、アイリアへの信頼感が生まれたのかもしれない。


「チーカはパーティの中で最も素早いよな?

 私とマイラの状態をよく見ながら待機し、連携がつながらなそうなときに、クナイか手裏剣で攻撃してほしい。

 もちろん物理攻撃が効かない場合は忍術を頼む」


「先輩、了解っす!」


 なるほど、いい作戦だ。

 この指示を出しておかなければ、チーカは真っ先に攻撃を仕掛けてしまうかもしれない。


「ナルの舞踏魔法の発動には15秒かかる。

 この15秒を1セットとして、攻撃を回していくことにしよう。

 15秒間はなんとしてでも連携を続け、舞踏魔法につなげるんだ。

 そして、カリサ。

 君はこのパーティの頭脳だ。

 他の仲間はリズムよく攻撃を続けることに集中するが、君だけは戦況を見ながら、適切な薬瓶を投げ込んでくれ。

 どんな状況で何が適切なのかは、わたしにはわからない。

 君に一任するよ」


「そうね。

 わかったわ」


 カリサはアイリアの提案をそのまま受け入れた。

 彼女は空気を読んで相手に合わせるような性格ではない。

 これは命令に従ったということではなく、考えかたが完全に一致したということなのだ。


「デオロン、こんな感じで行こうと思うが、どうかな?」


 アイリアは俺に確認を求めてきたが、もはや付け足すことなどない。

 実際の戦闘では何が起きるかわからない。

 とくに生死をかけた激戦では、他人の指示に従って行動するだけでは生き残れない。

 その場の状況を自分で認識しながら、自分で判断しなければならないのだ。

 そしてこのチームは、まさにその理想形に向かって動き始めていた。


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