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第52話

 五味川という人間は自分より偉い人間に媚びへつらい、平然と無理な仕事を請け負うタイプの人間だ。


 取引先からの仕事に対しても一度に大量の商品を仕入れる代わりに一個あたりの単価を馬鹿みたいに安くしろ、みたいな話もヘラヘラしながら分かりましたと受け入れる。


 自分の親が作った会社が生み出して長年その価値を守ってきた商品、その価値を簡単に下げる。

 そんなバカな真似を何の考えも無しにして自分は仕事を取ってきてやったと抜かす人間だった。

 先代の社長も先輩も頭を抱えていた。


 その上で自分の会社で雇っている人間、すなわちヤツの中で自身より格下に当たる人間に対しては一切、まるで人間以下の何かだとでも見下したような態度しかとらなかった。


 気遣いというものに欠けた言動も多く、いつも一言も二言も言わなくてもいい余計なことを言っては社員から反感をかっていた。


 ただ………本気で見下している相手に態度を偽ったり嘘を言う事もなかった。


 つまり仮にあのゴブリンキングが五味川だとすると、この状況で俺に嘘をつく可能性は限りなく低いということだ。


「…………」


 要はこれ以上話を聞くだけ無駄だということである。

 時間の無駄だ。


「もういい、おいっ五味川っぽいゴブリンキング。さっさとお前を始末してこのダンジョンからおさらばする」


「お前……さっきから五味川、五味川とこの我の名前を気安く呼ぶんじゃねえ。ちゃんと以前みたいに社長か若社長と呼べや日影ーーー!」


「ハァ……悪いけど俺にとって本当に社長と言えたのは先代だけだ、テメェはただの盗っ人と大差ないだろうが五味川大助」


「ふざけるな! あのくたばった老害が一体何だって言うんだ!」


 あの社長が会社を作って、何十年と守ってきたからお前みたいなゴミでも社長の息子だからとそれなりに扱われてきたんだろうが。


「お前みたいに人生で何も積み重ねていない人間が人の上に偉そうにふんぞり返れた理由を少しは考えろ」


 俺自身、何十年と会社にいたわけではないのでとっくに辞めた先輩たちほど詳しく知ってるわけではない。


 ただ先代の社長然り、この五味川を子供の頃から知っているという何十年と付き合いのある先輩というのが何人かいたのだ。


 その人たちの話では五味川は随分と若い頃に先代の社長と大喧嘩をし、家出をするようにここを出て行ったらしい。


 そして十数年の時が経ち、いきなり帰ってきたかと思うと嫁を連れてきたそうだ。

 普通はそこできっちり謝罪をしたりするのだが、コイツはそれすら禄にすることもなく、ただ社長の息子として会社に転がり込んできた。


 当時の社員たちからは当然反発も大きかったそうだが先代とその奥さんが頭を下げて何とかこの会社に置かせてもらった。


 この五味川が薄汚い本性を表したのはその奥さん、つまり自分の母親が亡くなって、先代の社長が体調を崩し気味になった時だった。


 それまでは一切口出しもしなかった会社の経営に関してアレコレと言いだしはじめたそうだ。


 その理由は一緒に連れてきた嫁だった、というのもこの嫁、コイツもかなり禄でもでもないヤツで碌でなし四天王の1人である。


 その嫁は完全なイエスマンでこの七光りの言った、経験も実績も伴わない思いつきだけのやり方を全て受け入れ無意味に褒めてはこのバカの悪い部分を増長させた。


 その結果、五味川は先代との意見の方針が合わず言い合いになった時、ただやたらと馬鹿でかい声で相手を怒鳴り散らすようになった。

 まるでチンピラか半グレだ。


 何度も何度も怒鳴り続ければ先代が呆れて何も言わなくなる、そんなことを学んでからはこの工場では週に何度もこの馬鹿の罵声が轟くようになってしまった。


 理論を組み立て相手を説得するでもなく。

 実績を積み上げ相手を諭すでもなく。

 ただただうるさい罵声を上げ、怒鳴り散らすそれだけで相手を論破した気になって得意気にこの馬鹿はなっていた。


 結果、先代の現役の頃から努めている社員たちからは信用も信頼も全て失った。


 そんな真似をしていれば当然だ、やってることがカッコ悪すぎる。

 学校で不良ごっこをしてるような関わりあいになりたくない人間、あるいはそれ以下の見た目だけが大人でオツムはクソガキ、それが五味川という人間である。


 総括して俺が言えることは一つだ。


「ゴブリンキングか……まさにお前という人間をモンスターにしたらそうなると想像出来る化け物だな、知ってるか? ゴブリンは最底辺の弱小モンスターだ。俺はそんな底辺の王様ですってぬかしてるんだからな、お似合いだぜ、五味川」


「てめえ………ぶち殺してやる!」


 ゴミゴブリンが手にした錫杖を掲げる、同時に俺の周りに魔法陣が出現して、無数の攻撃魔法が俺を襲った。

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