第34話
「ちょっと待ってくださいよ! ダンジョンでの稼ぎがほとんどないってどういうことなんですか!?」
今宮は憤慨していた。
そらそうだろ、あんだけ気持ち悪い芋虫を散々退治してあんな気持ち悪いバケモンみたいなクソムシキメラに追いかけ回され。
最後には俺の背中と丸出しのケツを凝視した結果の報酬でありそのダンジョンでの稼ぎが正直微妙ですとなったのだ。しょうがない反応である。
何故にダンジョンの稼ぎがしょぼくなったのか、その理由簡単だ。
まずグリーンワームの魔石についてだがこれは俺と今宮で魔石の半分ずつを持っていた。
お互いに用意したエコバッグの中に魔石を入れていたのだが俺がレインボーフレアを発動した時に衣類と共に俺の分の魔石も蒸発したのだ。
いやあるいはあのクソムシキメラの黒い液体を食らった時には既に酸で溶けていた可能性もある、ここら辺はよくわからないけど取り敢えずヤツの攻撃のせいだと言っておいた。
お前を庇ったから俺の分の魔石はなくなったんだよ、ということにしておいたのだ。
そして当たり前だがそのクソムシキメラの魔石もドロップアイテムも何も残らなかったからな。
これについては仕方がない、それらのアイテムはゴッドブレイクアローで消滅したからな。
あるいは魔石やらドロップアイテムとはダンジョンに出てくるモンスターの死骸が残らないと手に入らないのかもな。
だってその死体が光となって変化して現れるからな、つまり死体が残らないとその手のドロップアイテムはゼロになるというのがダンジョンのルールなのかもしれない。
そんなわけで今回のダンジョン探索の報酬は今宮 が持っていた袋の中にある魔石だけである。
それを二人で分けるのだからまあ稼ぎなんて数万円あるかないかだろう。
「納得できないんですけど、本当に納得できないんですけど!」
「納得できなくてもこれは現実なんだよ。文句言うなよ社会なんてそんなもんだろ、諦めろ」
ついさっきとんでもなく強そうなユニークモンスターを倒した俺だが社会の理不尽さとはユニークモンスター以上にいろんな意味で強大なのである。
スマホかなんかで動画でも撮ってない限り、ユニークモンスターの討伐記録なんて残らない。
その上ドロップアイテムもなしじゃ倒したとしても言っても信用されはしないのだ。
つまり探索者ギルドに行ってユニークモンスターを倒しましたと抜かしても一円ももらえないのである。
せめてクモ足の一本でも残っていればな…。
「う~私がスマホで先輩の勇姿を動画撮影していれば……」
「そんなことしたら全裸で虹色に輝く変態の映像が拡散されるだろうが。俺が社会的に死ぬわ」
そしてちなみにの話なのだが、やはりあのユニークモンスターを倒した時にまたあのアナウンスが発生した。
あの虫の名前は魔王虫ジェノサイドワームという名前らしい、やっぱりユニークモンスターだった。
そしてそれを倒したことによって俺は新たな称号 『魔王虫の狩人 』をゲットした。
なんか虫系のモンスターとの戦闘でドロップアイテムのドロップ率が上がったりステータス補正が強化されたりするらしい。
これもなかなかに強力な称号だ、無論 『神殺し(偽)』には及ばないが。
本当に『神殺し(偽)』の称号のぶっ壊れ具合は異常だぜ、ユニークモンスターを倒して得られる称号でも及ばないんだからな。
はっきり言って意味がわからない。
そして今宮についてだとこいつも新たな称号を得た、その称号とは『キモキモハンター』だ。
ステータス補正はそこそこでステータスランクが殆どDかCくらいに強化される立派な称号である。
しかも特殊能力が付与されている、なんと今宮がキモいと感じたモンスターと戦闘を行う時にステータス補正がさらに強化されるのだ。
対象範囲がこいつの気持ち次第なのは微妙なところだが、それなりに広い範囲に効果があるというのでなかなかに当たりの称号と言えるだろう。
俺が手に入れた『魔王虫の狩人』は虫全般に効果がある称号なのだが、俺はもう虫系モンスターとは金輪際戦いたくないのでこの称号が輝く日は多分来ないと断言する。
ちなみに今の俺は全裸ではない、今宮をパシらせて用意させた服を着用して靴を履いている。
まあ金の方は俺が出しているのでこいつに文句は言わせない。
何とか全裸から復帰した俺はこれから探索者ギルドに向かうことにした。
魔石を換金にしてもらうつもりだ。
道中、トボトボ歩きながら今宮と話をする。
「もうちょっと威力の弱い攻撃スキルが欲しいよな」
「というか先輩がもっと加減してあのキモムシ野郎を倒せば良かったんです」
「仕方がないだろアイツはお前に…いやっ俺たちが必死こいて稼いだ魔石に手を出したからな。これは許されないことだ、全く…」
「……まあそういうことならいいですけど~」
今宮が口をアヒル口にしてなにやら知ったかぶったようなことを言ってくる。
妙に似合ってるのがむかつくな。
「それじゃあ換金して出来た金で何か食いに行きますか!」
「……そうだな」
何はともあれ、生きて帰って来れたわけだし今日のところはこれで納得するか。




