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悪者――『誰も清くない王国で』  作者: 南蛇井


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Scene 4 大臣バルタザール ― 調整という名の放置

政務局の一室は、いつもと変わらず整っていた。

書類は積み上げられ、窓から差し込む光は柔らかく、慌ただしさはない。


各部署の代表が順に報告を行う。

教会の意向、王城の空気、市井の反応。

どれも大きな対立はなく、ただ微妙に方向の違う「善意」ばかりだった。


バルタザールは、それらを黙って聞く。

眉をひそめることも、肯くこともせず、ただ視線を向けるだけ。


やがて誰かが、慎重に口を開く。

「……リリア様のご意見ですが、今後どの程度――」


大臣は、そこで初めて微笑んだ。


「自然な流れでしょう」


その一言で、場の緊張が解ける。

反対意見も、賛成意見も、その言葉の中に溶けていく。


別の者が尋ねる。

「クラウディア様については、何か――」


「皆さんの判断に任せます」


それ以上は何も言わない。

否定もしない。

支持もしない。


結果として起きていることは明白だった。


リリアの影響力は、広がりすぎない。

意見は聞かれるが、決定権は渡らない。

彼女は象徴の位置に留め置かれる。


クラウディアは、話題にすらならない。

議題に上げられないということは、問題視もされないということだ。


会議は滞りなく終わる。

誰も「命令された」と感じていない。

誰も「操られた」とは思わない。


だが、方向は揃っていた。


――何も決めないことで、

 すべてを決めている。


それが、この男のやり方だった。

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