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番外編 2月14日 愛美の初バレンタイン

バレンタイン用のあま~い話を執筆したので投降します。時間軸としては二人がまだ1年生の頃となっています。

本当は昨日に投降する予定でしたが、ちょっと風邪でダウンしていました。


 2月14日、この日は世の男性が期待に胸を膨らませる日となる。

 特に思春期の青年達は女性から〝ある物〟が貰えるのではないか? そう淡い期待心を持って一日を過ごすのだ。具体的に言えば〝チョコレート〟が貰えるのではないかと期待するのだ。


 今日は2月14日――バレンタインデーの日なのだから。


 そしてバレンタインデーは何も男性だけにとって特別な日ではない。

 女性にとっても好意を寄せる男の子に向け、自分の愛と気持ちをチョコと共に伝える一世一代の決戦日となる事もある。


 そしてここにも1人、愛する男の子に手作りチョコを渡そうと気持ちを奮起させている女子生徒がいた。


 「包装ヨシ、用意した手紙もヨシ、準備完了!」


 もう一度だけ鞄の中に手作りチョコがちゃんと入っている事を愛美は確認し、そして玄関の扉を開いて外に出る。

 外に出ると天気は快晴であり、今から彼氏の家まで出向こうとする自分の道を眩く照らし、後押ししてくれている気がした。


 「大丈夫きっと成功する」


 「なーにが成功するだよ。つーかいつまで玄関前でうじうじやってんだよ?」

 

 背後から聴こえてきた声に振り替えると、玄関で弟の徹が呆れた目でこちらを見ていた。


 「姉ちゃんまだ出掛けてなかったのかよ。龍太さんの家に行くって言ってからもう20分以上もさ……」


 「う、うるさいわね。女性にとって手作りチョコを手渡す事がどれだけ覚悟がいるか男のアンタには理解できないわよ」


 「いやさ、百歩譲ってまだカップル前なら分かるよ。でももう姉ちゃんと龍太さん交際してんじゃん」


 「そ、そうだけど。でも好きな男の子に本命チョコ渡すなんて初めての機会だから……」


 これまでの愛美の人生の中でチョコを渡した相手といえば、実の父親に義理チョコを毎年上げていたぐらいだ。ちなみに弟の徹には年齢が近い事から、なんとなく恥ずかしく渡してはいない。いや、そういえば去年は気まぐれに10円チョコを渡した気がする。

 

 「それにお弁当の時と違ってチョコは一から手作りだからさ、もし龍太の口に合わなかったらショックだし……」


 「めんどいな~。味の心配が捨てきれないなら道中で市販のチョコでも買ってきたら?」


 「そんな訳にはいかないわ! 好きな男には自分の手作りチョコで喜んで貰いたいでしょ! 少しぐらい考えれば分かる事でしょうがこの愚弟!!」


 まるで八つ当たり気味に愚弟呼びされ徹の表情筋がヒクつく。

 内心ではメンドクセェ姉貴だと思いつつも、弟として最後は純粋にエールを送ってやる事にした。


 「よく考えろよ姉ちゃん。あの龍太さんが味云々でグチグチ言うセコい人間だと思うか?」


 まるで諭されるかのような物言いに少しカチンとする愛美だが、同時に自分の悩みが杞憂であると冷静に伝えられた。


 自分が手作りチョコを渡せばきっと龍太は喜んでくれる。

 これは決して自惚れや都合の良い願望ではない。将来を前提として交際してくれた彼はきっと、いや間違いなく自分の想いを無下になどせず、きっと笑顔でこう言ってくれるだろう。


 ――『ありがとう。とっても嬉しいよ愛美』


 満面の笑みと共にそう言ってくれる彼氏の姿を想像するのは容易だった。

 同時にいつまでもウジウジとしている自分に羞恥心が湧き、気持ちを切り替えようと自らの頬を両手で叩く。


 「悔しいけどアンタの言う通りみたい……てっ、もう居ないじゃん」


 振り返ればもう玄関の扉は閉められていた。最後まで話を聞かなかった弟への焼き入れは一旦保留とし、愛美は龍太の自宅を目指し始める。

 一度吹っ切れてしまうと気も楽となり、玄関前で長時間ウジウジしていたことが嘘のようにあっさり龍太の自宅前までやって来た。そのまま玄関のインターホンを押してチャイムを鳴らす。

 それから時間にして十数秒後、ドアを開けて目的の人物が顔を出してくれた。


 「あっ、愛美。ど、どうしたの?」


 「ん……用がなくちゃ来ちゃいけないわけ?」


 いざ龍太の顔を見るとまた緊張感が込み上げてきたが、その焦燥感はすぐに引っ込む。

 何故なら目の前の彼氏は見るからに浮足立っており、その視線はチラチラと自分の手提げかばんに向いている。


 「あの…その鞄の中身は何かな?」


 今日がバレンタインであること、そして恋人がわざわざ手土産持参で彼氏の家に訪れれば中身は察せられるだろう。

 自分のチョコを龍太が期待している、その事実を知って胸のドキドキ音がキュンキュンと音色を変えた。


 「あっ、この鞄が気になるかしら?」


 「う、うん。その……今日はあの日だし……」


 「ふふん。物欲しそうな顔しちゃってさ、ほれお望みのチョコですよ~」


 自宅を出る前までは喜んでもらえるかと不安が拭えなかった愛美だが、もうすっかりと龍太の反応を見て普段通りの調子に戻っていた。

 

