Scene 5 明るく、和やかな結末
王都は、穏やかだった。
市場には笑顔が戻り、
人々はいつものように品物を選び、
他愛ない噂話を交わしている。
あの騒動があったことさえ、
まるで遠い出来事のようだ。
大聖堂の鐘が鳴る。
重く、しかし優しい音。
それは祈りの時間を告げ、
同時に、日常が続いていることを知らせる。
――よかった。
何も起きなかった。
社交界も、同じだった。
貴族たちは安堵したように微笑み、
過去を蒸し返すことを避け、
新しい話題へと移っていく。
「大事にならなくて本当によかった」
「殿下のご判断のおかげだ」
誰もが、そう言った。
誰もが、善人だった。
誰もが、
正しいことをしたと思っていた。
教会は祈りを捧げ、
王子は守り、
貴族たちは流れに従い、
大臣は穏やかに頷いた。
だからこそ、
誰も責任を持たなかった。
傷ついたものが何か。
失われたものが何か。
それを数える者は、
もういない。
鐘の音は、
すべてを祝福するように響き続ける。
それを、人は「平和」と呼んだ。
とても居心地のいい、
仮初めの。




