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僕とおじさん

気がつけば僕の目の前には青色が映る、これが空なのか?

僕は地面に仰向けで寝ているみたいだ。

これが外なのか、今まであそこの部屋から出ることがなかったから、全てが新鮮に映る、何て色鮮やかなんだろうか。

体を起こし回りを確認する、緑色の草原の先に木々が茂っているのが見える、森というやつなのかな?。

そして気がついたが、僕の着ていた服が変わっている。

これがこの世界での僕の服なのかな?。

初めて着ていた服に僕はおもわず草原を走り回ってみる、嬉しい!、新しい服も!、走れることも!。

今までできなかったことができる!。

ひとしきり走った僕は再び地面に倒れ込む、少しはしゃぎ過ぎて疲れたのだ。

神様の言葉を思い出す、この世界を破滅しようとする者って誰なんだろう?。

何も手掛かりがない。

今更色々と考えてもわからないし、とにかく何処かに歩いてみよう。

僕が再び立ち上がると。

「うわっ、何でこんな所にいるんだチビ助」

僕よりもうんと背の高いおじさんが僕を見下ろしていた。

「そんな所にいると獣に襲われるぞ」

おじさんは僕を抱き抱え目の前で降ろす。

持ち上げられた時に見えたが、頭には角が2本生えている、昔見してもらった本に出てきた鬼みたいだ。

「もしかして迷子か?、何処から来たんだ?」

「えっと…」

僕が頭の角を見ていることに気づいたのか。

「もしかして魔族を見るのは初めてか?、この辺は人族より多いと思うが、もしかしてそのみかけで旅人なのか?」

ジロジロと僕をみてきてるのがわかる。

「まぁいいか、この辺に村もないし、今日は俺の家に泊まると良い、決まりだな」

僕が有無を言う前に再び抱き上げ、肩の上に乗っけられる。

「名前は何ていうんだ?」

「僕の名前は…」

…あれ?

大事な名前のはずなのに。

何故か霧がかかったように思い出せない。

何で?

どうして?

