Scene 2 王城 ― 事実確認という名の儀式
王城の奥、普段は使われない小さな会議室。
窓は高く、外の喧騒は届かない。ここでは声を荒げる必要がないからだ。
長机を囲む者たちは皆、落ち着いた顔をしていた。
怒りも、失望も、表に出さない。
それは感情の抑制というより――もはや感情を必要としていない空気だった。
議題は一つ。
王子レオンハルトの「私的な振る舞い」について。
問いは簡潔だった。
責める調子ではなく、確認するための言葉。
「事実関係について、殿下のお考えを伺いたい」
王子は一瞬、言葉を探す。
だが、それは逃げ道を探す沈黙ではない。
どこまでを差し出せば、この場が円滑に終わるかを測る沈黙だった。
「……軽率だったかもしれない」
否定はしない。
だが、すべてを認める言葉も選ばない。
その一文で十分だった。
誰も追及しない。
詳細を求めない。
名前も、時期も、回数も問われない。
なぜなら、この場にいる全員が理解していたからだ。
――事実の有無は、もう問題ではない。
必要なのは、
「殿下自身が、事態を理解している」という形。
そして、
「国として、どう整理するか」という方向性。
誰かが静かに頷き、別の誰かが書類に印を付ける。
それだけで、この会は成立した。
裁く場ではない。
許す場でもない。
これは、
皆が同じ結論に納得するための儀式だった。
王子はまだ王子であり、
王位継承権も失わない。
ただ一つ、彼の「無垢な英雄像」だけが、静かに修正される。
誰も声に出さないまま、
その修正案は全員の胸に行き渡っていた。




