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Scene 6 終幕 ― 何も変わらない
王は変わった。
正確に言えば、「王」という肩書を持つ者がいなくなり、代わりにいくつもの肩書が静かに並び直された。
ある者は廃位され、
ある者は表舞台から消え、
ある者は名を記録から削られた。
だが、それは断絶ではなかった。
制度は続いた。
政務局の扉は毎朝開き、
書類は同じ形式で回され、
印章は変わらぬ位置に押される。
人々は忘れた。
怒りも、期待も、物語も、
新しい噂の前では等しく色褪せた。
昨日まで語られていた事件は、
今日には「昔、そんなこともあった」という程度の話題になる。
名前は混ざり、意味は薄まり、
やがて誰の物語だったのかすら曖昧になる。
それでも、記録だけは残る。
削られ、整えられ、角を落とされた言葉で。
そこには感情はなく、
正義も悪もなく、
ただ「そう処理された」という事実だけが並ぶ。
王国は今日も平和だった。
――少なくとも、そう記録された。




