学院で噂の彼女に会いました
あれは確か、私がまだ6歳になったばかりだったと思う。
どういう経緯だったかは詳しくは覚えてないけど、上級官吏をしている父にくっついて王城エリシオンに来ていた時の事。
帰途に就く途中の回廊で、ひとりの男性に出会った。
父の友人だと言ったその人は、幼い私の目にも大層疲れ切っているように見えた。
「もう、十日になるのか……
カールソン………あまり寝てないんじゃないのか?」
「息子を看ている妻はもっと辛そうでな……何もしてやれない自分が歯がゆくてしかたない」
「医者は…?」
「公爵家専属の医師も魔法士も、病名も治療法も判らない…
何か、何か少しでも息子がああなった原因を突き止められないかと思って、魔術師団長に面会の許可を取ったのだ」
深刻な面持ちで話す大人たちを、小さな私はただじっと待っていた。
その時、父の友人の手の中に、キラキラと光る何かを見つけた。
私の視線に気が付いたのか、カールソン様が私の前に屈んで、それを見せてくれた。
光を反射して、青や緑や黄色に薄赤、様々な色に輝く宝石でできた小さな鳥だった。
「…きれい」
「カールソン、それは?」
「息子が倒れた時、その手に握っていたものだ。
息子の持ち物ではないし、我が家の者は使用人に至るまで見覚えがない。
魔法の痕跡はあるが、詳しい術式まではわからなかった」
「では、ご子息は病ではなく……?
公爵家の者に術をかけるなど、そんな大それた事を誰が!?」
「わからない。とにかく、これが手掛かりなのは間違いない。
だから魔術師団長に面会を申し入れて、これから見ていただこうと…」
父たちの会話を聞き流しながらキラキラの鳥に目を奪われていたのだが、ふと視線を上げると優しい、でもとても悲しそうな顔をしたカールソン様と目が合った。
「うちにも、君と同じ年くらいの息子がいるんだけど、今ちょっと体調が思わしくなくてね。
元気になったら、一緒に遊んでやってくれるかい?」
こくり、と頷いて、またカールソン様の手の中の小鳥に見入った。
キラキラした小鳥の、その周りに見える、黒い靄のように絡まり合ったもの――――
「……こんがらがって、かたまっちゃってる」
「リリス?」
ぐにゃぐにゃしているのにとげとげのような、とにかく絡まり合った黒いモノが小鳥をぐるぐるとがんじがらめにしているのが見えた。
(いくらキラキラきれいでも、これじゃあとべないわよね)
無意識に、魔力を集めた指先でカールソン様の掌の上の小鳥にそっとなぞる様に触れた。
「っ…」
途端、ちくりと棘が刺さったような痛みがあったのも、覚えている。
痛いのを我慢して、黒いぐるぐるを断ち切るようになぞりきった。
そして――――
ほんの一瞬淡く光った後、カールソン様の掌の小鳥にひびが入り、宝石の中からふわりとした羽毛が覗いた。
ぷるぷるっと体を震わせて宝石の欠片を振るい落とした後、小鳥は軽やかに羽ばたいて行った。
飛べるようになってよかったねぇと父の方を仰ぎ見た私の目に飛び込んできたのは、驚愕にこれ以上ないほど目を見開いた大人達の顔だった。
たぶんあれが、私が『解呪』の力を人前で使った、最初の記憶だ。
私の生まれたフェアノスティ王国は、魔法と妖精の国と呼ばれている。
その名の通り、国内各所に妖精たちが多く集う地域があったり、魔法使いが他国よりたくさん生まれたりするからだ。
王国の首都エリサールの居住層中央区にあるのが、フェアノスティ王立学院。
建国王ルーファウスの御代に設立されたこの学院は、王国内の各種学問の最高峰。
特に魔法という分野においては世界中の知識が集約されていると言っても過言ではない。
ここで学ぶことは貴族の子女にとっては誉れであり、爵位のある家に生まれた王国の子供たちは大抵王立学院中等部への入学を目指す。
貴族に限らず、知識を求める者ならば平民でも、また外国の子女でも、入学試験を突破しさえすれば受け入れてくれる。
