第42話
ダンジョンの探索を進めていくと当然モンスターと何度も戦闘することになった。
しかも先ほどのガーゴイル以外にもこの『搾取王の灰道』には何種類ものモンスターが現れる。
ほぼ一種類のモンスターしか現れない不人気ダンジョンちゃんとの格の違いが見て取れる仕様だ。
そして俺たちが戦ったガーゴイル以外のモンスターはと言うと……。
灰色の体と鱗を持つロックリザードマン。
灰色の体毛を持つ中型犬並みに大きなネズミ、アルバン。
あとはダイオウグソクムシよりも大きなダンゴムシのそっくりさん、グレースフィアなどが現れた。
無論そいつらをみんな倒しながら俺たちは探索を進め、倒したモンスターたちのドロップアイテムまあ殆どが魔石だな。
それらを回収していくのが俺の主な仕事の一つだ、身体能力関係のステータスが異常に高いことが愛華たちにバレてしまったから仕方ない。
大きく丈夫な袋を手渡され、それに戦闘が終わった後全ての魔石を回収するようにとリーダーである愛華に命じられたのである。
戦闘後はお前らも暇してね? 何より愛華さんよ戦闘してんのお前じゃなくてお前が召喚したリビングソードだけじゃんせめて天海みたいに遠距離攻撃の一つでもしてから休め。
そんなことを内心は思いつつも俺は指示に従った。
俺は社畜をしていた時、こう言う微妙な理不尽に対して無抵抗で受け入れてきた気がする。
そうやって社畜の人格とは形成されるのであろう。
……何ということだ、『神殺し(偽)』の称号なんてのを手に入れた今でもなお、俺の中には社畜の精神が生きているというのか?
そのことに気づき俺は軽く絶望しながらも魔石を黙々回収していた。
ちなみにこの魔石を回収した後の袋は愛華の異空間収納のスキルでどこぞの異空間へと収納され姿を消される。
そのスキルの存在を天海が知った時はそれはもう大層驚いていた、やっぱ探索者が欲しい有用なスキルぶっちぎりナンバーワンだからな。
異空間収納……俺も欲しいぜ。
戦ったモンスターとの戦闘についても話そうか、ロックリザードマンは1体から2体で現れる。
体と鱗が岩石並みに頑丈なのだがその動きは本来のリザードマンと変わらない、スピードも速く、長い手足と爪のリーチを生かして攻撃を仕掛けてきた。
あと噛み付いてきたりもする、地味に危ない攻撃だったな。
爪でのひっかき攻撃は普通の人間なら肉を易々と切り裂かれ大怪我を免れない力を持つ。
その上で武器まで持っているので本当に厄介だ、あの長い爪を持ちながら器用に武器を振り回すのだから大したもんだ。
ただ残念ながら連中が持っている遠距離武器はせいぜいが粗末な弓矢とか槍を投げてくるような程度なので森の中とかでもないこのダンジョンならブロックの死角にさえ気をつければ不意打ちはまずない。
そしてこっちには愛華のリビングソードだったり天海の銃がある、ファンタジーと現代武器の前ではロックリザードマンもそれなりに頑張ったな程度のものだった。
アルバンはモンスターにしては小さい方だ、代わりにグリーンワームと同様にそこそこ群れて現れる。
だいたい5、6匹くらいで集まってこちらを襲撃してくるのだ。
灰色の毛皮はこれまた頑丈で皮膚も硬い、コイツらの皮がドロップすると良いな。
革鎧やブーツ、後は盾の素材として結構高値がつくのだ。
ちなみに攻撃力もそこそこ、口が大きいので噛み付かれると大変な事になる。
俺の場合噛み付かれると向こうの歯がバッキバキになってアルバンの方が可哀想な事になった。
動きの方は本来のネズミよりかは体が大きい分微妙に遅く、愛華のリビングソードでぶった切られていたし天海の銃弾でもやられていた。
グレースフィア、こいつらが何気に厄介である。
なにしろ体の頑丈さは他の連中よりも硬く、その上で体を丸めてゴロゴロと転がってくるのだ。
しかも襲撃してくる時の数は基本的に10体以上、その上で手に入る魔石はこのダンジョンの中で一番小さく価値が低いのだから納得がいかない。
転がって高速移動、それからの体当たりをかましてくるので危険度もそれなりにあり厄介だ。
コイツへの対処は俺が動いた、というかコイツらは基本的に前衛の方から真っ先に狙ってくるタイプだ。
だから俺だけに向かって体当たり攻撃してくるのである、俺はそれを真正面から受ける、すると連中の方は攻撃をしたやつから気絶していくのだ。
スライムの時みたいに攻撃した自分から爆散するようなことはないだけにこいつらの戦闘力の高さが伺え…るか?
気絶した端からその硬い殻をを踏み砕いてやった、なんとなく俺の心にダメージを感じるのは何故だろう。
ちなみにコイツらの殻もダンジョン産の防具の素材になるのだがなかなかドロップしないのである、確率上げろよくそダンジョンめ。
どうしてダンジョンは倒したモンスターの素材は剥ぎ取りじゃなくてドロップ変換仕様なのだろうか。
目の前にあるヤツを剥ぎ取っても光となって魔石となる光景を目にしながら俺は黄昏れるのだった。