「どうした?」

黙ってしまった僕に不思議そうに聞いてくる。

「思い出せない」

「記憶喪失か?」

「…わからない」

名前以外は覚えている、神様のことも、ママやパパとお兄ちゃんにお姉ちゃんのことも。

名前だけが思い出せない。

僕がおちこんでるのを察してくれたのか。

「まぁゆっくり休憩したら思い出すかもしれないし、あんまり気にするな」

優しい声で慰めてくれた。


2


どれくらいの時が流れたか、明るかった空は夕焼けに変わり、聞いたことのない動物のような声が何処からか響いている。

「この辺は暗くなるのが早いから獣達も活動し始めるのが早いんだよ」

あのまま最初にいた所にいたら危なかったのかな?、外は思っていた以上に危険がいっぱいみたいだ。

「よし、家に着いたぞ」

肩から下ろされる、長い時間肩に乗ってたからか足が変な感覚だ。

「ほれ、入りな」

大きいおじさんに合わせて作ったからか、ものすごく大きなお家にビックリした。

手招きされるままに家の中に入る、大きなテーブルに大きな椅子、大きなベッドまで全てが僕よりも大きい。

おじさんは椅子を引いてくれるが、僕の身長だと座れない、それに気づいたのか、ちょっと待ってろと言って外に出ていく。

1分もかからないうちに僕でも座れる梯子付きの椅子を持ってきてくれた。

僕が椅子に座ると木でできたコップに何かを注いで目の前に置いてくれた。

「シガラキの樹液だ、甘いのは大丈夫か?」

「ありがとうございます」

水よりも少し白く濁っているが、朝にいた草原のような爽やかな香りがする。

少し口に含んでみる、香りと同じく爽やかな甘みのある飲み物だ、おもわず一気に飲み干してしまう。

「俺はこれが好きでな、口に合うかい?」

おじさんもガブガブと勢いよく飲んでいる。

「とっても美味しいです!」

「ならよかった、いっぱいあるから好きなだけ飲みな」

空いたコップに新しく注いでくれる、おかわりしやすいように一緒に少し大きめのコップに樹液が入ってるのを近くに置いてくれた。

「それじゃあ晩飯の準備するから少し待ってな」


3


僕が樹液4杯目を飲み終わろうとしたら。

「待たせたな、簡単な物だが食べるぞ」

おじさんが料理をテーブルの上に並べ始める、どれも見たことがない見た目だ。

「ありがとうございます、いただきます」

「いただきます?、よくわからないが食いな」

テーブルの上にあるパン?みたいな物に手を伸ばす、病院にいる時は固形物が食べられなかったので、アニメでしか見たことなかったから不思議な気分だ。

「作ってから少し日が経って硬くなってるからこのスープに浸して食いな」

言われた通りに緑色のスープに一口サイズに千切ったパンを浸して食べてみる。

今まで食べたことのない味だけど、美味しい。

「美味しいです!」

「ならよかった」

いつもご飯は柔らかく舌で潰せるような物しか食べてなかったから噛むことが楽しい。

だからこそ1年に1回の誕生日には少しだけ食べれるケーキが楽しみだった。

みんなのことを思いだし、少し泣きそうになる。

「どうした?、大丈夫か?」

僕の食べる手が止まっていたからか、心配そうに僕を見つめている。

「大丈夫です、少し考え事してただけです」

必ず僕は元の世界に帰る、そして誕生日を迎えるんだ。

そう心の中で誓い、僕は今の食事を楽しむことにした。


4


「それで、何か思い出したか?」

濡れた布で僕の体を拭きながら聞いてきた。

相変わらず名前は思い出せない、何か理由があって神様は思い出せなくしているのかな?。

もやもやするけど考えてもわからないし、今は諦めることにしよう。

「名前は思い出せないけど、僕のことを話してもいいですか?」

「おう、好きに話な」

おじさんに出会うまでの話しを簡潔に伝える、おじさんは真剣に聞いてくれた。

「なるほどな、どうりで警戒心もない訳だな」

「信じてくれるんですか?」

「嘘をついている様にも見えないしな」

ただ、おじさんは何かを悩み始める。

「話しに出てきた友達本は今出せるか?」

心の中で出てくる様に考えると、目の前に本が出てきた。

「少し借りるぞ」

おじさんが手に取りパラパラとページを捲り出す。

「知らない言語で書かれているな、それじゃあ次はしまってみてくれ」

心の中で本をしまうことを考える、だけど本はおじさんの手の中にあるままだ。

「しまえない」

「じゃあ本を返すからもう一度やってみな」

本を受け取り再び考える、すると本は手から消えていく。

「やはりな、これからは簡単に他人に見せたらダメだぞ、魔本は価値が高いから最悪盗まれてしまうからな」

「わかりました」

盗まれたくないから気をつけないとな。

「後、別世界から来たことも話さない方がいいな。話したことによって何かしらのトラブルになるかもしれない、お前がコインを渡してもいいと思えるのにだけ話すようにしな」

おじさんは僕のことを色々と心配してくれている、出会ったばかりなのにいい人?だ。

「よし決めた、これも何かの縁だ。しばらくの間ここで暮らしな、色々と生き方を教えてやる」

この世界のことを何も知らない僕にとってはありがたい提案だ、だけどどうしてここまで親身になってくれるのかな?、とりあえず今は甘えておこう。

「ありがとうございます、それじゃあしばらくの間よろしくお願いします」

「おう、今日は遅いし明日からだな」

おじさんが用意してくれた寝巻きに着替える。

「ベッドが1つしかないから今日のところは一緒に寝るか、明日にはお前用のも用意しないとな」

おじさんに抱き抱えられながらベッドに移動しそっと下ろされる。

「それじゃおやすみ、寝返りで潰したらすまんな」

「おやすみなさい」

この巨体に潰されたらただじゃすまないよね、少しの不安と共に灯りは消され僕は眠りについた。

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