逆にどんなに高位の貴族の子でも、入学試験に合格しなければ学院に入ることはできない。
判り易くていい、と思う。
中等部で3年間基礎的学問を習得した後は、自分の実家に戻り家督相続に向け実地で学んだり、騎士見習いとして王立騎士団に入団したりと、学院を巣立って己が道に進む者も多い。
中等部で学んだことのさらに先にある専門的な知識や技術を求める者が、専門課程がある高等部へと進学するのだ。
学院高等部には、魔法大国であるに相応しく魔法の根幹とその応用を学ぶ魔法科があるのはもちろん、領地や商会を運営するにあたっての知識を教えてくれる経営科、国事に携わる官僚を育成する政治科、騎士や魔法騎士を育成する騎士科など様々な学科がある。
一般には入学が認められるのは12歳からだが試験さえ通れば年齢制限はない。そのため、民間の学舎を卒業した後で働きながら学び直したり、中等部を随分前に卒業したものの改めて高等部への編入試験を受ける者もいて、年齢の高い者も結構交じっている。
性別も、爵位の有無も、年齢もさまざま。このちょっと雑然とした学院の雰囲気が、私は結構気に入っている。
さて、入学・進級の時期特有のふわふわと浮き立つような雰囲気で溢れる学内は、新生活に入って間もない学生たちが愉しそうに行き交っている。
その学生たちの間で、入学早々ひとりの女子生徒が噂になっていた。
彼女、クロエ・フローデン嬢は長く伸ばした美しいピンクブロンドの髪と澄んだ青空の瞳のとんでもなく愛らしい美少女なのだそうだ。
その上大変優秀で、高等部への編入試験を異例の高成績で突破したのだとか。民間の学舎と家庭教師により良質な教育を受けてきており、王立学院に中等部から在籍している生徒にもまったく引けを取らぬと、学院の教師陣からも評価が高い。
南方に本店がある大きな商会の娘として厳しく躾けられていて、平民ながら礼儀作法もしっかりと身に付けている大変に魅力的な女性であるそうで。入学からまだ一週間も経っていないのに年頃の男子学生たちの間ですでに恋のさや当てが始まっているというのも話題になっている。
学院は勉強だけするところではない。
貴族階級や性別、専攻学科の垣根を飛び越えて様々な世代の者たちと交流を持ち、見聞を拡げる場でもある。
貴族と平民、男と女。
その別なく友人として親交を深めるのは悪いことではないだろう。
噂話が飛び交う学生食堂で持ち運べる軽食を買って、校舎脇をてくてく歩いて行く。
木漏れ日の下、学院高等部の中庭の一角にある長椅子と机で昼食を摂るのが、最近の私のお気に入りなのだ。
ほどいた髪が風に靡いて気持ちいい。
室内だと真っ黒に見えてしまう私の髪だけど、陽光に当たると瞳の色によく似た濃い紺色だとわかる。
これだけ濃い紺の髪は珍しいらしく、小さい頃は揶揄われることもあったっけね。
手に持った紙袋から薫ってくるホットサンドの美味しそうな匂いをすんすんと嗅ぎながら歩くうちに目指す長椅子と机が見えてきて、ようやく昼食にありつけると感じた腹の虫が淑女らしからぬ音を奏でた時、辿っていた小径の傍の生垣に人の気配を感じて足を止めた。
待ち伏せか、と一瞬身構えたのだけど。
「……何なの、何なのです一体…………!」
小さな呟きが聞こえてそっと窺ってみれば、生垣の向こうにしゃがみこんでいる女子生徒が一人。
陽光を跳ね返す長く豊かなピンクブロンド。
日に焼けていない白くきめの細やかそうな肌。
そーっと斜め上から覗き込むように見たその横顔は、透き通るような空色の瞳と、柔らかそうな頬。
噂のフローデン嬢と特徴が一致している。
ただ、心なしか顔色が悪い―――というか蒼褪めているように見えた。
かたかたと小さく震える手で頭を抱えるようにしながら「王都コワイ」などと零している。
(噂の彼女、植え込みの陰で涙目になってるんだけど……?)