 「ほら、愛しの愛美様からのバレンタインチョコよ。ありがたく受け取りなさい」


 鞄の中から取り出したチョコを笑顔と共に手渡す。

 丹精込めて作った自分のチョコを貰い、心の底から喜びを嚙みしめる龍太の顔に我慢できず、思わずこちらの表情も無意識に緩む。


 「ありがとう愛美。凄く嬉しい……」


 「ホワイトデーは期待してるわよ」


 「もちろんちゃんとお返しはするから。あっ、これってカード?」


 「あっ、それは今見ちゃ……!?」


 得意げな顔をしていた愛美だが、龍太がラッピングされている小箱に挟んであるメッセージカードを見つけた。

 愛美の予定では自分が帰った後に呼んでほしかったのだが、龍太はその場で開封していまし、その中身が目の前で読まれてしまう。


 『  龍太へ


  私からの本命チョコです。不格好ながらも一生懸命手作りしました。

  龍太の口にちゃんと合うか不安だけど、精一杯の愛情、そして感謝の気持ちを

  籠めて作りました。

  こんな天邪鬼な私をいつも支えてくれてありがとう。そんな優しいあなたが私

  は今も、そしてこれから先も大好きです。


                              愛美より  』


 「わあ……」


 「な、なんでここで読んじゃうのよばかぁ……」


 まさか目の前で読まれるとは思わず赤面しながら愛美は俯く。

 羞恥心に顔を赤らめる彼女と同じく龍太も頬が薄っすら赤く染め上げられる。だが恥ずかしさ以上に嬉しく、龍太は柔らかな笑みと共に、自分のメッセージに対して言葉を返してくれた。


 「ありがとう愛美。チョコも、そしてこのメッセージも本当に嬉しい」


 「ん……そう……」


 やはり自分の彼氏はとても反則だ。

 こんな風に一切茶化さず、堂々と礼を述べられれば素直に頷くしかできない。まだ気の利かない言葉を贈られた方がリアクションも取れるのに……。

 

 何よりこんな純粋に喜んでくれる顔を向けられると、自分の抑えつけている理性だって我慢が利かなくなる。


 「ほんっとう、うちの彼氏は……」


 「え、愛……んむっ」


 気が付けば足が前に出て、戸惑う龍太の唇を奪っていた。

 そのまましばし二人の唇は重なり続け、そして離れていく。


 「龍太……わ、私……わたしね……」


 「わう、あ、愛美……ちょっと落ち着いて……」


 「落ち着けないわよバカ。ねえ……チョコの他にもう1つ……食べてほしいものがあるの」


 愛美は完全に自分の中の理性という氷が解けつつある事を自覚しつつ、龍太の手を掴むとその手を自分の胸に持っていく。そしてキスよりもその先を促して求める。


 そのまま龍太を部屋に連れていき押し倒すビジョンまで妄想する彼女だが、不意に別の人間の視線を感じ取る。

 

 「あ……バレちゃった」


 声の出処は龍太の背の開かれた玄関の向こう、廊下の柱の陰から彼の妹の涼美がこちらを盗み見ていた。

 龍太も妹の存在に気付き、声を震わせながら言葉をかける。


 「いつから見ていたの涼美?」


 「愛美姉がお兄ちゃんにキスする直前」


 よりにもよって一番恥ずかしいシーンを目撃されていたことに、二人の頭からボンっと煙が出る。


 「いやー愛美姉ってやっぱりスイッチ入ったら結構肉食だよね~。あっ、私はこの後は空気読んで外出するからお構いなく~」


 そう言いながらひょいっと引っ込んでしまう。

 残された二人は気まずさを感じつつも、羞恥心のお陰で頭の方は冷静になる。


 「ごめん、暴走しかけていた」


 「ううん。愛美が謝る事じゃないよ」


 「ん、そーね。根本的な理由は龍太がヘタれで未だに手を出してくれないからでしょうね」


 「うう、ごめん…それを言われると……」


 そう言われた龍太は困り顔でバツの悪そうに苦笑を漏らしていた。

 確かに勢いに任せて獣のように本能に身を委ねそうになった自分にも恥ずかしくなったが、そもそも未だにそういう行為をしてくれない事に対してやはり不満はある。

 だからこそ愛美は積極性を植え付けるべく、自分の唇を触りながら1つ要求した。


 「悪いと思ってるなら、ん。お別れのキスぐらいは自分からしなさい」


 自分のおねだりに対し頬を赤らめつつも、龍太は歩み寄って来てそのまま抱擁しながらキスをしてくれた。


 ああ……私……やっぱりこの人と結ばれて良かった……。


 まるで宝物の様に扱ってくれる優しい抱擁、頭を撫でる暖かな手、そして気持ちを落ち着かせるキス、それらが愛美の不満を沈めて幸福を積み重ねてくれた。


 それから二人は涼美がもう一度顔を出すまで玄関でチョコよりも甘いハグとキスを繰り返し、それを見た彼女から『いつまでやってんだ』と呆れ気味にツッコまれたのだった。



 

バレンタイン企画の小話どうでしたか?

実は最近なんですけど、この作品をもう少し続けようか悩んでいます。理由としては龍太と愛美、そのバカップルぶりを書いてみたいからです。無論二人の結婚ゴールは変更ナシで、今回の番外編の様な甘々メインの話となります。この作品を今でも読んでいる読者様はどうでしょうか?

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