序章②
(やれ、やれ・・・相変わらずリフィール王家は、『人類史上主義』であり『王国1番主義』してるわなぁ〜)
白鎧の大男=ガラフは王の祝辞を聞きながら、そう感じていた。
たしかにこの人間領では、リフィール聖国は発言力、軍事力は高い。
歴代最強の勇者・・・バルトリスの出身国であり、世界に平和をもたらした国とされている。
バルトリスの大結界があるからこそ、魔王やその側近の様な強大な魔力を持つ者は人間領には入って来れない。
その為、聖国なのに、他国や自分達の国以外の人間を見下す傾向がある・・・・
特に魔物を排除すべきモノとか、亜人は奴隷階級だと考えてる節がある。
(やっぱ、来るべきではなかったか・・・)
もしくはあの大臣の言う通り、ランクスやアプトに功を譲るべきだったかもしれない。
「ガラフ・・・もう限界!」
隣にいる黒肌の女性の《カリン》が震えている・・・おそらくは怒の限界なのだろう。
カリンはこの国の中枢である、王都に来るのは初めてなので、色々とストレスになるのだろう。
ここに来るまでにも、散々と貴族どもに嫌味を言われてきたのだ・・・
「アイリスの為にもここは堪えろ!・・・なに、すぐに暴れられるから!」
そのガラフの言葉に、カリンは少し落ち着きを取り戻した。
「暴れられるとは、どういうつもりだ?・・・まさかお前ら・・・」
後ろで聞く耳を立てていたのか、ランクスがガラフに尋ねてきた。
「俺達が王に危害を加えると?それも《面白そう》だけど・・・違いますよ」
ここで《それ》をするのはガラフ達3人+αなら、ここを制圧するのも可能だが、そこまで王国に敵対する気はない。
「・・・ランクスさん、大事な《誰かさん》を忘れてませんか?」
ガラフの頭に指を立てた姿を見て、ランクスもある人物の事を思い出す。
「まさか・・・ヤツがココに来ると言うのか?まずは自国の修復が大事じゃないのか?」
そのランクスの言葉に、苦笑いを浮かべながらガラフは首を横に振った。
「あの戦闘狂が、自国の修復なんてやると思いますか?」
そのガラフの言葉に、ランクスも理解したかの様に「確かに」と頷いた。
もしヤツを出し抜かなければ、魔王と戦う前に自分らは撤退するしか無かったからだ。
「この祝典の間には、到着して来そうですよ?・・・たぶん、あの勢いでは・・・」
おそらく来るであろう方向に顔を向けながら、ガラフはそう言った。
「・・・そんな事が分かるのか?それは『魔力探知』か何かか?」
ランクスは焦った様に、部下を呼び寄せた。
(やれ、やれ・・・そんなんだから、狩人協会から、『無能者の集まり』だなんて悪口を言われるんだよ!)
聖騎士団は、攻撃・防御力は高いが・・・こういった探知や補助的作業を他人任せにしてしまうのだ。
「今すぐに国境に待機している兵に連絡!・・・式典中は近づかせるな!」
そう伝え、外に行かせた。
(式典中に来てもらった方が色々と都合が良いんだけどなぁ〜)
そうすればここの連中も、《今の現状》《外の脅威》を身に沁みて分かると思うが・・・




