第41話
「日影さんすごいですね…」
「やっぱり…あの時見たのは夢ではなかったみたいね」
「愛華さん、何か言いました?」
「……大丈夫、気にしないで」
2人が何か話してるな、他のガーゴイルまで俺にたかってきてるんださっさと援護をしてほしいんだが。
「おいっそろそろ援護を頼むぞー!」
「分かったわ、というかさっきの馬鹿力について後でちゃんと説明してもらうからね! 行きなさい!」
説明か、やだなー筋力強化系のスキルですとか適当に言えばいいか?
ガーゴイルの1体が俺に近づいてきて、とがった爪でひっかき攻撃をしてくる。
ヒットアンドアウェイを心がけているのか、攻撃をしたら即座に距離を取るスタイルだ。
だが遅い、距離を取ろうと翼を動かしたタイミングですぐに俺が至近距離に接近。
そのまま前蹴りをかまして胴体から破壊する、それを見た他のガーゴイルたちは至近距離で勝ち目がないと理解したのかできるだけ高い上空へと移動する。
そしてこちらに両手を向けてくると魔法系のスキルで攻撃しだした、バレーボールサイズの火球やら岩の塊やらをポンポンポンポンと打ってくる。
ちょちょいと攻撃を躱す、そして地面で砕けたガーゴイルの魔法で生み出された岩の破片を拾い奴らに向けてぶん投げる。
当たったやつから体の一部が砕けたり羽が砕けたりして地面に落ちる。
そして落ちてきたそいつらの元にジャンプ&キックで破壊して敵の数をさらに減らす。
愛華が操るリビングソードもガーゴイル達を倒していく、俺を警戒して攻撃を集中したガーゴイル達だがそのガーゴイル達を愛華と天海が背後から襲う。
天海の銃撃は確実にガーゴイルたちの頭を狙った攻撃だ、一撃で脳天を貫かれたガーゴイル達は地面に落ちて光となっていった。
「ガーゴイルも頭が弱点なんだな、脳みそ入ってんのかあいつらって」
「素で相手を怒らせるようなこと言うタイプよね、あゆむって…」
疑問に思ったことをそのまま口にしただけなのだが、まあ愛華の言葉については心当たりがないわけではないので無言で無視することにした。
多分、最初に来た時10体くらいはいたであろうガーゴイル達が俺たちの素人感丸出しのしょっぱい連携を前に全滅した。
早速ガーゴイルが消えた辺りに落ちてる魔石を回収する、スライムやグリーンワーム達のビーズみたいな魔石よりもずっと大きい、ビー玉くらいはあるぞ。
これは高値で売れそうだ。
「なあ、ガーゴイルの魔石って一個でいくらくらいするんだ?」
「あんたそんなことも知らないの?」
「悪かったな、俺このダンジョンに来るの初めてなんだよ」
何しろ過去の俺はどこに出しても恥ずかしくない雑魚探索者だったからな、人目の多いダンジョンとか行ってモンスターたちから逃げ回ってる姿を他の探索者に見られたりしたら嫌だからな。
恥をかくのが死ぬほど怖いお年頃、俺にもそんな時代があったのだ。
そんな事を過去を思い出していると天海が魔石の値段を説明してくれた。
「ガーゴイルの魔石は1個あたり大体3000円から5000円くらいです」
「すごいなおい、これ1個でスライムの魔石何十個分はあるんだ?」
「スライムの魔石なんかで比べるんじゃないよ」
「この前そのスライムに負けそうになったやつがよく言うよな…」
「あゆむ、その話を他のとこで喋ったりしたらケツにリビングソードぶっ刺すからね」
やめろよ、お前の背後に浮かぶリビングソードがちょっと困った感じ震えてるじゃないか。
それに神殺しのケツを舐めるなよ、リビングソードの一撃にだって耐えてくれるかも知れないぜ?
「まっとりあえずこの3人ならガーゴイル程度なら問題ないってことはわかったな」
「なら次の階層に続く階段の場所がわかってるから、とりあえずそこまで行くわよ」
「場所の確認をするだけなら別にいいけど、まさか2階層に行くなんて言わないよな?」
「………………予定では確認するだけよ」
今の間は何だよ。
そういう曖昧な予定を立てて後になってからその場その場でコロコロ予定を変えるヤツっているよな。
その場のテキトーな思いつきで行動する駄目人間って自分は段取りが下手ですって言ってるのと同じようなもんだからな。
そういうヤツに限って細かいところに気が回らなくなって周りの人間に迷惑をかけるんだぞ。




