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悪者――『誰も清くない王国で』  作者: 南蛇井


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Scene 2 署名 ― 悪意のない決定

政務局の執務室は、朝の光に満ちていた。

緊急会議にありがちな緊張はなく、秘密裏の集まりに特有の息苦しさもない。

ただ、予定表どおりに人が集められ、椅子が引かれ、書類が並べられただけだった。


集まったのは数名の高官。

顔ぶれはいつも通りで、誰一人として驚いた様子を見せない。


議題は簡素だった。

「既存判断の最終確認」。


誰かが問題提起をすることもなく、

誰かが反論することもない。

それぞれが、すでに読んだ内容を、もう一度目でなぞすだけだった。


書類の中央には、一文が記されている。


――王子レオンハルト、廃位。


理由は短い。

「統治上の信頼調整」。


不祥事という言葉は使われていない。

罪も、過失も、感情も書かれていない。

ただ、「今後の安定」を理由に、配置が変更されるだけだ。


ペンが回される。

乾いた音で署名が重なっていく。


誰も怒らない。

誰も哀れまない。

誰も勝利を感じない。


それは裁きではなかった。

議論でも、断罪でもない。


――確認作業だった。


感情が介在しない決定は、覆されない。

誰かの怒りを買わず、誰かの同情を引かず、

だからこそ、永続する。


この場で、

王子は「悪」にならなかった。

だが同時に、

王子である理由も、静かに失われた。


裁きは感情で行われなかった。

だからこそ、それは完全だった。

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