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妹はツンデレ美少女の口から衝撃の事実を知りました


 近々テストが近いと言う事で兄の恋人である愛美姉は最近学校終わりに私の家でお兄ちゃんと一緒に期末考査に向けて猛勉強している。そして私もまた勉学は苦手な方なので二人に混じって一緒に自分の中学校でも間近に迫っている期末に向けて勉強をしている。

 

 「う~ん…やる気が起きないよぉ~……」


 テスト範囲に出て来るであろう数学の問題文を解きながら涼美はダレたように口を開く。

 そんな机の上で突っ伏している涼美の頭に丸めたノートがぽかっと力なく落ちてきて顔を上げる。


 「ほら起きる! 自分から勉強に付き合って欲しいって言ってさぼらない!」


 「も~お兄ちゃんの堅物女顔~」


 眠そうに半目の状態で顔を上げるとそこには困り顔の兄と小さく苦笑している愛美の姿が映り込む。

 

 「ほらしっかりしないさい涼美ちゃん。おきたおきた」


 「愛美姉まで~うぅ~おにぃ~」


 このまま放っておけば今にも寝てしまいそうな涼美の体を優しく愛美が揺すった。


 「もう…涼美は決して頭が悪い訳じゃないんだからやる気を出せばテストでもっと高得点が取れるはずなのに……」


 「だって頭を使うのあまり好きじゃないんだもん。私はどっちかって言うと体育のような体を思いっきり動かす授業がお好みで~す」


 そう言いながらノートの隅に花丸の落書きをする。呆れ顔でこちらを見る兄にちょっと腹が立ったので頬を膨らませながらそっぽを向いてやる。


 自慢ではないが兄が言ったように私はどうやら地頭がいいらしい。授業の内容は真面目に聞けばノートを取らずとも大抵は頭の中に吸収される。だが今言った通り勉強が苦手、と言うより嫌いな私は授業中は昼寝で怒られる事もある。


 そう言えばアイツもよく授業中に寝てしまう私に呆れていたわね。


 自分の隣の席に座っている〝とある男子〟の姿を思い返していると愛美姉が思い出したようにこんな事を言い始めた。


 「それにしても本当に仲の良い兄妹よね。ウチの弟は最近は生意気盛りで羨ましいわ」


 「あー…そう言えば愛美姉には弟さんがいたんだったね」


 愛美が自分の弟の話題を出したことで涼美の頭の中ではまた自分の隣の席のアイツのことを思い出す。


 そう言えばあいつの名字も『月夜』なのよね。いやでもまさか……。


 いくらなんでも兄の恋人の弟さんがあいつだなんて偶然ある訳ないと思っていた涼美であるがやはり気になって愛美へ質問を投げ掛けた。


 「もしかして愛美姉の弟さんって『月夜徹』って名前じゃありませんよね?」

 

 「あら正解。そう言えば涼美ちゃんと同じ中学だから面識あった?」


 「うえええええ!? まさかのあいつが愛美姉の弟なの!?」


 自分の質問に対してあっさりとその通りだと認められて思わず声を荒げてしまう。


 「し、信じられない。あの馬鹿がよりにもよって愛美姉の弟だなんて……」


 急に驚きを露にした涼美の反応が気になり二人が詳しく話を聞くとどうやら愛美の弟である徹と涼美は同じクラス、しかも席まで隣らしいのだ。

 その話を耳にして愛美も思い出したかのようにボソリと呟いた。


 「あーそう言えば徹が時々隣の席の女子に絡まれているってぽろっと零していたわね。まさか涼美ちゃんの事だなんて」


 「ええっ、あの馬鹿そんな愚痴言ってるんですか!?」


 な、なによ絡まれているって!? どちらかと言えばあいつの方からいつも絡んで来るじゃない!!


 そんな事を考えながら不満げな顔をしていると兄がとんでもない質問をぶつけて来た。


 「その言い方だともしかして涼美は徹君と仲が良いの?」


 「……ええッ!? そそそ、そんな訳ないじゃん!!」


 純粋な瞳でぶつけられたその質問に対して何故か涼美の中では急に焦りが噴き上がった。

 

 「べ、別に私とあいつはただのクラスメイトだし! それにどちらかと言えば犬猿の仲って感じだから仲が良いなんてあり得ないから!!」


 そう言いながら否定している涼美は何故か自分の頬が熱くなる実感があった。


 ななな何で私はこんな必死になって否定してるのよ! これじゃまるで二人に徹のバカと仲良くしていると思われると恥ずかしがっているみたいじゃん!!


 いつも飄々としている妹のテンパっている姿に龍太は珍しいものを見て普通に驚いているだけだが愛美は違った。何しろいつも自分と龍太が仲良くしている場面を見るとからかってくるのだ。

 やり返すチャンスだと言わんばかりにここぞと愛美は焦っている彼女に自分の弟の話題をあえて広げた。


 「へえ~ウチの徹にももしかして春が来たのかなぁ? 実際あいつも涼美ちゃんの愚痴を言っている割にはまんざらでもない顔をしているし」


 「うそ!? ああいや違うから! 今のはあくまで変に意識されている事に驚いただけだから!!」


 「ふ~ん、ねえちょっと一度休憩にしましょうよ」


 しばし小休憩を挟む事となったので龍太は何か飲み物でも取って来ると言って部屋を出る。そして残された愛美は自分の弟との関係を詳しく聞き出そうとする。


 「ねえねえ実際のところ徹とはどんな関係なの? もしかして涼美ちゃんも悪く無い感じ?」

 

 「そ、その話はもう終わりでいいでしょ」


 「そうもいかないわよ。自分の弟と彼氏の妹の関係はきっちり把握しておくべきじゃない?」


 「いやそんなニヤニヤしながら言われても説得力ないから! 完全に愛美姉ったら愉しんでんでしょ!!」


 いつもは涼美にからかわれる愛美だったがこの日は珍しく立場が逆転していた。

 そしてこの件で涼美が月夜徹と言う人間をより意識してしまう事となるのだった。



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