Scene 6 結論 ― 裁きは始まっていない、だが終わっている
夜明けの光が、記録室の窓を薄く染め始めていた。
補佐官ヘルマンは、机の上に広げられていた紙を一枚ずつ重ねていく。
順序に迷いはない。
そこに書かれている内容は、すでに整理され、確定している。
紙束はやがて一つになり、
彼は静かに封筒を取り出した。
封をするための赤い蝋。
それを垂らす手に、感情の揺れはない。
これは報告書だ。
だが、相談書ではない。
「これは提案ではない」
ヘルマンは、誰にともなくそう思う。
「確認作業だ」
上司である大臣に見せる。
だが、意見を仰ぐためではない。
ただ、“すでにそうなっていること”を確認してもらうためだ。
誰が危険で、
誰が守られ、
誰が、次に切られるか。
それらはすべて、
議論の前に、決まっている。
「誰が落ちるかは、もう決まっている」
王城の外では、王都が完全に目を覚まし始めていた。
市民は今日も平穏な一日を信じ、
鐘の音を聞き、
昨日の騒動を「終わったこと」として受け入れていく。
だが、記録の中では、
それはもう“処理済み”だった。
ヘルマンは封を押し、書類を脇に置く。
悪は、裁かれる前に記録される。
そして記録された瞬間、
それはもう――過去になる。
これで**第6話「記録される悪」**は、
・裁きが始まる前に終わっている
・善悪ではなく、整理と管理の物語
として、非常に冷たく、完成度の高い章になっています。




