表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/60

第43話

 モンスター退治やら魔石の回収やらをしながら探索を進めることしばらく。


「よしっ到着したな…」


「ええっここが次の階層へと向かう階段の場所よ、しっかり覚えておいてちょうだい」


 愛華の指さす先には灰色のブロックによって上手い具合に隠れるように存在する階段があった。

 横幅と天井の高さともに結構あるな。


 複数人で移動するには問題ないくらいの大きさだ、ちなみにダンジョンの階層を移動したりする階段や通路の近くにはモンスターが出現しない。


 そういう報告が上がっていないっていうだけで絶対と言い切ることは危険かもしれないがこういう階層を移動する場所では探索者たちが休憩をするということはままある。


 俺自身は一日で行って戻ってくる範囲内で探索者活動をしようと思っているのでダンジョンの深い階層に潜ることはないとは思うが……それでも二階層くらいだったら気まぐれに行ったりするかもしれないな。


 昔の俺なら確実により深い階層へと行きたがっただろうし。


 だからこそ、こういうところで休憩をする日もいずれ来るのだろうか。

 例えばそれはうちのポンコツ後輩を連れてこのダンジョンを訪れる時かもな。


 そんなことを俺は考えていた。

 ぶっちゃけもう今日のダンジョン探索はここまでで終わりでしょうと、そう考えていたのだ。


「それにしても天海さん、今回のダンジョン探索は結構な量の魔石をゲットする事になりましたね」


「確かに、私も何度もこのダンジョンの足を運びましたがここまで大量のモンスターをスムーズに倒せたことはなかったです、やはり実力のある探索者の方とパーティーを組むことには大きいですね」


 褒められてる、大人な雰囲気の女性(それでも普通に俺よりは年下なのだが)に言われると嬉しいもんだ。

 どっかの後輩みたく人を小バカに態度が欠片もない所が何より大きな違いだ。


「正直俺は前衛で囮をやってるだけなんですけどね」


「とんでもありません、あなたのパーティーへの貢献度はとても大きいと思います。自分より大きなモンスターに素手のままで前に出て行くことは歴戦の探索者でもそう簡単にできることではありませんよ」


「……まっ普通はそんな馬鹿な真似をするのは勇気じゃなくて無鉄砲か無謀だって話だけどね」


 愛華がうるさい。


「天海さんの攻撃も凄い命中精度でした、一度も前に出てる俺に被弾する事もなかったじゃないですか」


「ふふっ流石にダンジョン探索でフレンドリーファイアは厳禁ですからね、銃を使う以上は訓練は怠れませんよ」


「ふんっそれなら私のリビングソードは……」


「愛華、お前のリビングソードは何度俺の鼻先をかすめれば気が済むんだ?」


「そんなの全てあゆむが避ければいいだけの話じゃないかしら?」


 コイツ…素でイカレた発言を……。


 そんな感じでお互いの頑張りを褒め合っている時であった。

 愛華、 この恐るべき女リーダーがとんでもないことを言い出したのだ。


「さてっそれじゃあ今日はこの辺で帰るとしますか」


「ですね、今日のダンジョン探索はスムーズに進み過ぎました。体力も精神力もモンスターとの連戦で……」


「………何言ってるのよ? ダンジョン探索を始めてまだ一時間がそこらくらいでしょ? 用意した水も食料もほとんど使ってないんだから次の階層に行ってさらにモンスターを狩るのよ」


 ………………何ですと?

 俺と天海は固まった。


「……なっなんでいきなり次の階層に行くなんてことになるんだよ」


「何でって、そっちの天海って子がここのモンスターをいくら倒しても称号の一つも得られなかったって言ってたし、だったら今まで行ったことのない次の階層の方でモンスターを倒せば何かしらの称号を得るかもしれないでしょう? ものはついでだしもうひと稼ぎしたいのも事実だし、丁度いいんじゃない」


 いやっ丁度いいんじゃないって、そんないきなり言われても。

 天海の方を見る、彼女自身も少し困っているような印象を受けた。


 そらそうだろう、無論彼女は探索者として現役だと言っていたしより強い称号が欲しいというのは間違っていないだろう。


 ただこうも無計画な感じのヤツの指示で言われるとさすがに困る。


「じゃあひとつ聞くが、もうひと稼ぎってのは結局のところどんくらいな時間まで探索するつもりなんだ?」


「そうね~~とりあえずは今日と明日、2日間くらいはこのパーティーの様子を見たいと思ってるけど?」


  俺は宇宙人か何かと話してるのだろうか。

 何を当たり前のように2日間このダンジョンにいるつもりだと抜かしてるんだこいつは。


 俺は速攻で天海とともに少し愛華から距離を置いてコソコソと話をする。


「天野さん、あいつ本気ですよ。一体どういうつもりなんですかね?」


「……そういえば一つ、あの人についてある噂を聞いたことがあるのを思い出しました」


「ある噂……ですか?」


「はい彼女がソロで探索者をやってる理由です」


 なるほどそれは気になりますな。


「彼女は以前何度かパーティーを組んだことがあるそうです、しかし彼女はパーティーを組むと探索者達の力の差があると感じた場合、その差を可能な限りを埋められるように一種のレベリングに近い行為を行うそうです」


「レベリング? ダンジョンでモンスターを倒したからってレベルなんて上がらないでしょう、そもそも俺たちはゲームの世界にいるわけじゃないんだし」


「その通りです、要はモンスターの大量討伐に関係した称号を狙うのと同時にモンスターとの戦闘経験を積ませて実力を底上げするわけです、その時の基本ルールとして数日間は平気でダンジョンにこもっての戦闘を強要するそうで……」


 なぁんでそんなヤバイ情報を今の今まで忘れてたんだよ天海さんよぉおお!


「そうっ彼女は探索者の間で鬼軍曹として恐れられていました。結果彼女が組んだ全てのパーティーは解散し彼女はソロになったとか」


 鬼軍曹………これはまたとんでもないやつとパーティーを組んでしまったな俺たちは。

 もう本当に帰りたくなってきたんですけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