どういう状況だこれ、と首をひねりかけた時、こちらに向けて駆けてくる足音が響いた。
「確かこっちに行ったよな…!?」
「ああ、校舎の角を曲がるところを見た!」
聞こえてきた声に、生垣の向こうで蹲る少女の肩がびくりと震えたのが見えた。
恐る恐る視線をこちらに向けた彼女と、ばっちりと目が合う。
涙を湛えた大きな瞳は宝石のように煌めき、怯えを浮かべたその表情すらも愛らしい。
(おおぉ)
はしたない感嘆はしっかりと心の中に仕舞いつつ、令嬢の完璧な微笑も崩さない。これでも淑女だからね、一応。
自分が男だったら『友達からでいいのでお付き合いしてください』って言ったかもしれないな。
いや私、女なんだから普通に友達になってもらえるんじゃ?
私が脳内で埒もないことを考えてるうちに声と足音はすぐ傍まで近付いていた。
怯えがありありと浮かんだ空色の瞳を見つめながらにっこりと笑いかけ、くるりと植え込みに背を向けた。
程なく現れたのは二人組の男子学生だった。
制服の襟元の級章を見るに、高等部騎士科の一年生か。
小走りに駆けてきた彼らは私に気づくと少し驚いた様子を見せた。
「これは、エルベ嬢…」
「ご機嫌よう」
相手は私の名を知っているらしい。
研究内容がちょっとばかり奇抜だからと『奇行令嬢』なんていう呼び名が密かに流布しているらしいのだが、そのせいだろうか。
それでもできるだけ淑女っぽく見えるよう、最大限優雅に微笑みながら挨拶すると、2人の方も戸惑いながらもご機嫌ようと返してくれた。
「エルベ嬢、こちらで何を…?」
「とてもいいお天気ですから散策を。
お二人は?」
「我々は、その、人を探しておりまして…」
「花のように艶やかな薄紅色の髪をした、美しいご令嬢を見かけませんでしたか?」
「まぁ…」
随分と詩的な言い回しだこと。
わざとらしく考え込むような顔をしながら小首を傾げてみせる。
「それほど美しい方なら、わたくしも是非お目にかかってみたいわ。
けれど、わたくしがこちらに居る間には、どなたもいらっしゃらなかったわよ?」
「え…そんなはずは」
「…………?」
会話をしながら、私は目を瞬いた。
男子学生二人の腕というか、肩というかに、なにかしら植物のつるのようなものが巻き付いているのが見えたからだ。微かに妖精の気配が漂っているそれは、禍々しい印象こそないものの奇異であることは間違いない。
無意識に二人のうち、立ち位置が近かった方の男子学生の腕に(正確にはその腕に巻き付いている植物に)触れようとして伸ばした手を、さらに横から伸びてきた別の手にがしっと掴まれた。
「…ったく、目を離すとすぐこれだ…!」
「リオン?」
「ガレリィ監督生殿!?」
私の手を掴んだのは、この上なく整った顔にありありと不快感を浮かべた幼馴染、カーネリオン・ガレリィだった。
癖のない銀の髪がいつになく乱れ、その隙間から額に滲んだ汗が見える。
高等部騎士科二年に所属しているから、訓練上がりなのかもしれない。そのまま走ってきたのかな。
そんなことを思う私をしばしじっと見て、次の瞬間、カーネリオンはその綺麗な顔面に極上の笑みを浮かべた。
あ、やばい。怒られるやつだ、これ。
その笑顔のまま、カーネリオンは何やらばつが悪そうに固まっている二人の男子学生に向き直る。
「カート・ランデル、ジェフ・コークス。しばらくぶりだな」
「ご無沙汰しております!ガレリィ監督生殿!」
「進級試験では、お世話になりました!」
「騎士科の教練はどうだ?」
「まだ始まったばかりですが、おかげさまでなんとか後れを取ることなくついていけております!」
「そうか。
課外訓練を受けたかったらいつでも私に言いに来るといい」
「いえ…そんな」
「遠慮はいらないぞ?」
「いえ、あの、機会があればまた……し、失礼しますっ!!」
びしっと敬礼した後で、やってきた時以上に慌てた様子でバタバタと駆けていく二人を見送った。
可哀想に、怖いよね。今のリオンの目、笑ってないんだもん。
私は見慣れてるけど。
「あの二人と知りあいだったの?」
「騎士科への進級試験のときにな」
「鬼先輩?」
「頼まれて試験監督生をしただけだ」
「さすが騎士科首席。じゃあ鬼教官か」
「ちがうって。
それより、リリス」
「なに…っていででで」
ぐにーっと音がしそうなくらい、両の頬を引っ張られてたまらず声をあげた。
「いひゃいってば、あにすんのさっ」
「何すんのじゃないだろ、お前。
魔法の痕跡と見たらすぐ直接触ろうとしやがって」
「らって、さわっへたしかめるのがはやいんらもん」
「だからって、他の奴の身体に気安く触るんじゃない」
「ほめんなさいて、いひゃいって」
「ったく、だいたいお前は―――」
ぱ、と放された頬はじんじんして熱を持っている。
相変わらず私の扱いが酷い幼馴染は、まだまだ言い足りないらしく滔々と小言をぶつけてきている。
彼、カーネリオン・ガレリィ公爵令息と知り合ったのは、今から10年前。
父同士はもともと友人だったそうだが、それまでは面識などなかった。
――――彼が7歳のとき、全身を宝石に覆われるという奇病を患うまでは。
公爵家の医師も魔法士も手の施し様がなかった中、奇病と思われたのが石化の呪いの亜種であり、さらに私のもつ『魔法を断ち切る力』が治療の糸口になる可能性があるということがわかった。
当時の魔術師団長と学院の魔法学科長の両名直々に能力の鑑定と訓練を受けた後、無事に彼を宝石化の症状から回復させることに成功したのだった。
しかも宝石化が解けた直後、カーネリオンがその深い青色をした目にいっぱいの涙を溜め、私の手を握って
「きみはボクの『うんめい』だ!けっこんしてくれ!」
と叫んだもんだから、その場にいた者全員が仰天した。
おそらく呪いから救ってくれた相手への強烈な感謝からくるものなんだろうと、興奮冷めやらない彼を居合わせた大人たちが何とか宥めて落ち着かせた。
『運命』云々はさておき、それをきっかけに齢が近いからと彼の話し相手としてよく公爵家に呼ばれるようになった。同じ師について魔法を学んだりもしたしね。
一緒にいる時間が長くなれば自然と仲良くなり、気心の知れた幼馴染兼友人としての付き合いが今までもずっと続いていた。
ひとつ歳上ということもあってか、彼の方は私を手のかかる妹分とでも考えているようで。未だに何かというとこうして小言を並べたりしてくるのだ。
学院入学後もしばらくは、一年先に入学していたリオンが私の横に張り付くようにしてあれやこれやと世話を焼いてくれていた。
学年が進むにつれ、私は魔法科の研究で休憩が不規則になりがちだったり、リオンはリオンで学生でありながら王立騎士団の予備役登録もしているためたまに任務が入ったりして、それまでのように頻繁には会うことは無くなってきていた。
それでも都合が合うときは昼食を摂ったりする。気心の知れた者同士で一緒にいるのは楽しいし気楽だからね。
実はそんな私達の上に、つい一ヵ月前『婚約者(仮)』という肩書きがひっそりと付け加えられた。
10年経っても仲が良くつるんでいておまけに互いに浮いた話ひとつない私たち二人を、この際だから手っ取り早くまとめてしまえ、という親同士の思惑らしい。
だが、ガレリィ公爵家の次男であるリオンと子爵相当とはいえただの上級官吏の娘の私とでは、友人関係ならまだしも結婚相手としてはそもそも釣り合わない。
婚約が不本意だったらしい彼の、婚約式での仏頂面は記憶に新しい。
対外的に婚約発表もしていないし、私達も学院内で今までどおりの気安い付き合い方のままだから周りもきっと気付いてない。公爵家としても、本当にどうしようもなくなったときの最終手段的なものなのだろう。
彼に本当に思いを寄せる相手ができたらペリッと簡単に剥がせる程度の、うっすい肩書きである。
「聞いてるか!?リリス!」
………やべ、聞いてなかった。
でも素直にそう言おうものならあと半刻は小言が続く。
「…ごめんなさい、これからは気をつけます」
「………はぁ。」
いつもの気持ちのこもってない私の謝罪にリオンが溜息を洩らす。これが私たちの通常運転だ。
それから、彼の指が私の頬の横に伸びて、髪の隙間から覗いた私の耳にイヤリングがあるのを確認するのも。
「ちゃんと着けてるな。えらいぞ」
「……だって忘れると、リオン怒るじゃん」
「当たり前だろ」
このイヤリングには、魔力を込めて投げれば辺り一帯を一定時間結界でくるみ込むことができる防御結界が組み込まれている。
学院入学のお祝いにと魔法の師匠からそれぞれ手製の魔道具をもらったのだけど、リオンは魔法剣を封じ込めたブレスレットで、私はこのイヤリングだった。
金具部分は銀製で、それに濃い青色の宝石がついてる。派手過ぎず私の濃紺の髪とも合っていて、機能もだけど見た目も気に入っている。
心配性お兄ちゃんなリオンは学院に居る間は必ずつけるようにと念を押してきて、たまにこうして確認もしてくる。それからどこか満足そうにふわりと笑うのだ。こんな笑顔見せたらその辺の女子は卒倒するんじゃないかな。
「で?お前はここで何してたんだ?」
「あ、そうだった」
ひっぱられた頬の痛みやらなにやらでうっかりしていた。
慌てて茂みの向こうに「もう大丈夫ですよ」と声をかけたら、恐る恐るという感じで彼女が立ち上がって出てきた。ぽんぽんと制服に着いた芝生を払う彼女を見て、リオンが少し驚いた顔をした。
「君はたしか、フローデン嬢?」
「…ご無沙汰しております、ガレリィ公爵令息様」
「リオン、彼女とも知り合いなの?」
「フローデン商会とはウチも取引があるからな。
お父上は御息災かな?」
「はい、おかげさまで。」
「それはよかった」
私以外の異性と目元を緩めてにこやかに話す幼馴染を見るのは珍しい。
けど、考えてみればリオンは次男とはいえ公爵家の子息。その気になれば社交だってきっちりこなせるんだろう。
出会った頃はまだ背丈だって私の方が少し高いくらいだったのだが、今はもうすっかり追い越され、私が見上げるようにしないと目線が合わないくらいだ。大人になったなぁ。
舌っ足らずで私の愛称『リリス』が言えなくて『リリ』になってたあどけない少年はもう居ない。今や在学中に王立騎士団第一師団に内定している将来有望な騎士候補生。なおかつ眉目秀麗な公爵家子息ときたもんだ。なんで浮いた話がないのかが不思議でならない。
フローデン嬢の方も花が綻ぶような笑みを浮かべている。
まるでお芝居の一場面を最前列で見ているよう。美男美女ってすごい。
そうこうするうちに、こちらにやってくるまた別の人の気配がした。フローデン嬢を追ってきたのかはわからないけど、私もちょっと彼女に確認したいことがあるし、さらに人が加わってややこしくなる前に移動した方がいいかもしれない。
「フローデン嬢、いまちょっとお時間ありますか?
よければ、場所を変えて少しだけ話を聞きたいんですけど」
読んでくださりありがとうございます。
つづきます。