Scene 7 締め ― 一番目立つ悪が落ちる理由
その出来事は、王都にとっては「一件落着」として語られた。
王子レオンハルトの軽率さ。
若さゆえの過ち。
反省と寄進、そして一時の自粛。
それ以上でも、それ以下でもない、と。
市井では人々がうなずき合い、社交界では安堵の息が交わされた。
誰もが口にしない共通認識があった――これで十分だ、と。
だが、語り部は知っている。
人は、
一番危険な悪からは裁かない。
一番分かりやすく、
一番説明しやすく、
一番反論しにくく、
一番失っても困らない悪を、
最初に差し出す。
それは怒りを鎮めるためではない。
正義のためでもない。
次に裁くための、空気を整えるためだ。
「責任を取らせた」という実績。
「誰も守られていないわけではない」という証拠。
「だから次は、もっと慎重に」という前置き。
そうして世界は、自分が正しい側に立っていると信じ続ける。
この夜、
王子は落ちたと言われた。
だが実際には、
彼はただ――差し出されただけだった。
失脚は、確かに始まった。
だが、本当に裁かれる者は、
まだ名も呼ばれていない。
そしてそれを、
誰もが無意識のうちに理解していた。
理解していながら、
誰も口にはしなかった。
それを、人は
**「区切り」**と呼ぶ。




