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番外編 娘はツンデレさん


 「べ、別にアンタなんか好きでもなんでもないんだからね!!」

 

 「ごめんってば。いい加減に機嫌直してくれよ」


 1人のツインテールの小学生少女が、とある男子生徒にビシッと指を突き刺しながら大声で叫ぶ。

 

 この少女と少年は所謂幼馴染と呼ばれる関係だ。幼稚園の頃から一緒の時間を過ごし、そして小学6年生の今に至るまでずっと一緒だった。

 そして今日も二人は学校終わり、普段通り一緒に下校をしていた。だがそこで些細な言い合いが始まり……というより、少年がちょっとからかうと、女子の方が過剰に怒り出したというべきだろう。そして今の状況に至る。


 基本的には心優しいこのツインテール少女なのだが、1つだけ面倒な欠点を抱えていた。


 「とにかくもうアンタとは一緒に登下校しないから!」


 彼女、金木恋歌(かなぎれんか)は典型的な〝ツンデレ〟女子だったのだ。


 困り顔の幼馴染に強気な口調をぶつける少女だが、言い切ると同時に〝しまった〟と言わんばかりの後悔が表情ににじり出た。


 「ふっ、ふん!」


 しかし一度意地を張ってしまった手前、今更謝る事などできない天邪鬼の彼女はその場から走り去っていく。

 

 去り際に振り向くと、自分の後ろ姿を眺める寂しそうな幼馴染の顔を見てしまった。


 またやってしまった。どうして私はこうなのよ!


 自宅に戻ってから、恋歌は自室で悲し気な少年の顔を何度も思い浮かべていた。

 

 ほんの些細な事でどうして自分はすぐに噛み付いてしまうのだろう?

 まだ小学低学年の頃までは素直だった。だがその頃から彼のことを〝友人〟でなく、気になる〝異性〟として見るようになってしまっていた。そこからどんどんと今の様な天邪鬼な性格となってしまった。


 本当は好きなのに、嫌いだなんて微塵も思ってないのに、ついつい正反対の言葉をぶつけてしまう。


 「はあ……どうして私ってこんな性格なのかな。お母さんはお父さんに素直な性格なのに」


 素直になれない自分とは対極に、母親はとても素直で父親とは毎日ラブラブだ。

 もうすぐ中学に上がる自分の前で、年甲斐もなくいちゃつく両親を恥ずかしく思う反面、夫に対して素直に好意をぶつけれる母親を羨む事もある。


 私もお母さんと同じようにちゃんと好きだって伝えられたらなぁ……。


 そんな風にモンモンと部屋で蹲っていると部屋の扉が開いた。


 「こら恋歌、さっきから晩御飯だって言ってるでしょ」


 「あ…お母さん……」


 部屋の中でいじいじと悩んでいるうちに、いつの間にかもう夕食の時間となっていたらしい。

 

 「どうしたの電気もつけずに? 何か悩みでもあるの?」


 どうやら今の自分はよほど分かりやすく、苦悩を顔に出していたらしい。

 適当な嘘で誤魔化そうかとも思った恋歌であったが、思い切って母に相談する事とした。


 「あのさお母さん、私のこの性格ってどうしたら直せるのかな……」


 「本当にどうしたの急に?」


 「ん……実は……」


 一度相談してみようと決心したためか、私は溜め込んでいた想いを全て打ち明けた。

 好きな相手に素直になれず、すぐに噛み付いてしまったり、本音とは正反対の言葉をぶつけてしまうことなど、自分の悪癖を全て吐露した。


 私の悩みを一通り聞き終えると、お母さんが小さく噴き出した。


 「ちょっと、娘がこんなに悩んでいるのにそのリアクションはヒドくない?」


 「ごめんなさいね。でも……ふふ、やっぱり私の娘だなぁって……」


 「それってどういう意味?」


 「実はね、昔のお母さんも恋歌と同じ天邪鬼だったのよ。お父さんへ中々素直になれなくてね、よくキツイ言葉をぶつけていたわ」


 母の口から語られた過去はにわかには信じ難かった。

 

 いつも胸やけするほどのラブラブ夫婦をお父さんと演じるお母さんが、高校時代は自分と同じくツンデレ全開だったと言われても想像すらできなかった。

 

 「今の恋歌の気持ち痛いほど共感できるわ。好きな相手に素直になれない、とても胸が締め付けられるわよね」


 「うん……もうすぐ小学校も卒業なのに未だにあいつに『大好き』の一言も言えないんだ」


 自分でもこの悪癖を直さなければと危機感を抱いてはいるが、気が付けばどうしても嚙み付いてしまっている。

 そのたびに嫌われるかもしれない、他の女子に先を越されるかもしれない、そう考えると更に胸がズキズキと痛んだ。


 しかめっ面で蹲る私のことを、お母さんが背後から優しく抱きしめてきた。


 「ねえ恋歌、人間の性格は一朝一夕で矯正できるものじゃないわ。だからいきなり素直になろうと無理をする必要はないんじゃない? ほんの少しずつ、一日ごとに些細ながらも変わろうと心がけてみたらどうかしら? 一歩ずつ、そして確実に変わっていけばいいのよ」


 「一歩ずつ……確実に……」


 「そう一歩ずつよ。私はそうやってお父さんと仲良くなって、恋人になって、そして夫婦になったんだから」


 「でも…自信ないなぁ。一歩ずつ進もうと努力したとしても、今のお母さんみたく素直に『好き』って言える女性になれるかな……」


 「なれるわよ。だってあなた以上のじゃじゃ馬だった私ですら今はお父さんに、龍太にぞっこんになって恋歌の前でいちゃいちゃするまで骨抜きになったんだから。強気な女の子ほど、好きな男の子には最後に殻を破られて素直になれるものよ」


 「………」


 しばしお母さんの励ましに対して無言だった私だが、ポツリと小さく呟いた。


 「明日、ちゃんとあいつに謝ってみる。それで……ちょっと素直になって頑張ってみる」


 「うん、頑張りなさい」


 先程まで憂鬱だった私の気分はいつの間にか払拭されていた。


 そして翌日、喧嘩別れをした幼馴染へ恋歌は自分から素直に謝った。

 まだまだ棘のある態度だが、母親である愛美のアドバイスにより一歩前に進めたのだった。




今回で番外編も終了となり、完全に完結とします。

また幼馴染もののラブコメを描いていきたいと思いますので、しばしお待ちください。

また、代表作の方も応援よろしくお願いします。書籍1、2巻発売中です!

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