序章①
「勇者アイリスよ!
よくぞ、魔王ガラドスを打ち破り、我が国の名誉・・・いや、人類の危機を救っ・・・」
だが、リフィール王の祝語は、何故かそこで止まってしまった。
その様子に、周りに居る貴族や大臣・・・来客がザワザワと話し声が聞こえ出す。
「何だ?アイリスの裏に居る2人は?」
1人は全身鎧の大男であった。
聖騎士団と同じ白い鎧だが、形が微妙に違うので、自前の鎧であろう・・・一応は王の前に立つので、リフィール紋章の入ったマントを身に付けている。
もう1人は仮面を被った女性なのか?でも浅黒い肌の色から言って《亜人》のようだ。
「どう見ても、あの2人はリフィールの者じゃないよな?・・・それと、出立の時とメンバーが入れ替わってないか?」
たしかアイリスのパーティーは聖騎士から来た魔法剣士、聖教会の大聖女、宮殿魔法使いのエース、だったはずだが・・・
「亜人共が、こんな国を挙げての祝典に出て良いのかよ?」
そんな声がアイリスの耳にも届く。
「・・・勇者アイリスよ!ワシが付けてやった《最高》のパーティーメンバーはどうしたのじゃ?」
リフィール王は、アイリスに問いながら・・・周りにいる大臣達に確認をとる。
「申し訳ございません!・・・アイリスはその者達と仲違いを致しまして・・・」
王の脇に控えていた側近がそう答え・・・代わりに聖騎士団長ランクスと宮殿最高魔道士バラムの弟子であるアプトを伴って祝典に出席せよ!と事前に言い渡したのだがアイリスが従わなかった様だ。
「2人は何処に居る・・・さっさと並ばぬか!」
その伝えたはずの側近はそう叫んだが・・・
「王様、お待ち下さい。この者達こそ、魔王ガトラスを打ち破った立役者であり、功労者ですぞ!・・・それを貶しては他国に批判をあびるのでは?」
アイリスの後方に伏して祝辞を聞いていた聖騎士団長のランクスが立ち上がりそう進言する。
その言葉に、王達は来客の顔色を見た。
どうやら、他国からの来客達の中には、《この事》を知る者もいたようだ。
確かに今は下手な事をすれば、このリフィールにとって良くない結果を生みかねない。
ここは、大人しく続行するのが得策だろう。
「・・・ならば、せめて王の前なのだ!その面を外したらどうだ?それが《礼儀》だろう」
その側近の大臣の言葉に、2人はアイリスの顔を見た後、兜と仮面を外した。
「大男は魔物・・・いや猪人族だったのか?どうりで体が大きい訳だ」
大男のブタの顔には大きな古い傷がある・・・その為に普段は外では兜を被っていた様だ。
「その男、もしや・・・『刀傷顔』なのか?」
1人の来客の男の口から、そんな単語が出てきたが・・・
だが、その来客の男は首を横に振り、自分の言葉を否定する・・・
「その傷の男は、十数年前に当時の勇者と共に戦い、魔王ガトラスとの相打ちになり、表舞台から消えた筈だ・・・」
その後の消息は知られていない。
その人物の形容が、ハイオークだったという話も無い。
顔に傷がある事は周知さられていたが、実際にその顔を見た者は少ないのだ。




