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悪者――『誰も清くない王国で』  作者: 南蛇井


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Scene 4 王子レオンハルト ― 善意という免罪符付きの名前

王城・政務局の奥、薄暗い書庫。


 補佐官ヘルマンは、紙の束を前に静かにため息をつく。


 一枚をめくると、そこには――王子レオンハルトの名があった。


 記録は簡潔だ。


 《行動:善意》

 《評価:民意良好》

 《問題点:責任構造の曖昧さ》

 《処理方針:周辺調整で対応》


 善意。

 それだけで、王子は“特別”になっていた。


 ヘルマンの目は淡々としている。


 「殿下は裁かれない」


 記録に赤字や警告はない。

 行動は全て“正しいもの”として評価されている。


 しかし、それが全てを免罪するわけではない。


 「裁かれるとすれば、もっと後だ」

 「今ではない」


 善意は、盾になる。

 だが、管理は不可欠だ。


 ――善意があるから、逆に手綱は必要だ。


 王子の行動は制御できない。

 彼は感情で動き、

 結果だけを見て善悪を判断する。


 だから、善意のままでは、危険だ。


 ヘルマンはペンを置く。


 「今は、ただ管理すればよい」


 リストに記された他者と違い、

 王子は“悪にならないよう調整される存在”である。


 善意も、無力ではない。

 しかし、善意は、免罪符であり、

 同時に、監視対象でもある。

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