Scene 3 クラウディア ― 追い詰められる沈黙
クラウディアの邸宅は、朝の光に包まれていた。
整えられた庭、静まり返った廊下。そこには、混乱の気配など微塵もない。
だからこそ、騎士たちの足音は不釣り合いだった。
「ご協力をお願いしたい」
先頭に立つ騎士が、丁寧な口調で告げる。
腰の剣には手をかけていない。
だが、その距離は近すぎた。
「殿下のお考えです」
「誤解を解くために、お話を」
拘束ではない。
形式上は、あくまで要請。
使用人たちは廊下の端で息を殺し、主の顔色を窺う。
ここで声を荒らげれば、それ自体が“証拠”になることを、皆が知っていた。
クラウディアは立っていた。
背筋を伸ばし、表情を変えず、騎士たちを見返す。
言おうと思えば、言えた。
証人はいる。
あの夜の会話も、出来事も、事実として説明できる。
論理も整っている。
だが、彼女は口を開かない。
騎士の視線が一瞬、揺れる。
沈黙は、理解ではなく、抵抗として受け取られ始めていた。
「……否定は、されないのですね」
誰かが小さく呟く。
それは確認ではなく、結論だった。
クラウディアは視線を逸らさない。
何も語らず、ただそこに立っている。
言葉が、すでに道具になっていることを、彼女だけが理解していた。
ここで弁明すれば、
それは“言い逃れ”として切り取られる。
沈黙だけが、まだ自分のものだった。
「では……当面の間、行動を控えていただきます」
騎士の声は穏やかだ。
だが、その穏やかさが、選択肢を奪う。
使用人の一人が、思わず口元を押さえる。
誰も泣いていない。
誰も叫ばない。
それでも、この瞬間、
何かが確定したことだけは、全員が感じ取っていた。
クラウディアは、何も答えない。
その沈黙は、
やがて――罪の形を与えられていく。




