沈殿物
私はいったいどこにいるのだろう。
先生は現実世界を生きているというのに。
何を期待して、何を待っているのだろう。
私は手放せない、今のこの生活を。手放したところでどうしようもない。何も変わらない。不幸だと感じることは何一つないはずなのに、私の現実世界に先生はいない。そして、先生の現実世界にも私は存在しない。その事実が、私を底へ底へと沈ませる。
こんな思いをするのなら、知らなければ良かったと何度思っただろう。知らなければきっと、ただ純粋に先生を慕っていられたはずなのに。こんなにも辛く、孤独を感じることもなかったはずなのに。だけど知ってしまったから。耳元で響く先生の声も、体温も、全部。だから私は、ただそれらを思い出し、記憶に抱きしめられ、現実に突き放されている。
私のこの感情はどこに行くでもなくただ宙をさまよう。さまよってさまよって、また私に戻ってくる。そしてそれらは全て私の中へ吸収され、沈殿物として私の体積を奪う。誰かに、時間が全て解決するよとありきたりな言葉をかけてもらいたくなる。
先生は知らない。私がこんなにも不純なことを。知らないでいて欲しい。私の愛する沈殿物たち。