表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/60

第9話

 スマホでネットサーフィンをしながら時間を潰していると俺の番号が呼ばれた、受付に向かうとあのジト目の女職員がいる。


 俺はいくらになったのか気になったので尋ねた、まずはお金だ。


「すいません、あれ全部でどれくらいでしたか?」


「金額はこちらです」


 職員の女はトレーを見せるあのコンビニとかで小銭とか置くトレーだな、その上にはなんと万札が何十枚と積まれていた。


 内心めっちゃビビった。

 心の中の俺は目を見開いて顎をあんぐりと開けている、しかし俺も一応は社会人である。

 顔は無表情かつ勤めて冷静さを装った。


 かなり全力で無表情、落ち着け、俺も探索者の端くれだ。

 あれだけの量の魔石やら高ランクモンスターのドロップアイテムが入ってる以上それなりの儲けが出るのは分かっていたんだ。


 その上で目の前に大金が現れるとビックリするのは貧乏性ゆえだな。

 職員の女がいくらになったのかを口にする。


「全部で63万と8600円となります」


「なるほど……分かりました」


 何がなるほどなのかと自分で自分に突っ込みたくなった、えげつな! こんな馬鹿みたいな金額過去の探索じゃ一度も稼いだことねえぞ。


 過去の俺なら1ヶ月間コツコツ稼いだとして10万かそこらだったはずだ、それがたった一度ダンジョンで散歩してキングスライムも消し飛ばしただけで63万って。


 本当に探索者ってやつはステータスさえ高ればボロ儲け出来る商売だな。

 ちなみに探索者関係の仕事で得た報酬というのは基本的に税金というものがかからない。


 何故なら探索者というのはどう言い繕っても命がけの仕事である、それでもなって続けたいという人間はやはり限られる。


 そんだけの仕事をした上でやればやるだけ損をするだろう的な風評被害とかで探索者が減ればとんでもない社会問題になる。


  年収の壁みたいな法律を作って探索者がやってられないとなれば有能な探索者は大抵が金持ちということもあり簡単に国外へ出て行くのだ。


 そして有能な探索者たちの国外流出というのはそれだけで巨大な国益の損失、経済の停滞を招きかねない事件となる。


 つまらない欲目を出して探索者たちに見限られれば、マジで国が傾くとある程度イイ大学を出たエラい人間たちは考えたらしい。


 学歴が高卒止まりにはピンと来ない話だが、多分そうなのだろう。

 あと高ランクの探索者たちは日本国内だけでなく海外でも有名で結構なコネを持っている人間が多くいる。


 単純な話、そういう先駆者たちが勝ち取った実績の一つが探索者たちの税金等の廃止なんだそうだ。


 無論あくまでダンジョン関係に限られる話なので少しは融通されてますってレベルだけどな、ともかくダンジョンで得た収入で税金が課されるということはないのでこの63万円はそのまま俺の懐に入るのだ。


 黙って大金を見る俺に女職員が言う。


「それと今後は電子マネーかあるいは銀行への振込等なども可能ですがどうしますか?」


 今どきの若者向けの対応だな、むしろここが九州の田舎じゃなかったら最初からそうされていたんだろう。


「……いえっ現金でお願いします」


 ここら辺は正直言って古臭い考えというか田舎の人間だからかもしれないが俺は未だに電子マネーというのは苦手だ。

 というか銀行に直接振り込むというのもなんか嫌なのである。


 自分で振り込む手間はかかるが、とりあえずその現金を自分の手元に手にしておきたい。


 なんでかと言われても聞かれても理由はない、なんか自分が働いていた金額だからさ、まずは一回手にしておきたいってだけなんだよ。


 大した理由なんかない、そして現金を受け取った俺は内心小躍りしていた。

 もはや愛想のかけらもない女職員の態度なんて全く気にならない。

 お金を受け取り、探索者ギルドを出ようかと考えていた。


 すると女の職員が訪ねてきた。


「もしかしたらですか、あなたはどこかの別のとこで活動していた高ランクの探索者なんですか?」


「いいえ、探索者のライセンスカードは持ってますがほとんど引退していたようなもんです」


「キングスライムを倒せるのに探索者を引退してたんですか?」


「…まあそこら辺はいろいろこっちにも事情があるんです」


「そうですか、分かりました」


 日本人の美徳として事情があるといえばよほどの馬鹿や空気に読めないやつじゃない限り、それ以上踏み込んで来るやつはまずいない。


 こっちとしても赤の他人にベラベラと『神殺し(偽)』の称号について説明するつもりはないと考えてるので助かった。


「とりあえずまたダンジョンに行って魔石が集まったら、ここに来るかもしれません」


「分かりました、ではまたお待ちしております」


「失礼します」


 会って数分の職員に適当な相性笑いを浮かべ俺は探索者ギルドを後にする、最初はジト目だったけどギルドを出る時はその険のある表情はどこか和らげな感じになっていた。


 内心何か怒らせたりしたのか不安だったので一安心したよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